その頃、アルフレッドは
クロスとブルースが木の虚に立て込もり、脱出の方法を考えている頃、先に街へ死に戻ったアルフレッドは2人に言った様に冒険者支援センターで待つことにした。
目的の場所に着くと、フードコートに行って料理を注文すると空いている席に座る。
暫くしてウェイターが料理を持ってくる。
(この豚栗鼠の串焼きは、βの時、食べた中で一番旨かったなぁ。)
皿の上に乗った料理を見て、しみじみと思い出す。
「って事で、いただきます。」
早速、串焼きを手に取り口へ運ぶ。
カツン!
装備していた魔○騎士のデザインをしたフェイスガードに当たる。
「おおう、コレは口は開かないのか。」
そういう事なので、兜とフェイスガードをはずす。
そして、その外した装備を見ると、顔に浴びた殺人蟻の分泌液でボロボロになっているのに気づく。
「うわぁ~、酷いな。」
自分の着ている鎧も改めて見ると、修理が必要なくらい傷んでいた。
(帰って来たらクロスに修理を頼もう。)
そう考えていたアルフレッドだったが、料理が冷める事に気付く。
「じゃ、改めて、いただきます。」
串焼きに手を伸ばしたところで声をかけられる。
「あら?そこにいるのはアルフレッドじゃないか?」
「あ~本当ですぅ。アルフレッドさんですぅ。」
アルフレッドが声のする方へ顔を向けると、2人組の女性プレイヤーがいた。
その2人は、アルフレッドのいるテーブルまでやって来ると、
「ん?その串焼き、豚栗鼠だね。いただきます。」
そう言ってアルフレッドの手から串焼きを取り上げると、食べ始める。
「モグモグ!やっぱり豚栗鼠の肉は美味しいな~。」
「ああっ!」
「セリ姉だけズルいですぅ。私も一つ貰うですぅ。」
皿に残っていたもう一本の串焼きを掴んで食べ始めた。
「おい!勝手に食うな!・・・ってか誰?」
「モグモグ、ゴックン!はぁぁぁ!?覚えてないの?βの時にパーティー組んでいたのに!」
「忘れるなんて酷いですぅ!ハムッ、モグモグ。」
文句を言いながらも串焼きを食べ続ける女性2人。
(え~?こんな2人とパーティー組んでたっけ?)
そう思いながらアルフレッドは、βの時にパーティーを組んいでたと言われて目の前の女性二人をジロジロと観察する。
最初に串焼きを盗った姉と呼ばれた女性の方は、切れ長の目に少しキツそうな雰囲気を纏った褐色の肌をした女性で、ウェーブのかかったボブヘアーは、シルバーと水色を混ぜた綺麗な色をしている。
身長も女性にしては高い方でスタイルも良く、モデルと言われても納得してしまう容姿をしている。
そんな容姿より特徴的なのがこめかみから生えた小さな鹿の様な角と、両頬から首まで水色の鱗に覆われていたのである。
これらの特徴は竜人族に現れ、その事から考えると、彼女の種族は竜人族である。
一方、妹の方はというと、タレ目でホンワカとした雰囲気をさせた獣人の女性で、薄い紫色をしたサラサラのストレートヘアーを腰の辺りまで伸ばした長い髪で、身長は姉より頭一つ小さくスタイルは姉と同じでスラリとしていて、。
ただ、頭の上には他の獣人よりも大きい耳があり、背中からは悪魔のような羽が生えていた。
因みに、獣人族は獣人・魚人・鳥人とは別に、3パターンの容姿から選ぶことが出来る。
①ヒューマンタイプ:自分の容姿に選択した動物の特徴が現れるタイプ。(獣人は耳と尻尾が生える。・鳥人は羽が生える。・魚人は水掻きとエラがつく。)
②ハーフタイプ:より動物に近い姿になったタイプ。(獣人は耳と尻尾の他に鼻と口が動物的に変化する。・鳥人は羽の他に嘴が生える。・魚人は水掻きとエラの他に体の一部が鱗に覆われる。)
