エピローグ ――そして、明日
《ファンタズマル・アイランド》は――三日後、正式にサービスを再開した。
バグの修正、システムの安定化、ログアウト処理の完全な正常化。全ての対応が、ほぼ同時に完了した。
サービス再開初日――プレイヤーたちが戻ってきた。
廃都は修復されていた。集落は残っていた。NPCたちは正常に動いていた。ラフも、ヴェルナルも、番兵として動くようになった元の兵士たちも。
カイは――世界に溶けるように、いた。フィールドのどこかに、気配として。
倉城音央は、ログインした。
接続した瞬間――視界が低い。前足がある。黒い巨体。
「……やっぱり猫か」
管理画面を開く――
```
【GM認証:完全】
【管理者権限:全解放】
```
「……正常だな」
そのとき。ログが一行、来た。
```
「おかえり、音央」
```
音央は少しだけ、笑った。
「……ただいま、ヒカリ」
灰色だった空に――今日は、朝の光がある。
壊れていた世界が――動いている。
黒猫のGMは、また――歩き出す。
今度は、最初から。
一人じゃなく。
*マスターネオはネコまない 完結*
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
倉城音央という人間は――最後まで、猫のままでした。
権限が全部戻っても、妻が帰ってきたわけじゃない。ヒカリはコア領域の中にいる。音央は外の世界にいる。
それでも――ログインするたびに、会える。
設計師は、そういう世界を作った。
カイは、音央を守るためにヒカリが遺したものでした。リリィは、音央が閉じていた心の扉を開けた人でした。ラフは、この世界の一番小さくて大切な命でした。
《エビルウィンド・フロム・ハデス》は、結局――使われませんでした。
でも、持っていることに意味があった。壊せる力を持ちながら、壊さなかった。
倉城ヒカリは――そういう人を、愛していたのだと思います。
またいつか、《ファンタズマル・アイランド》の空の下で。
*マスターネオはネコまない 了*




