暗黒の魔物の棲みかで、初の恐怖
「はぁはぁ」
荒い息遣いで、帰って来た理子。
キャンキャンと、理子の状況を知る由もない居候が元気にお出迎え。
ガタガタッと音がする。
「きゃっ」
理子は子犬を強く抱きしめる。
「ワンちゃん・・・」
クゥンと答える子犬。
(風の音か何かだったのでしょうか・・・帰って来る途中で聴こえた、ガサガサという音も・・・)
柱からヒモをほどき、子犬と共に布団に寝る理子。
(私は寝るには寝たのですが、その夜は何故か特に気持ち悪い感じがしました)
布団に寝ている理子は苦しそうに唸っている。
「う〜ん」
家の中にドロッとした不気味な"赤"が降り注ぐ。
(私はこの家の中が赤いもの──おそらく血──で染まって行く夢をみました。
この村に来て、こんな苦しい夜は初めてでした)
━━その夜、父は帰って来ませんでした。━━
理子、目が覚めると、独り布団の中。
「・・・あれ、ワンちゃん」
一緒に寝ていたはずの同居者がいない。
(一抹の不安が無いわけではありませんでしたが、とにかくもう時間ですし、学校へ行くことにしました。)
家を出る理子。
足元に何かあるのに気付く。
「?」
何かどす黒い液体が垂れた跡。よく見ると、その横にも点々と垂れた跡が続いている。追って行くと・・・
家の裏。
「きゃあああぁぁ!」
そこには、父の死体・・・。
見るに耐えない姿。
体中至るところに、何か大きな動物に噛まれたような跡があり、しかも肉は抉られ、尋常じゃない噛み跡・・・
まるで怪物の・・・
(この日私は学校を休み、悲しみに暮れました。悲しみ、恐怖、独りになってしまった寂しさ、心細さ、それらを泣きじゃくって必死に払おうとしました。でも気付くと、何故か必死に走ってました)
理子は息を切らし、総純の家に着く。
(私は総純君に会えば、幾分かは悲しみが癒えると思ったのかも切れません)
ガラッと引き戸が開き、総純が出てくる。寝間着姿で髪は濡れ、体中がポカポカしてる様子。
「お風呂・・・?」
「ごっ、ごめん」
クスッ。
(私は思わず苦笑してしまいました。私がこんな大変な時に、何を呑気にって。もっとも総純君はそんなこと知る由も無いわけですが。事情を話すと、総純君は・・・)
「そんなことが・・・」
総純は理子を抱き締める。
「えっ?」
(私は驚きましたが、でも嬉しかったです)
理子は涙ぐみ、総純の体に顔を埋める。




