9話 仲間
戦闘描写の練習をしなければ……
レーザーが優斗に着弾すると同時に、辺りはまばゆい光に包まれる。爆発により砂煙がまきおこり、やがてそれが静まったとき、そこにはなにもなかった。
優斗の姿が消えたのだ。
イーターたちは消えた優斗を探そうと周囲を見回すが、見つけることは出来ない。そしてさらに異変は続く。
地面から雷が現れたかと思うと、イーターを貫いて再び地面へ消えていく。このランクのイーターでは、この雷は迎え撃つにはあまりにも強力であり、逃げるにはあまりにも速すぎた。
成す術なく狩られたイーターの残骸は、無数の青いポリゴンとなって爆散した。その中心で、優斗は満足感に浸っていた。
その時、通信が入った。
「さすが優斗君だね。アリアが見込んだだけあるよ。」
「ありがとうございます」
「それと、君のチームに入れたい人材がいるんだけど司令室に来てもらっていいかな? 君との相性もピッタリだと思うよ」
「わかりました」
俺のチームに入るのはどんな人なのだろうか。できれば美少女がいいな。
「紹介しよう。彼女は結城奏だ」
サラディンに紹介されて出てきたのは、腰辺りまで伸びた赤いストレートヘアに栗色をした勝ち気な目。160センチ程の身長で体は細め。胸の辺りにはピクニックに最適な平原がある、優斗と同い年ぐらいの少女だ。見た目で評価するなら高得点だろうと優斗は思ったが、彼女の次の一言で評価はひっくり返ってしまう。
「結城奏よ。私の足を引っ張らないようにしてね」
ぷちん。サラディンには、そんな擬音が聞こえた気がした。
「それはこっちの台詞だっての。お前より俺の方が強いに決まってるだろ」
「はあ? じゃあ、そういうあんたは私の動きについてこれるかしら?」
「確かに動きやすそうな胸だな」
「な、なんですって! 人が一番気にしているところを!」
目の前で始まった喧嘩を、サラディンは苦笑いしながら見守ることしか出来なかった。
「はあ? なんで私がこいつの幼馴染みを守らなきゃいけないわけ? 私だってやりたいことはあるのに」
喧嘩を終えた二人にサラディンが一通り任務の説明をすると、真っ先に奏が反抗した。
「お前はなんも理解してないんだな……」
優斗はため息混じりに言う。
サラディンの説明はこうだ。絶望を好むイーターは、一度狙うと相手が立ち直らない限り諦めないらしい。咲の場合は絶望の深度が高いため、咲を食らえば低ランクのイーターですら高ランクにまで成長してしまう可能性がある。
イーターはある程度成長すると人を無差別に襲うようになる。絶望以外の感情を持つ人も食べることが出来るようになってしまうのだ。
「だからといって、私がこいつと組む理由もわからないじゃない。相性も最悪だし」
「奏さん、君たちの相性は最高だと僕は思うよ。君たちの戦闘方法は相性がピッタリなんだよ」
あ、相性ってそっちの相性だけだったんすね……。優斗は心の中で呟く。
「第一、こいつは本当に強いの? どう見ても弱そうじゃない。こんなやつと一緒になんて無理に決まってるのよ」
結構罵倒された気がする。サラディンは「それはじきにわかりますから」と奏をなだめる。再び喧嘩が始まりそうな空気を払いながら話を続ける。
「2人には戦闘時に情報を伝える要員が必要だろう。見つかりしだい通信を入れるから、しばらくは待機していてくれ」
「はーい」
かったるそうに言う奏と、
「了解!」
しっかり答える優斗。
「じゃあ、解散」
サラディンに促されて司令室を出る。優斗は奏を気にせずにすぐさま移動し、訓練場に入る。受付の人に訓練をしたいと伝えると、すぐさま用意してくれた。
「この訓練の内容は勝ち抜き戦方式です。勝てば勝つほど敵の強さは上がり、負けた時点で訓練は終了となります」
記録表を見てみる。上位の戦闘員となると1000を超えるらしい。特に上位三人はずば抜けており、他よりも一桁多い。
「というか、これは……」
上位三名の名前に見覚えがある気がする。上から順に剛力一馬、アリア・ルーイン、サラディン・ルース。こいつら……。
他の記録の十数倍はあるだろう。この三人に近い記録を持つものはおらず、3位の13892体から一気に落ち、4位は1825体となっている。普通、千体も倒せれば神だと思うんだが。
俄然、闘志がわいてくる。この記録を破ってみたいという感情がわきあがり、なおかつこの記録を抜けば奏のやつも驚くだろう。土下座して謝らせなければならない。
訓練場の戦闘部屋に入り、深呼吸をする。前回はストラグルモードを使わなかったが、今回は使用するため戦いやすいだろう。記録を塗り替えるところをイメージしながら「ストラグルモード」と言う。
体に力が供給され始めると同時に、複数の光が視界に入る。そして、その中から戦闘用ロボットが出てくると、優斗は体に雷を宿した。
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