③アニマルタイプ:顔が完全に動物に変わったタイプ(獣人は顔が動物に変わる他に尻尾が生え、腹を除き全身が体毛に覆われる※手足を肉球にするかどうか選択可。・鳥人は顔が鳥に変わる他に全身が羽毛に覆われる※足を鳥足にするかどうか選択可。・魚人は水掻きとエラに加えて全身が鱗で覆われヒレが生える※顔を魚に変えるかどうか選択可。)
補足:獣人は手足を肉球に変えると武器と靴が装備不可。但し、ナックル系の武器は装備可。
鳥人は足を鳥足に変えると靴が装備不可。
魚人は水掻きがある為、靴が装備不可。アニマルタイプになると頭から背中にかけてヒレが生える為、上半身の装備が不可+全身が鱗で覆われる為、体毛が無くなる(髪の毛が生えない)。
※ミックはアニマルタイプの獣人、妹はヒューマンタイプの獣人である。
閑話休題
そんな対象的な印象をもつ姉妹であるが、一つだけ良く似た部分があった。
例えるなら、姉妹のソレは、たわわに実ったメロンが二個づつ、計四個のメロンがそこにはあった。
メロン祭りである。
「な、なに?ジロジロと見て。キモい!」
「セクハラで通報するですぅ。」
アルフレッドのある特定の部位を見つめる視線に気付いたのか、両手で隠すようにしながらメニューを操作しようとする。
「わっ、ちょっ、ちょっと待て!ジロジロ見たのは謝るから。」
アルフレッドは慌てて止める。
「なあ、もしかして、セリーナと、バーバラなのか?」
「正解ですぅ!」
「ようやく分かったか!本当、バカでアホなクズ男だな!」
「ああ、その口の悪さは、セリーナに間違いないな。」
アルフレッドはボソッと呟く。
「ん?何か言った?」
「い、いや、何も言ってないぞ。それより、2人とも種族変えたのか!βの時は人族だったから気付かなかったぞ!何で種族変えたんだ?」
「それは、アタイのパーティーでの役割は覚えてるだろ?」
「ああ、そのくらい覚えてるさ。壁役だったな!」
「ええ、その通り!それで、壁役に適した種族を選んだのさ!硬さだと鬼人族・竜人族・巨人族だが、中でも巨人族が一番だね。でも魔法に弱いので余り向いてない!鬼人族は逆に物理と魔法に強い反面、味方の支援や回復の魔法も効かなくなるので除外!で、竜人族は幸運と器用が低いのでレアドロップ率とクリティカル率が低い事と、生産活動が出来ないだけ!レアドロップが得られなくなるのは痛いが、ドロップする確率が低くなるだけだし、生産は元々する気がないので関係無し!それに、アタイの役目は仲間を守る事だから、攻撃のクリティカルは考えてないのさ!」
「なるほどな!そういう理由か。で、バーバラは?」
「私はですねぇ、なんでも良かったんで~ランダム選択にしたんですぅ!そうしたら、レア種族が当たったんですぅ!」
「えっ!マジで!」
「はい!なんとですねぇ幻獣種のファントムバットっていう蝙蝠の獣人ですぅ♪」
そう言って、ボリュームのある胸を張る。
その姿を見た周囲から「おおう!」と、どよめきが上がり、何名か前屈みになっていたりする。
実際には、そんな所まで作り込まれてはいないが、本人達はノリでやってたりする。
「それは運が良かったな!にしても、まだ初期装備か。今、始めたのか?」
「いや、昼頃から始めたよ。」
アルフレッドは2人がまだ初期装備なのを見て尋ねたのだが、違う答えが返ってくる。
正規版から始めたプレイヤーなら初期装備でもまだ分かるが、2人はβテスターである。
βテスターの特典でスタート時の所持金が正規版からのプレイヤーの3倍の所持金になっているので、一通りの武器・防具を買い揃え、スキルを買う余裕がある。
これが正規版からのプレイヤーならスキルを3~6個買うか、ちょっと良い武器に買い替えるだけで資金が足りなくなる。
そんなアルフレッドの疑問を理解したセリーナは答える。
