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バルニアを発つ

 バルニア発フェノマ諸島経由フレゼレシア着の船券を渡され、ジュリアンにお礼を伝える。

「ありがとうございます。身元保証人になってくれて」

「なに……君には恩があるから……黒獅子リオーグ公爵領に来ることがあったら訪ねてきて」

 行くことはないけど……。

「ええ、その時はぜひ」

 彼女の手には、帝国領南部の港町グリンベリューン行の船券が持たれていた。

 俺たちがいるのは、バルニア港。

 いろいろとあり、いろいろとやりすぎたせいで、島にはいられなくなった俺……は、この島から南下し、東方大陸のリーフ王国フレゼレシアに向かうことにした。

 リーフ王国には、大隧道と呼ばれる地下迷宮の他、賢者の塔アークホロコープ魔将の城オプスィディアンシュロスといった古代の建築物もあり、きっと良い発見があると期待したことと、すぐに買えて帝国から離れる便の行先がそこだったことから決めた。それに、母さんの養父である大魔導士の故郷だ!

 まずは、リーフ王国の公港都市フレゼレシアに入り、そこから各遺跡に向かおうと思う。公港を持つ都市だから、きっと傭兵組合ギルドもあるだろう。

 また、登録して、ポーター探しをしないといけない。

 リューネ、孤児院がなくなって、抜け殻のようになってしまったけど、大丈夫だろうか……ジェロームが面倒みると言っていたけど……後ろ髪をひかれるのは、彼女のことがあるからだ。

「でも、アルスはよかったのか?」

「え? 何です?」

 俺たちは、それぞれの乗船時間がまだ少し先なので、海を眺めて呼び出しがかかるのを待っていた。

 彼女は、チラリと俺を見て口を開く。

「残ってくれという島民たちの誘いを断って……バルニアの英雄だなんて言われているのに」

「……極悪人です」

「タウジナス一味を壊滅させて、悪徳商会を解散に追い込み、金で街を支配していたスチュワート・オルグに命で償いをさせた……議会開会中に乗り込み、腐敗した評議会議員の連中を追求し、こらしめて、全員辞職に追い込んだ……島民は皆、拍手喝采じゃないか……軍上層部も、君を表立っては犯罪人だとしているが、まったく捕まえようとしない。皆、感謝しているからだ」

「俺は外地人と呼ばれる、余所者ですし、魔導書を探す旅を続けたいんです」

 ジュリアンは微笑むと、海からの風で乱れる髪を手で押さえながら言う。

「それにしても、どうしてアルスがしたことだと広まったのだ? 評議会議員たちが総辞職した頃には、オルグ商会とタウジナス一味壊滅はお前がしたことだと街中の人たちが騒いで……街全体はお祝いしていた」

「それはきっと……」

 傭兵組合ギルドの人たちだろうと思う。

「ギルドの責任者との会話を聞かれていて……俺が成功するかどうかを賭けられていましたからね」

「それはまた……」

 彼女は呆れたような表情となり、次に微笑む。

 可愛い笑みだ。

 いつも、そうしていたらいいのにと思うが、誤解されたくないので笑みを返して海を見る。

 穏やかなに見える海も、近くで見ればきっと波は高いだろう。

 風の強さで、そう思えた。

「アルス……アルスのおかげで……わたくしは助かった。帰ったら、犠牲になった騎士たちの家族に会い、謝罪をしようと思う。わたくしの力不足が原因だったから」

「慰めじゃないですが、彼らの力量不足もあります。厳しいことを申すようですが」

「それでも、残ったわたくしの責任だ……でも、こう思うのも、アルスに助けられたからだ、本当にありがとう」

「いえ、俺こそお礼も頂いたうえに、船まで。ありがとうございます」

「まだまだ足りないと思う……ん?」

 ジュリアンが首をかしげ、肩越しに市街地のほうを見る。

 吊られて、俺もそちらを見た。

 走ってくる女性が一人。

 荷物を背負ったその人は、リューネだとすぐにわかった。

「間に合った!」

 彼女はそう叫ぶと、止まらず、俺にぶつかるようにして抱きついてきた。

「うわ!」

「アルス! 間に合ってよかった」

 彼女はそのまま動かず、俺はされるがまま抱きしめられた。

 ……柔らかな感触があたっている。

 いい匂いがして、これはまずい……。

「あの……離れてもらっても?」

 リューネは俺から離れたが、まっすぐに俺を見つめて口を開いた。

「わたしも、行く」

「行く?」

「アルスと、一緒に行く。ジェロームも、そうしろって後押ししてくれた。船に乗ることも彼から聞いた。お願い、連れていって」

 孤児院がなくなった彼女が、これからどうするのかと心配だったけど、まさかこう言われるとは思ってもいなかった。

 ジュリアンが、俺の肩をポンと叩く。

「アルス、船券、もう一枚買ってくる」

 俺が何かを言う前に、お嬢様はさっさと離れていく。

 直後、リューネの唇が、俺の唇に重ねられた。

「……」

 離れた時、彼女が言う。

「仇……とってくれてありがとう……アルス」

 キレイな彼女は、一筋の涙をこぼしながら、笑っていた。

 俺は、照れくさかったけど、彼女を抱きしめる。

「ポーター……やってくれますか? 俺の」

「もちろん……もちろん!」

 俺たちは、お互いの背を軽くたたき合い、離れる。

 そして、二人で海を見た。

「未発見の魔導書! 見つけるぞー!」

「手伝う! 手伝っちゃうよー!」

 行くぞ!

 次は、東方大陸のリーフ王国だ!

第一部 完

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