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借金持ちの俺、ゴブリン牧場で大金を稼ぎます  作者: といとい


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96/98

第96話: ボンさん、タワマンへ引っ越す

朝、スマホが鳴った。

画面を見ると、不動産屋からだった。

このタイミングで不動産屋。

つまり、あれである。


「審査が通りました。お金を振り込んでもらえたらいつでも住むことが可能です」


電話口の店員が、やたら丁寧な声でそう言った。

タワマン最上階。

家賃350万円。

初期費用1200万円。


「ありがとうございます。後ほど伺います」


言ってから、自分で少し笑った。

声が落ち着いている。

昨日の換金額は7258万6000円。

その前は6894万3000円。

初期費用と家賃を合わせても、最近の一日分より安い。

住む世界が変わったなぁ。


俺はすぐにグループチャットへ連絡した。


「タワマン通った」


数秒で、コハルから返信が来た。


「行くっス!!!」


ブタオからも来た。


「キッチン見に行く」


チアキからも届いた。


<契約書類と支払い手順を確認します>


みんな反応が違う。

コハルは住む気。

ブタオは料理する気。

チアキは管理する気。

俺の部屋だったはずなのに、もう完全に共同拠点である。


昼前、俺たちは不動産屋に集まった。

契約書に名前を書く。


家賃350万円。

初期費用1200万円。

パンピーなら目が飛び出る金額だ。


だが、俺たちにとっては一日で稼ぐ金額よりも安い。


支払いを済ませると、店員が鍵とカードキーを渡してくれた。

え、カードキーで入れるんですか?

そうですか


俺はついに、最上階タワマンの鍵を持つ人間になった。

なお収入源はゴブリン牧場である。


そのままブタオの車で、みんなの家を順番に回ることになった。

まずは俺の部屋。

改めて見ると、本当に狭い。

布団。

服。

パソコン。

細かい生活用品。

全部合わせても、チアキの収納にすっと消えた。


<完了しました>


「早い」


「引っ越し業者、泣くっスね」


「荷物が少ない人生だったからな」


「急に寂しいこと言うなよ」


次にブタオの家へ向かう。

こいつの家も俺と同じくボロアパートだ。

ブタオの荷物は、服より調理器具と食べ物関係が多かった。


その次にコハルの家へ行き、服やゲーム機や細かい雑貨をまとめて収納する。

最後にチアキの部屋へ寄ったが、荷物はもともと少ない。

というより、必要なもののほとんどを異空間に入れていた。


引っ越し作業は半日どころか、ほぼ移動時間だけで終わった。

チアキ物流、強すぎる。


タワマンへ戻る。

エントランスを通る時、コンシェルジュが自然に会釈してきた。

俺も自然に会釈した。


エレベーターで最上階へ上がり、カードキーで扉を開ける。

広いリビング。

大きな窓。

遠くに見える青梅の街。

昨日内見で見た景色と同じなのに、今日は違う。

ここが俺たちの拠点になった。


「うわ、やっぱ広いっス!」


コハルが窓際まで走った。

ブタオは迷わずキッチンへ向かった。

チアキは収納とコンセント位置を確認している。


「キッチン、俺が使いやすい配置にするわ」


<通信環境と作業場所も確認した方がよいですね>


「もう完全に共同拠点だな」


「最初からそのつもりっス」


この部屋は、俺の家というより探索者チームの共同拠点になった。


まあ、悪くない。

リビングは広い。

防音も強い。

風呂もでかい。

キッチンもブタオが喜んでいる。

俺の前の部屋より全部上だ。

上すぎる。


「風呂用の椅子とかシャンプーとかもいるっスね」


「生活用品が急に現実味出してきたな」


「足伸ばせる風呂に、安いシャンプーは似合わないっス」


「飯作るなら、鍋と包丁と皿もいるな」


「ブタオはキッチン担当か」


「当たり前だろ」


「ですよね」


家具も家電も、ほとんど足りない。

俺たちは一度リビングの真ん中に立ち、何もない空間を見回した。


広い。

広いが、空っぽだ。

金はある。

なら買えばいい。

となると?


「電気屋行くか」


「いいな」


「高級美顔器ほしいっス」


「自分で買えよ?」


「わかったっス……」


俺たちは大型家電量販店へ向かった。


冷蔵庫。

洗濯機。

テレビ。

炊飯器。

電子レンジ。

掃除機。

空気清浄機。


店員に案内されるたびに、俺はだいたい同じことを聞いた。


「一番いいやつで」


店員の目が毎回少し大きくなる。


分かる。

俺も言っていて少し楽しい。

昔ならそもそも電気屋なんて来ない。

そもそも新品買うとか貴族かと思っていた。

男は黙って中古!!


