魔物の正体
━━私は独りとなってしまいました。もっとも父が帰ってこないこともあったので、実質独り暮らしではありましたが・・・
それでも村長はさすがに独りでは不憫だと思ってくれたらしく、私は村長の親戚のおばさんの家に住むことになりました。そのおばさんは、嫌々義務感でやっているようで、おばさんと上手くやっていけるか不安でした━━
粗末な木造建築の村役場。
「実はな、福田さん」
村長室の中で、初老の村長が理子に語りかける。
「わしには思い当たる節があるんじゃ」
「えっ? 思い当たる節・・・?」
「あなたのお父さんの死体の傷・・・」
「はい」
「あれは明らかに動物か何かに噛まれた跡だ」
(思い出したくもありませんでしたが、確かに何かに噛まれたような跡がありました)
「言い伝えでは、約1000年前、この村はほとんど壊滅状態に追い込まれたことがあるらしい・・・」
「そう・・・なんですか?」
「福田さん、あなた、お父さんのご遺体以外に、何か見ませんでしたか?」
「何か・・・って」
何のことかさっぱりわからない理子は、訝しい表情。
「何かこう・・・」
(この時、村長は明らかに言いよどんでいました。それほどまでに過去のことを話したくなかったんでしょう)
「ど、動物とか・・・」
(私は少し動揺しました。この時、動揺していることがばれないように、平静を装おったつもりでしたが、ばれていたかは分かりません)
「いえ・・・」
「実は1000年前、村が壊滅状態になったのは、動物・・・いや、怪物に襲われたからなんだ・・・」
(初めて聴いた時、俄には信じられませんでした。怪物なんて・・・)
「なぜこの村がフェンスに囲まれていると思う?」
「あ、父から、動物の侵入を防ぐため、と聞きましたが・・・」
「その通りだ。もちろん鳥や小動物などまでは不可能だ。だがそのような動物に関しては、見つけしだい猟銃で殺すことになっている」
「なんでそこまでして・・・」
「魔物だ・・・」
(私は慄然としました)
「この村には、動物を怪物へと変えてしまう、魔物が棲んでいるのだ」
青ざめ、ブルブル震え出す理子。
「今はまだそれしか言えん」
━━━━。
駆ける。息を切らせ、心臓が張り裂けんばかりに。何かが理子の体を運んでいるかのように、足が勝手に動く。想いが━━。
本当にそうなのか、一刻も早く確かめたいという想いが、生涯で最も速い速度で足を動かしている。
その未知の速さは、体を宙に浮かせる。天と地が引っくり返る。
(私は何がなんだか分かりませんでした。目の前が真っ暗になりました)




