52話 決断・変動
祝!十万文字達成です~
文庫本一冊ぐらいですかね? よくわかりませんが。
これからも頑張っていきます。
本部。皆が寝静まった頃、黒い影が動き出した。
その影の主――京也は、息を潜めて本部内を移動する。今日の戦闘で疲れたのか、見回りはほとんどいない。
人がいないことを確認すると、京也は出口へ向かう。
なぜこんなことをしているのか。理由は簡単だ。妹のことである。
戦場で再会した妹は、藤堂の言いなりになっていた。それが彼女の意思だということは彼女の表情から見てとれた。
確かに、あの世界は理不尽だ。自分たちのような罪もない人間が地獄のような人生を過ごし、悪人たちはそれを嘲笑いながら生きる。
どんなに幸せな状態であろうと、ただ一度でも惨事が起これば崩れてしまう。幸せは非常に脆く、崩れやすい。
しかし、逆はそうはならないのが現実だ。どんなに足掻いても幸せには手が届かない。あまりにも遠すぎる。
鈴佳は、それを理解している。だからこそ、自分たちのような人間を生み出すあの世界が憎いのだろう。
自分だって、そう考えたことはあった。この状況に置かれたならば、誰しもが己の不幸さを嘆き、他人を眺めながら「不幸だ」と呟くだろう。
しかし、だからといって藤堂の行いを許すわけにはいかない。自分が理不尽な人生を送ったからといって、他人までそれに巻き込むなど考えてはいけない。痛みを知っているはずの人間が、それで良いわけがない。
鈴佳がそう考えているならば、すぐにでも止めなければならない。これ以上思考がおかしくなる前に藤堂から救いださなければ、鈴佳がどうなるかわからないだ。
藤堂の理想が叶ったとして、残るのは後悔と罪悪感だけだ。そんな苦痛を妹に味あわせたくない。
出口の開閉ボタンを押そうとして、止まる。
自分が勝手な行動をしてしまったら、デッドガーディアンズの皆を危険にさらしてしまうのではないか。自惚れではないが、今のデッドガーディアンズにおいて、かなり上位の実力がある。自分が一人抜けるだけで、戦力の減少は激しいだろう。
だが、手はボタンを押した。考えずとも答えは決まっている。妹を助け出さなければいけないのだ。唯一の家族を失いたくはない。
京也は外に出ると、目的地を確認する。
昼間のうちにサラディンから聞いておいたため、正確な距離と方角が記されている。
ここからだとかなり遠いが、能力を使えば一週間もかからないだろう。
京也は体を夜の闇に溶かし、目的地――敵の本拠地へと向かった。
同時刻。デッドガーディアンズ本部の北西には黒いフードを被った二人組がいた。
「面白いけど、物足りないなあ。ボクとしては、もう少し激しい戦いになって欲しいんだけどなあ」
二人組の内、小柄なほうがそう呟く。
「お前は相変わらずだな。そんなに物足りないなら、また誰かをつれてくるか?」
長身の男が聞き返す。
「それはいいね。ボクとしては、必ず死ぬ役回りの人が欲しいなあ」
「……ったく。お前はどんだけ残酷なんだか」
呆れたように腕を広げ、やれやれと男は言う。
「いいじゃないか。それより、候補は居るの?」
「すでに確定しているさ。次に投入するプログラムナンバーはHS251192R。赤城浩介だ。こいつは必ず死ぬ運命にしておくか」
「赤城浩介……か。確か三島優斗の友人で、理想の強さはなかなかの物だったね」
「ああ。こいつを投入すれば、確実に面白くなるだろうな」
長身の男は不気味に笑う。
「君だって、ボクと変わらないじゃないか。同じように楽しんでる」
「お前と一緒にするなって。んなことより、そのボクって一人称はどうにかならないのか? お前は女なんだろ?」
「現世では人気があるらしいよ? カルだって良いと思うでしょ?」
「微妙だな」
カルに即答されて、小柄なほうは肩を落とす。
「んじゃあ、創世主にでも報告でもするか。ファイ、行くぞ」
「りょーかい」
フードを被った二人組――カルとファイは、姿を消した。
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