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AIが運営するVRMMO  作者: ケイ
13/19

タイムアタック

AIオンライン バージョン1.0

・馬の呼び出し使用時、ごく稀に建物等オブジェクトに引っ掛かる不具合を修正しました。


―――――――――――――――――――――――――――――



私はコバトのキャラクター情報を見てドキドキが止まらなかった。

自分よりもレベルが上であること、職業は間違いない新種だ。暗殺者という職業はあるかもしれないと事前に噂は流れていたが実際になれたというプレイヤーは1人も見たことがなかった。


外套シリーズは現状公開されている職業では、弓使いしか装備できないはずだ。だが目の前の彼はそれを装備し、腰に2本の短剣まで持ち合わせている。武器が2本装備できるのが暗殺者の特徴なのだろうか。


「さて、ダンジョンに向かう前に中の間取りやあんたの攻撃手段なんかも―――」


「あんたじゃなくてヒカリでいいわ。こっちもコバトって呼んでもいい?」


彼の質問を遮るように伝えた私の言葉に彼は笑顔で頷いた。


大丈夫、きっとコバトとならできる気がする…。

私は希望が見えた気がした。


―――――――――――――――――――――――――――


「無理だな!諦めっか!」


見えた希望が潰えた。5分くらいだった。


「なんでよ!コバトはものすごく速いんでしょ!」


「確かにそうだけど攻撃力が足りなさすぎるんだよ。加えて騎士ができるって言った範囲攻撃スキルすら俺は持ってない。基本は1対1に特化した職業だからな!」


「ううぅ、私が早く移動できさえすればあんなやつら1匹1スキルで蹴散らしてやるのに…」


その言葉でコバトはポンと手を叩いた。


「よし、じゃあそれでいこうか」


「へ?」


そしてコバトと私は周囲に人気が無くなってからダンジョンの入り口へと向かった。


「姿勢を低くしてーそうそう。弓を正面に構えて前の敵だけ見てるんだぞ?後はなんとかやってみるから。あ、敵の攻撃はなんとかしろよ?」


何かものすごーく嫌な予感のする言葉と共に…



――――――――――――――――――――――――――――――――――



「にゃあああああああ!!」


「ほら前見て前見て怯むな射て射て!」


ダンジョンに入った瞬間コバトは《影走り》とかいうスキルを発動し自分の影の中に沈みこんだ。最初はこれが速度をあげる手段なのかと思った。いや、実際にそうだったのだが…問題はここからだった。


そして目の前で影がするりと私の足元に移動したかと思うとジェットコースターのような勢いで地面が動き出したのだ。


「無理だって無理だって!てかコバトその状態で周り見えるの?上見たら殺すから!」


「どうせスパッツだろあんた!最強の弓使いなんだろ!お前ならいける!」


その言葉で目の前を見た。コバトは走り回りながら、常に正面に敵がくるように調整してくれているようだ。

ならば私もそれに応えなければ…!

