謎の少女
見知らぬ少女━━。
総純の家の前に立っている。
ドンドンと、引き戸を叩く。
「霊能力者はいらんかえ〜」
ノーリアクション。
ドンドンと、引き戸を叩く。
「霊能力者はいらんかえ〜」
ノーリアクション。
「いい加減にしろ! いることは分かってんだ!」
恐る恐る引き戸が開き、総純が出てくる。
「え〜っと・・・君は・・・誰?」
「神林歩美。あんたの嫁さんだよ」
この小学校低学年ほどの年齢としか思えない、可愛らしい少女はニッと笑う。
「疲れたから風呂入らせて」
ズカズカ勝手に入って行く。
呆然としている総純。
布団からガバッと起きる理子。
村長の親戚の家。おばさんが理子の枕元に座っている。
「やっと起きたのかい。何だってあんな所で寝転がってたんだい!面倒かけないでおくれよ」
立ち上がり、去って行くおばさん。
「あ痛たっ」
(体中あちこちが痛くて、体中擦り傷だらけでした)
━━村長から衝撃の話を聞いた私は、まさかあの子犬が・・・と、一刻も早く確かめたいと思い、元の私の家へ駆けたのです。もしかしたら戻ってるかも知れないと・・・。
でも向かう途中、転んで気を失ってしまいました━━
村長の親戚の家に、村長が来る。
「どうだ。福田さんの様子は」
「やっと気付いたみたいだよ」
(玄関で、村長と親戚の方が話していたみたいで、私は布団の中で聞き耳を立てていました)
「例の一族に頼んでおいたよ」
(例の一族?)
「本当にそんな一族いるのかい?」
「ああ、いるとも。まさか私の代の時に厄介になるとは思ってもみなかったが」
「まぁちょっと信じ難いけど、何の手立ても無いんじゃねぇ」
(この時は、何の話をしてるのかさっぱり分かりませんでした)
━━私はしばらく休んでから、すぐ出掛けて行きました。親戚の方も、ただ義務感でやってるだけですし、夕方までには帰って来るように、と言うだけで、私が出掛けるのを許可してくれました。
元の私の家には、子犬はいませんでした・・・。
怖くなった私は、どうしても総純君に会いたくなって、総純君の家へ向かいました━━
理子はこの恐怖を消して欲しい、との想いを込め、ドンドンと、総純の家の引き戸を叩く。
「は〜い。どなたぁ?」
見知らぬ少女の声に戸惑う理子。
(恐怖に震えている時に、見知らぬ少女の声がして、私は何がなんだか分からない、複雑な心境になりました)
ピタッピタッという、何か濡れた足の足音が聞こえてくる。
引き戸がガラッと開き、全裸の少女。
「? ? ?」
「あんた誰?」
「てっ・・・ていうか・・・あっ、あなたこそ誰ですか?」
「総純の嫁ですけど」
「よ、嫁・・・?」
慌てて総純が理子の横に駆けてくる。
「外で薪をくべてて気付かなかった。ごめん」
「総純君・・・この子、誰?」
怒りとも悲しみとも、何とも分からない震えが理子を襲っている。
「あっ、あの・・・」
「だから嫁・・・」
口を挟む歩美。
「あなたには聞いてません!」
きっぱり遮断する理子。この時の感情は、怒りが勝っていたようである。
「え〜っと・・・」
明らかに狼狽している総純。
「何で即答できないの?」
「あんたは何? 総純の彼女?」
めげずに口を挟む歩美。
赤面する理子。
「ち、違っ・・・」
「違うの? だったら言いじゃん」
涙目で総純を見つめる理子。
「ち、違うんだ」
動揺する総純。
「えっ? 彼女じゃないってこと?」
ボケをかます歩美。
「ちっ、その違うじゃない」
もう何が何だか分からないといった感じの総純。
涙目で駆けて行く理子。
「さよなら」
「えっ? さよならって・・・どういうこと」
茫然とする総純。
(この時の私は、何が何だか分かりませんでした。恐怖と悲しみ、多分嫉妬も・・・いろんな感情がいっぺんに押し寄せていたのです)
「ちっ、違うんだ・・・違うんだよ〜」
思わず追いかける総純。
「だから何が違うの?」
最後までボケ通したかのごとくの歩美。
(後に事情を聞きましたが、総純君もよく事態を飲み込めていなかったようです。突然、嫁と言い張る少女が訪問して来て、長旅で疲れたからお風呂に入らせて欲しいと、頼まれたそうです。この時はまだ、謎の少女という感じでした)




