モンスターとの戦い
「おらぁ!」
ザシュッ!
白地に金糸で刺繍をしたマタドール風の服とズボンを着たアルフレッドが、ウルフを剣で斬り裂く。
西の城門を出たクロスとアルフレッドは、森を切り開かれて造られた街道で、ウルフの大群に襲われていた。
「おい!クロス!少しは手伝ってくれよ!」
先程から戦っているのはアルフレッドだけで、クロスは何をしているのかというと、地面に生えている青い色の草、薬草を採取していた。
「おう。採取し終わったからいいぞ。」
立ち上がったクロスは、横からアルフレッド目掛けて飛び掛かってきたウルフを蹴り飛ばす。
「「キャイン!」」
蹴り飛ばされたウルフは仲間のウルフに当たって情けない声で泣く。
クロスはアルフレッドの横に並ぶと、首をコキコキと鳴らせて拳を構える。
「さてと、楽しませてもらいますか!」
「楽しむって、お前なぁバトルジャンキーかよ!」
クロスが呟くと、それを聞いたアルフレッドが呆れながらツッコミを入れる。
そんな事を言ってるアルフレッドにウルフが噛みついて来たので、クロスが威圧のスキルを使うと、一瞬、ビクッとして動きを止めた所にアルフレッドが剣で斬ると、HPが0になってウルフの体がガラスの様に砕ける。
ウルフの体が砕けた後に出てきた光の粒子が、クロスとアルフレッドの体に飛んで吸収されると、経験値が加算される。
「なぁクロス、コイツら何匹いるか分かるか?」
「ん~?・・・俺の策敵の範囲だと15匹かな?まだ森の中に何匹かいるみたいだけどな。それでアル、何か言いたいことはあるか?」
クロスは言葉の最後の部分をドスの効いた低い声で喋ると、アルフレッドに威圧を飛ばす。
「!?、き、気付いてたのか!スマン、悪気は無かったんだ。」
「後で説明してもらうからな!」
「り、了解。」
その返事を聞いてクロスは、威圧を前方に放つと、ウルフの群れに突っ込んで行く。
そして、威圧で硬直していたウルフの顎を蹴り上げ、左右から硬直の解けたウルフが飛び掛かってきたので上体を反らして避けると、ウルフの首根っこを掴んで頭を打ち合わせる。
フラフラになった三匹のウルフをやって来たアルフレッドが斬りつけてHPを0にする。
「一人で突っ込むなって!あと、お前の職業って格闘家か?」
「いや、侍だ。」
「だったら、刀使え刀を!」
「あっ、装備するの忘れてた!まぁ、この程度なら必要ないと思うけどな。」
「それはお前だけだってーの!」
そんな事を言ってると、ウルフの群れに囲まれてしまう二人。
「あーあ、囲まれちったよ。全部アルのせいだな。っと!」
飛び掛かってきたウルフを殴り返すクロス。
「いやいやっ、お前がっ、飛び出すからっ、だろっ!」
アルフレッドも軽口を叩きながらウルフ斬っていく。
なんだかんだで、冗談を言える位には余裕のある二人だった。
それから二人がウルフを10匹くらい倒したところで、森の中からウルフの遠吠えが聞こえたと思うと、新たにウルフが10匹現れる。
遠吠えを聞いたアルフレッドの顔がひきつる。
「やッべぇ!リーダーウルフを呼び寄せたみたいだ。」
「何だソイツは?」
「リーダーウルフってのは、名前の通りウルフを統率するウルフの事で、ズル賢くて仲間が減ると遠吠えで仲間を呼び寄せるし、何処かに隠れてるから厄介なんだよなぁ。」
「でもそれって、経験稼ぎたい時なんかはわざと残して呼んでもらったら良いじゃん。」
「それはそうなんだけどな。今の俺らのレベルでこの数のウルフとリーダーウルフを相手するのは厳しいつーか、数の暴力で殺られると思う。」
「あれ?生き残る自信無い?」
「カッチーン!誰に向かって言ってんの?上等だコノヤロー!やってやんよ!」
「はいはい、無理すんなよ~。」
それから二人は、競争するかの様にウルフを狩り続け、最後にリーダーウルフを仕留めた時にはウルフを100匹以上狩っていたのだった。
*****
二人は今、街道を引き返し、西の城門外の野原で休んでいる。
城門の側にはモンスターが近付かないからである。
「ハァハァ、あ゛~疲れた。」
「ふぅ、そうだな。それで、アル。あの時、お前はアイテムを使ったみたいなんだが、何をしたんだ?」
「実はだな、狩りに出る前に雑貨屋に寄っただろ?そこで、魔寄せ線香ってのを買ってな、それを使ってみたんだ。」
「それだけか?」
クロスは長年の付き合いから、この友人がまだ何か隠しているのを見破り、威圧を放ちながら問い詰める。
