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そうだ、オリュンポス行こう  作者: くらうでぃーれん
3.泥と林檎と狩猟の女神
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3-3

「しょーがないわね、来月のガチャの為に、今月はメイン垢以外はランカーから身を引いてあげるわ。感謝しなさい人の子!」


 そして突如不遜な態度に切り替わるが、なんか自慢げな子供みたいだったので怒りは湧かなかった。


「‥‥あ、あの、ありがとうございます。なんだか交渉も頑張ってもらったみたいで」


 僕はやや戸惑い気味にアテナ様に礼を述べると、アテナ様は涼しげな笑みを浮かべて軽く胸を反らした。


「構わないわ。交渉とて、広義的に見れば戦のひとつ。戦の神として負けるわけにはいかないのよ」


 なんてことだ‥‥、アテナ様って、実はめちゃくちゃイケメンなのではないだろうか。

 そう思ったところでふと、まさかとは思うが、ソフィが背徳の兄妹愛から麗しき百合道へ転向してしまわないかと不安に駆られ、背後のソフィに視線を向ける。


「アテナ様、ちょっとカッコいいかも‥‥。お兄ちゃん>>>越えられない壁>アテナ様、くらいまで順位がせり上がってきちゃった‥‥///」


 マズいな、越えられない壁とはいえ、アテナ様は戦の神。越えずとも、何らかの方法で壁を切り崩してくる可能性は否めない。となると、僕の取ることの出来る手段は壁をより頑丈にするか、増設するかである。もしくは、アテナ様をソフィランキングから完全に排除し、ソフィの視界から僕以外を消し去ることだ。そうなれば僕とソフィは完全に2人きりの世界に入り込むことができ、何者にも邪魔されることのない永遠の楽園へと到達することが――


「そうと決まれば行動開始ね! とっとと終わらせてとっととランカー復帰しようじゃない! つーか、報酬前払いとかどう?」

「‥‥うぼぁ!?」


 アルテミス様にばっしばっしと背中を叩かれて、無理やり現実に引き戻された。

「どうやって収穫前に払うのよ」とアテナ様の突っ込みで、僕の背中を連打するアルテミス様の手がようやく休まる。


 手を止めるとアルテミス様は急に悩むような顔になって、アゴの下に指を添えた。なんだか表情がコロコロ変わる人だ。


「とは言っても、あたしはアテナほど自由にウロウロ出来るほど暇じゃないわ。ちょっとは神殿にも顔出さなきゃいけないし、旅してると無料ウィーフィー探すのも面倒だしね」


 よく分からないが神様も忙しいのだろう。先ほどから板に向けて激しく指を叩きつけ続けているし、あれもきっと何かの仕事なんだろう。


「てなわけで、あたしは情報収集を主に担当させてもらうね。心配しなくても、文句言わせないくらいちゃんと動いてあげっから」

「ええ、元々そのつもりだったから、助かるわ」


 どうやらアルテミス様は諜報員ポジションのようだ。とてもそうは見えないが、人を見た目で判断してはいけないってことかな。


「ねえ、アポロンは呼べないかしら」

「おー、いいじゃん。手伝わせよう。ちょっと電話してみるね。さっきログイン5分前になってたから、忙しいとは言わせないゼ」

「いやアポロンなら大丈夫でしょ‥‥」


 アルテミス様が指先で連打していた板を持ち上げて表面をペチペチ叩くと、耳に押し当てて黙り込む。どうやらその動きだけでここには居ない別の神、アポロン様と連絡を取ることができるらしい。いやー、神様って便利だなー憧れちゃうなー。


「もしもs『愛してるよアルテミス!』

「死ね」


 板から溌溂とした男性の声が聞こえたと思うと、アルテミス様は女神とは思えない恐ろしい言葉を吐き捨てて、耳から板を離した。


「やっぱヤメた。ウザい」

「分かりきってたことじゃない‥‥」


 確か、アポロン様といえばアルテミス様の兄だったはずだ。何やら熱烈に愛を叫んでいたように聞こえたが。


「悪いね、人の子。期待させたけど、やっぱり兄ちゃんの助力は無し。キモいから」


 アルテミス様は口元を歪めて言うが、正直僕には先程のやり取りのどこにキモさがあったのか理解できなかった。そのくらい、僕とソフィの間では当たり前の挨拶なのだが。

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