今は違う。

値札を見ることすらしない。

いい物を買う。

以上。


「冷蔵庫、これでかすぎない?」


「ブタオ用だな」


「俺、そんな食わねぇよ」


「食うだろ」


「食うけど」


認めるのが早い。

ブタオ用の巨大冷蔵庫。

コハルが選んだドラム式洗濯機。

チアキが選んだ通信機器まわり。

俺が選んだでかいテレビ。

全部、チアキの収納へ入っていく。


店員たちは、目の前で大型家電が消えていくたびに固まった。


「配送は……」


「大丈夫です。持って帰ります」


「持って……?」


チアキが無表情で軽く会釈する。

店員はそれ以上聞かなかった。

探索者という職業は、便利な説明札である。


次に家具屋へ行った。


ソファ。

ベッド。

ダイニングテーブル。

椅子。

棚。

カーテン。


こちらもだいたい同じである。


「一番座り心地がいいやつで」


「一番寝心地がいいやつで」


「一番でかいやつで」


「ボンさん、雑っス」


「細かく選ぶセンスがない」


「金で解決してるっス」


その通り。

金で解決できることは、金で解決する。

お金持ちってキモチぃぃぃぃ!!!


タワマンへ戻り、チアキが収納から家電と家具を出していく。

冷蔵庫がキッチンへ収まり、テレビがリビングに置かれ、ソファが窓際に並ぶ。

急に部屋らしくなった。

さっきまで空っぽだった空間が、生活できる場所になる。


「おお、住める」


「いや、家具が入ると違うな」


ブタオはキッチンで炊飯器の位置を調整している。

コハルはソファに座り、足をばたばたさせている。

チアキはテーブルの横で、スマホに必要品リストを作っていた。


<追加で日用品、食器、消耗品が必要です>


「また買うのか」


<生活には必要です>


「ダンジョンより買い物の方がやること多いな」


「ゴブリンは勝手に行ってくれるっスからね」


そうだった。

昨日、14階層へ向かわせた探索組も、そろそろ戻っているかもしれない。

引っ越しと買い物で一日が終わりそうになっているが、牧場の確認は必要だ。


「よし、ダンジョン行くか」


「今日はいくらかなぁ」


「14階層っスからね。7000万行かないくらいっスよ」


「今日の買い物10回以上できるな」


俺たちはタワマンを出て、青梅ダンジョン管理所へ向かった。

車で15分。

近い。


この距離感がかなりいい。

高い家賃には意味がある。


ん?


あれ?


もしかして……


チアキのゲートがあるからこんな郊外に借りる必要なかったのでは……?


いや、気づいてないことにしよう。

そうしよう。


管理所へ着くと、ゆきちゃんがいつも通りスマホを見ていた。


「引っ越した?」


「引っ越しました」


「成金」


「否定できないっす」


「私も引っ越そうかしら」


「上納金たっぷり支払ってますからね」


「いつもご苦労様です」


ゆきちゃんはいつも通りだった。

この淡泊さ、落ち着く。


俺たちは管理所を抜け、青梅ダンジョンへ入った。

大部屋には、14階層探索組が戻っていた。

ナイトを混ぜたおかげか、15階層帰りほどの崩れ方ではない。


チアキに確認してもらうと、帰還数は1044匹。

ナイトオスも57匹中全員が戻っている。

減った分は、ほとんどハイゴブリン側らしい。


昨日生まれた檻Bの赤ちゃん778匹も成体化していた。

帰還組と合わせると、今日の探索戦力は1822匹。

出産チェックも数字だけ確認する。

本日の赤ちゃんは915匹で、ナイトメスからもちゃんとナイトが生まれていた。


「今日も14階層だな」


「タワマン買い物で金使ったからっスか?」


「働く理由ができてよかったな」


『ウラーーーラーーーラーー!!!』


俺たちは、ナイト入りの大部隊をもう一度14階層へ向かわせた。

そのあと、14階層帰りの魔石バッグを持って管理所へ戻る。


「換金お願いしまーす」


「6242万8000円」


「引っ越し代、戻ったな」


「戻りすぎっス」


タワマンへ引っ越して、高い家電と家具を買って、そのあとダンジョンへ行ったらまた6000万以上入った。

人生、どうなってるんだ。

まあ、最高です。


現在のゴブリン牧場の状況(4646匹)

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

・ゴブタロウ檻(ゴブタロウ/ゴブリンナイト + ハイメス720匹 + ゴブリンナイトメス13匹 + 赤ちゃん73匹)

ゴブタロウ(ゴブリンナイト)1匹

ハイメス720匹

ゴブリンナイトメス13匹

ハイメス赤ちゃん65匹

ゴブリンナイトメス赤ちゃん8匹

・スカー檻(スカー + ハイメス54匹 + ハイメス赤ちゃん5匹)

スカー1匹

ハイメス54匹

ハイメス赤ちゃん5匹

・チビ檻(チビ + ハイメス54匹 + ハイメス赤ちゃん5匹)

チビ1匹

ハイメス54匹

ハイメス赤ちゃん5匹

・ヤリ檻(106匹)

マジシャン13匹

ファイター12匹

ハイメス74匹

ハイメス赤ちゃん7匹

・檻B(825匹)

ハイゴブリンオス赤ちゃん583匹

ゴブリンナイトオス赤ちゃん77匹

ファイター赤ちゃん81匹

マジシャン赤ちゃん84匹


・秋田鉱山組(966匹)

ハイゴブリンオス711匹

ゴブリンマジシャン109匹

ゴブリンファイター146匹


・青梅14階層探索組(1822匹)

ハイゴブリンオス1275匹

ゴブリンナイトオス119匹

ゴブリンファイター197匹

ゴブリンマジシャン231匹

⸻⸻⸻⸻⸻⸻

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