55話 鏡の少女
今日はなかなか捗りました。
戦闘描写は楽しいです。
敵の本拠地。交戦はかなり激しいものとなり、味方には負傷した者も見られる。
数では押されているものの、こちらは少数精鋭だ。人数が少ないため動きやすく、確実に敵の防衛戦を崩していく。
健仁は、今のところはなにもしていない。というのも、剛力が敵をなぎ倒してしまうために獲物が近くにいないのだ。
確実に敵の本拠地に近づき、今まさに中に入ろうとしていた。
背後から鋭い殺気を感じ、振り返る。白髪に赤い目をした少女がいた。ドレスのような黒い服と、それと対照的な白い肌。鋭く細められた目は、ナイフを突きつけられているような恐怖を感じる。
「そこから先へは行かせない」
そう呟くと、少女はこちらに向かってきた。ゆっくりとした足取りだが、隙が見えない。剛力が手から衝撃波を放とうとするが、健仁が制止する。
疑問そうな顔付きで、剛力が健仁の顔をチラリと見る。健仁は不敵な笑みを浮かべながら、
「俺が殺る。あんたは先に行ってくれ」
と言った。
剛力はもう一度健仁の顔を確認すると、「わかった」とだけ言い残して扉に手をかけた。
「行かせない!」
少女が空中にガラスの破片のようなものを生成する。少女が手を振るのに合わせ、ガラスの破片のようなものが飛んでくる。
「無駄だな」
健仁はそれをすべて弾く。少女は驚いたように顔を歪め、剛力は笑って見せる。
剛力が建物の中に入ったことを確認すると、健仁は少女に向き直る。少女は、健仁に対して強烈な憎悪の目を向ける。
「悪いけどよ、俺はお前の都合なんて知らねえ」
少女は肩を震わせる。怒りだろう。敵の目的などはサラディンから一通り聞いている。そして、彼らが言う理不尽というものが何かも理解しているつもりだ。
「だからよ、俺はお前を潰す」
健仁は構える。敵の攻撃に備えて守りの体勢に入り、カウンターを狙う。
少女は先程よりも多くガラスの破片のようなものを生成する。かなりの数だろう。健仁は右足を大きく後ろに引く。破片が放たれると同時に能力を発動する。
引いた右足を大きく振り上げ、勢いをそのままに体を回しながら攻撃を繰り返す。
「浅田流喧嘩術――流水脚!」
破片をすべて弾くと、健仁は少女の方に向かって「そんなもんか?」と挑発する。少女は怒りに限界が来たのか、こちらに走ってきた。
迎え撃とうとすると、少女は身を守るように盾を作り出す。鏡だ。鏡には、健仁の姿が写っている。
そんな簡単に防げるものかと、健仁は拳を振りかざす。
「浅田流喧嘩術――流星拳!」
手加減なしの本気の攻撃を叩きつける。鏡が砕けてそのまま手が届くかと思ったその時、体に激痛を感じて倒れ込む。
「な、何が……」
確かにこちらの攻撃は当てたはずだ。しかし、攻撃はこちらに当たっていた。鏡か。こちらの攻撃を跳ね返したのだろう。
それを理解したところで、受けたダメージが減るわけではない。攻撃に特化している健仁だからこそ受けるダメージは尋常ではない。
大きな傷を負ったが動けないわけではない。多少なりと動きは鈍るかもしれないが、敵の能力を把握できたことを考えれば安いものだ。
健仁は痛みをこらえて立ち上がる。少女はすぐに立ち上がった健仁に驚くが、すぐに表情を戻す。少女が手をこちらに両手を突き出したかと思うと、そこには二本の剣が現れていた。
鏡の剣だ。先程のことを考えると、この剣にもダメージ反射はあると考えていいだろう。警戒することに多過ぎるということはない。
問題はどう立ち回るかだ。相手は剣と破片、盾の三つがある。容易に近づくことは出来ないだろう。
ならば当たらなければいいだけのこと。健仁は生前のことを思い出す。
嫌々ながらも、健仁は幼い頃から父親の道場で鍛えられていた。その父親に剣道のように武器を使いたいと話したときに、父親は健仁に、
「剣などは必要ない。当たらなければいいだけだ。健仁、お前は拳を信じろ」
当時の自分は武器を持っていた相手とは戦わなかったために理解できなかったが、今ならわかる。拳の方が小回りが利き、手数も多くできる。
健仁は体を横に向け、右手を少女に向かって真っ直ぐに突き出す。左腕は上段に、頭よりも後ろに来るように構える。
少女がこちらに剣を突き出すと、剣がこちらまで伸びてきた。伸縮するのは厄介だ。
体を翻してかわすと、健仁は間合いを詰めていく。何度も突き出される剣を右へ左へと避け、飛んでくる破片を弾く。二メートルほどまで近づくと、少女は鏡の盾を前に作り出し、さらに無数の破片を放つ。
「死ねええええ!」
少女が叫ぶ。鏡の盾でその表情は見えないが、その裏側に殺意に満ちた恐ろしい顔をしているだろう。健仁は破片を避けようとはせず、その場に仁王立ちする。
破片は健仁の体に刺さるどころか、貫いていく。しかし、健仁の体に怪我はない。
健仁の前に立っていた少女が弾き飛ばされる。そしてその後ろには、少女の後ろにいたはずの健仁がいた。
「浅田流喧嘩術――幻影拳だ」
健仁はニヤリと笑う。健仁の拳をまともにくらったせいか、少女は動かない。気絶しているのだろう。
これだけ強い相手を放っておくわけにはいかないので、健仁は流星拳を構える。が、黒い何かが少女を覆い尽くし、そのまま少女ごと消えていった。
「なんなんだよ」
健仁はそう呟くと、剛力の後を追う。
いつかなんたら大賞とかに応募してみたいです。
まだまだ実力不足ですが、いつか小説化するような作品が書けるように頑張ります!