目を開け、正面をしっかりと見据える。

弓を構え、弦を引き絞り、狙いをつけ、そのスキルを発動させる。


「《ピアッシングアロー》」


強力な回転力纏った矢が正面の敵1匹だけでなく後ろにいた何匹かも巻き添えにして突き進む。それはまるで突風のように正面の敵を凪ぎ払った。


「やるじゃん!それ最後まで打ち続けられるか?」


「ポーション込みでこのペースなら最後までギリギリ持つわ!」


任せたぞ!というなんとも高揚感溢れる台詞と共に影は更に加速する。


私もそれにならってより一層目の前の敵に集中し、スキルを連射し始める。


《ピアッシングアロー》は弓使いの初期で覚えられるスキルだがその性能は素晴らしいの一言だ。

少ないMPで発動でき、スキル自体の攻撃倍率もよく。貫通力によって1列に並んだ敵なら凪ぎ払うことができる。

まさに弓使いにとって初歩にしてこの先も世話になるであろう万能スキルだった。


「ごめん!ポーションをぶつける回復方法じゃポーション足りないかも、正面の敵を倒したら1度止まって!弓を片手に持ち変えてポーションを直接…」


言葉を最後まで紡ぐことはなかった。足元の影の中からMPポーションが2本私に向かって放られたのだ。

それによってMPのゲージが再び《ピアッシングアロー》を何発も射てる範囲まで回復した。


「これで行けるか!?」


「うん!行って!」


コバトのとっさのフォローに感謝しながら私は矢を放ち続けた。


しかし彼の技術は凄まじい。この信じられない速度を維持しながらモンスター達が()()並ぶ瞬間を維持し続け、モンスターの行う遠距離攻撃はしっかりと避ける。

そのうえ上にいる私にMPポーションを的確なタイミングで放って見せた。

きっとこれと同じことができるプレイヤーは何人もいないだろう。そんな確信があった。


「これで後…3、2…次で最後!ゴール前にでかいのが来るわ!」


「よし!」


目の前の洞窟の先に光が差した。この先に出口があり、その手前にランダムにボスモンスターが出現するはずだ。


そしてそいつは魔方陣から現れた。

大きな、大剣と呼ぶより鉄塊を持ったという表現の方が似合うそれを振り回すのは牛の顔をした深紅の巨人。目測5メートルはあろうボスモンスターだった。


「見たことないモンスター!ミノタウロス上位種って書いてある」


「上等だ!倒せないってこたぁないだろ!全身全霊で1発決めてやれ!」


遠慮せず突っ込むコバトに合わせ、《ピアッシングアロー》では倒しきれないと踏んだ私は現状最高火力の出る職業レベル30で会得できるスキルを使うことを決意する。

弓を片手に持ち変え、コバトのおかげで手元に残すことができたポーション3本を手のひらで握り潰す。

そしてギリギリそのスキルを発動させられる量のMPとH()P()を確保し、そのスキルを発動させた。


「《サクリファイス》」


しかし、ミノタウロスはこちらに気づき、その巨体からは信じられない速度でこちらに突っ込んできた。


だがスキルはもう止められない。HPの半分とMPの大半が対価として消え、引き絞った矢が黒く染まり、弓の正面に赤い加速陣が浮かび上がる。


大剣が私に向け振り上げられた。

だけど、怖くはない!


「やらせるかよ!」


ミノタウロスの大剣に真っ向から飛び出していく《影走り》を解除したコバトの背中が見えたからだ。


コバトは振り下ろされる大剣に対して横から、軌道を反らすように2本の短剣を叩き込んだ。


ギリギリ、本当にギリギリだが私の身体を掠めるように大剣は私の立っている位置から少しずれ、地面を抉りとった。


「いけぇええええ!!」


それは、小さなブラックホールだった。漆黒の矢がミノタウロスに向かって飛んでいき…それがたどり着いた瞬間、胸にぽっかりと穴が空いたのだ。


防御力という概念を完全に無視する空間消失スキルにミノタウロスは大剣が手から滑り落ちゆっくりと膝をついた。だが…消えない。


「嘘…!まだ倒しきれてないの!?」


ミノタウロスが拳を握りしめ膝をつきながらも私にその手を伸ばそうとする。


「うちの相棒の必殺スキルだぞ…空気よんで倒れとけ」


だが、最後にミノタウロスが伸ばした手は空をきり、満身創痍の身体、その喉には黒い短剣が深々と突きたっていた。


今度こそ光に消えるミノタウロスの姿を背にコバトは笑顔でこちらに手を伸ばした


「最高にかっこよかったぞ!後はゴールだけだ、行こうぜ!」


あぁ―――私があの時見た光は…やっぱり希望の光で間違っていなかったようだ。



『タイムアタックダンジョンクリアおめでとうございます!ただ今のタイムは5分4秒です!ランキング1位にランクインしました!』


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