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死後生活―アフターデッド・ライフ―  作者: 黒肯倫理教団
第六章

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71話 カルとファイ

 優斗たちの足音が遠くに去っていく。後は、自分と鈴佳でこいつらを倒せばいい。

 悲しいが、創造主を倒す役割は自分ではないと感じている。根拠があるわけではないが、自分の役割はここだ。

 目の前の敵を見据える。

 ようやく戦う気になったのか、強烈な殺気を放っていた。

 「ねえ。何でそこまでして戦うの?」

 小柄な少女が問う。

 言葉からは感情を読み取れない。

 「あの世界を守ることに、意味なんてあるの?」

 声が震えている。しかし、その理由は京也にはわからない。

 確かに、意味なんて考えたことがなかった。

 自分はただ、鈴佳と共に暮らしていきたいだけだった。

 ならば、あの世界でなくてもいいのではないか?

 いや、違う。戦う理由はそこにはない。

 既にわかっているはずだ。あとは、それを声に出すだけだ。

 喉まで出かかった答えを無理矢理に押し出そうと、京也は声を上げる。

 「俺たちのような思いをする人が増えないようにだ!」

 地面を蹴って、敵の方へ飛び込んでいく。優斗ほどではないにしろ、視認出来ない速さだ。

 しかし、背後から蹴られ、弾き飛ばされた。

 空中で体勢を立て直しつつ、手から無数の闇の刃を放つ。無論かわされるが、体勢を立て直す時間は稼げた。

 「はっ!」

 右にステップし、そこから一気に間合いを詰める。しかし途中で再びステップし、敵を翻弄する。

 「鏡幻(ミラージュミラー)」

 鈴佳が援護をする。京也の姿が消えたかと思うと、いつの間にか数人に増えていた。

 増加、減少を繰り返しながら敵を翻弄する。予測することも難しく、視界に入る情報はすべて虚構。

 敵は成す術もなく、動きを封じられていく。

 「一気に決める!」

 体中からありったけの闇を放出し、巨大な刃を作り出す。それと同時に、鏡幻(ミラージュミラー)の効果によって京也の姿が相当な数に増えた。

 「はああああ!」

 刃を放つ。刹那、巨大な炸裂音と共に床が消し飛んだ。

 これだけの威力なのだから、瞬間移動でも出来ない限りかわすことは不可能だろう。

 まだ気は抜けない。敵の死を確認してからでなくては、勝利とは言えない。

 しかし、そう簡単にやられてくれるはずもなく、

 「なかなか強いね」

 京也の後ろに姿を現した。いつの間に現れたのだという驚きと同時に、恐怖を感じた。

 刹那、背後から強い衝撃を受け、弾き飛ばされる。今度は、先ほどとは比べ物にならない程、強い衝撃だった。

 体勢を立て直す前に、前から長身の男が現れ、京也の腹に強打を入れる。

 「がはっ!」

 肺の中から空気が押し出され、苦しさを感じる。

 鈴佳の援護が欲しかったが、小柄な少女が妨害をしているらしく、期待したいが無理だろう。

 歯をくいしばる。次の衝撃に備え、少しでも痛みを堪えられるように、かつ、痛みの少ない場所で受けるように体を捻る。

 「――っ!」

 長身の男が驚いた表情を浮かべるが、もう遅い。

 拳に力を集中し、腹部に突き入れる。拳は男の腹を貫き、その手には大量の血が付いている。

 「うあ……」

 男は、自分の腹部に突き入れられた腕と、大量の血を見て、狼狽の色を見せる。

 出血の勢いは激しく、素人目で見ても致命傷に見えた。

 しかし、まだ終わらない。

 残酷かもしれないが、とどめを刺させてもらう。

 手から球状に闇を放出させる。

 男の体のほとんどが失われているため、死んだのは間違いないだろう。

 手に付着した血を払って、小柄な少女の方を見る。

 鈴佳の守りを突破することが出来ず、未だ苦戦しているようだった。

 こちらに気づいていないのか、鈴佳の方に集中している。

 体を闇に溶かし、姿を消す。

 背後から接近をして、先ほどと同様に拳を突き入れようとする。

 さすがに気がついたらしく、回避すると同時に驚愕の表情を見せる。

 「カル……?」

 少女は死体に対し、カルと呼んだ。長身の男の名前だろう。

 数回ほどまばたきをし、再び死体を見据える。

 体が震えている。怒りか、悲しみかはわからない。

 「カル……」

 少女はポツリと呟く。

 それによって何かが弾けたのか、感情のリミッターが外れたように、少女は突然笑いだした。

 「そうだ、そうだったよ。忘れていたんだ。ボクはなんてバカなんだ」

 笑いながら、何かを話し始める。

 しかし、その目からは涙が溢れていた。

 「所詮、使い捨ての玩具(おもちゃ)だったんだ。楽しむために、捨てられた」

 「何を言っている……?」

 京也が問うが、言葉が聞こえていないのか、返事はない。

 「創造主! どうせ観ているんだろう?」

 創造主が観ているのだろうか。確かめる手段はない。

 「せめて、こいつらぐらいは殺させてよ。ボクはカルの復讐をしたい。あんたも楽しみたいんだろう? ならさ、力をボクに頂戴」

 何を言っているのか。

 創造主から力をもらう? それほどの存在ならば容易いのだろうが、そうされては困る。

 「させない!」

 一気に間合いを詰めて攻撃を仕掛ける。

 が、突如巻き起こった爆風によって妨害され、吹き飛ばされた。

 すぐ近くで何かが爆発したらしい。

 それは、視認できる速さではなかった。今でさえ、何が起きたか把握しきれていない。

 少女は、京也を見ながら笑っていた。

 「そう、これだよ」

 少女は力に溺れているのか、恍惚の表情を見せる。

 「これからが本番だよ」


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