「じ、実は、どのくらい効果があるか分からなかったから、三つ使ってみました!」
「アホかっ!そんなもん大量に使うな!」
「いでっ!」
いい笑顔でサムズアップするアルフレッドにクロスはデコピンをする。
「あ~、でも納得だな。だから、リーダーウルフが三匹いたのか。」
「なにっ、それ本当か?」
「気付いてなかったのか?遠吠えが三ヶ所から聞こえてたろ?」
「全然、知らなかった。」
「はぁ、まあいいや。それで、この後は?」
クロスは溜め息をつくと、アルフレッドに残りのクエストを確認する。
「残りのクエストが、蜘蛛の糸の採取だけだから、北か南の森でビックスパイダーを狩るだけだな。」
「じゃあ、さっさと行こうか。マタドール♪」
「やめろ!マタドール言うな!」
そう言うとクロスは、城壁に沿って南の森に向かって駆けて行く。
アルフレッドは服のデザインについて文句を言いながらクロスの後を追いかけて行った。
*****
南の森に入って暫くすると、お目当てのモンスターを見つける。
「ビックスパイダーって言うだけあって本当にデカイな~。虫が苦手な奴にはちょっとした恐怖だよな。」
クロスは初めて見たビックスパイダーの感想を漏らす。
その名前の通り、体長1メートルもある蜘蛛だった。
「ああ、実際、女性プレイヤーとか虫が苦手なプレイヤーは、この森を避けてたからな。と言うわけで、さっさと済ませようか。」
そう言うとアルフレッドは、剣を抜いてビックスパイダーに見つからぬ様に茂みを移動する。
クロスも刀を抜きアルフレッドがビックスパイダーの背後に回るのを待つ。
暫く待つと、アルフレッドからフレンドチャットで背後に回ったと連絡が来ると、クロスは近くに落ちていた石を拾うと、茂みから出てビックスパイダーに投げる。
ゴンッ!
うまい具合に当たると、クロスの方にビックスパイダーが接近してきて噛みついてくる。
それを避けて手にしていた刀で斬る。
「フッ!」
ザシュッ!!
「キシャァァァ!」
胴体を斬られたビックスパイダーは、脚を大きくバタつかせて暴れると後方にジャンプしてクロスと距離を取る。
「どうした?来ないならこっちから行くぞ!」
そう言ってクロスが一歩踏み出すとビックスパイダーが体を低く構え、口から糸の塊を撃ってくる。
糸弾
糸の塊を銃弾の様に撃ち出す攻撃。
ただ当ててダメージを与えるだけではなく、当たると糸が巻き付き身動きが取れなくなる事がある。
ボシュッ!
撃ち出された糸弾を避けるクロス。
そのビックスパイダーの攻撃を無視をして歩を進めるクロスに、ビックスパイダーは連続で糸弾を撃つ。
ボシュッ!
ボシュッ!
ボシュッ!
ボシュッ!
ボシュッ!
それを避けずに、某アニメの泥棒一味の子孫、○代目 ○川五○門の様に刀で斬ったり、弾いたりしながらビックスパイダーに近づいて行く。
ビックスパイダーの敵意が完全にクロスに集中している間に、いつの間にか背後から木の上に登ったアルフレッドが、剣を逆手に両手で持ち真下にいるビックスパイダーの上に飛び降りる。
「おりゃぁぁ!」
その落下の勢いのまま、手に持った剣でビックスパイダーの胴体を貫き、昆虫標本みたく地面に縫い付ける。
ドシュッ!!
「キシャァァァ!」
地面に縫い付けられたビックスパイダーは暴れるが、剣が抜けずに脱出する事が出来ない。
その隙に近づいたクロスが気合い一閃、刀を振るってビックスパイダーの頭部を斬り落とす。
「ハアッ!」
シュザッ!
頭部を斬り落とされたビックスパイダーは一気にHPが0になり、砕けて光の粒子となってクロスとアルフレッドの体に吸収される。
地面に突き刺さったままの剣を鞘に納めると、戦闘ログを確認してアルフレッドが言った。
「よしっ!一個目ゲット!」
「こっちは無しだ。」
クロスも戦闘ログを見て、少し残念そうに言う。
「次、行くぞ。アッチの方に何か反応がある。」
クロスが策敵を使いながら森の中を進み、ビックスパイダーを探す。
それから二人は、先程と同じ手順でクエストクリアに必要な数の蜘蛛の糸を得るため、ビックスパイダーを狩っていくのだった。
名前 クロス 性別 男 職業 侍 Lv1→8
種族 鬼人族 格 酒呑童子
冒険者ランク F
スキル 刀術Lv1→4(New) 格闘技Lv1→8 投擲Lv1→4(New) 気配察知Lv1→10 気配遮断Lv1→4 魔力操作Lv1 索敵Lv1→10 威圧Lv1→8 暗視Lv1 裁縫Lv6 料理Lv1