「実は開始早々、三つ子ちゃん達に捕まって、レベリングに付き合っていたのさ。で、今からスキルを覚え(買い)に来たところさ!それからこの後に、盾とバトルアックスを買いに行くよ。鎧の方は暫くはこのままだ。フルプレートアーマーを買おうと思って、少し貯める事にした。」
「私もだいたい同じですぅ。」
「そうだったのか。あの三つ子ちゃん達もここに来てるのか?」
アルフレッドは話を聞いて納得するが、ここに三つ子達がいない事に疑問を抱く。
「あの子達はですねぇ、ログアウトしたですぅ!部活の朝練が~とか言ってたですぅ。」
「ああ、そうか。確かまだ中学生だったっけ?」
「いえ、今年の四月で高校生になったはずですぅ。」
「そうだ!三つ子ちゃん達からアルフレッドに伝言があったんだった。」
アルフレッドがバーバラと話していると突然、セリーナが声を上げて遮る。
「うぉっ!?ビックリしたー!急に大声出すなよ!で、伝言ってなんだよ?」
「あっ、すまん。それで、伝言って言うのは、『今回は生産をメインにするから素材の調達ヨロシクね~!それからギルド作ったら入れてね!あと、レベリングするときは手伝ってね!』だそうだぞ。」
「あの子らは俺の事を何だと思ってるんだ?」
それを聞いてガックリと肩を落とすアルフレッド。
「仕方無いと思うですぅ。執拗に絡んでいたプレイヤーから助けてあげて、受験勉強の息抜きでゲームしていた三つ子ちゃん達のレベリングを手伝ってあげたりして面倒見ていたんだから、馴かれて当然だと思うですぅ!あえて言うなら、面倒見の良いお兄さん?」
「もしくはロリコンだな!」
「セリーナ、それは無いから!」
アルフレッドはロリコン疑惑をかけられ、慌てて否定する。
そんな会話をしている合間にもアルフレッドの串焼きを完食したバーバラとセリーナは、アルフレッドとフレンド登録をするとスキル習得の為、地下へ降りて行く。
2人を見送ったアルフレッドは、空になった皿を返却口に持って行った後、何となく建物の外へ出る。
相変わらず街は騒々しいが、何故か沢山のプレイヤーが同じ方向へ走って行くのに気付く。
気になったので、走っているプレイヤー達に大声で話し掛ける。
「おい!一体、どうしたんだ?何か慌てているようだが?」
すると、親切なプレイヤーの一人が足を止め、南の空を指差しながら説明をしてくれる。
「アレだよ、アレ!誰かがイベントかもしれないって言ってたから確かめに行くんだよ!じゃ、急ぐから!」
「おう、サンキューな!」
それだけを言い残し去っていくプレイヤーの背にお礼を言う。
そして、その走り去った方角の空を見ると、竜巻が見えていた。
と、その直後に竜巻が突如、炎に包まれたと思ったら、火災旋風に変わっていた。
(な、何だぁ?何が起きてるんだ?)
アルフレッドは事態を確認するべく南門へ向かう。
そして、向かっている途中で気付く。
(あれ?あの方向って・・・さっきまで俺がいた森の辺りだよな?まさか、あの2人が関係してるのか?)
そう思っていると、火災旋風が今度は隕石を飛ばしはじめる。
幸いな事に、隕石は街の方まで届きはしなかったので、飛んで来る事は無かった。
ただ、隕石が地面にぶつかる音や、その衝撃が地響きとなって街の方まで伝わって来ると、今まで気付いて無かった人達まで気付き初め、街全体が騒がしくなってくる。
混雑する中を走って南門に辿り着くと、そこには沢山の野次馬、もといプレイヤー達、そして住人や警備隊のNPC達が集まっていた。
人混みを掻き分けて先頭へ移動し南門から外へ出ようとするが、南門を警備していた警備兵に止められる。
「危険ですので出ないで下さい!」
すると、一人のプレイヤーが止めた警備兵にくってかかる。
「うるさい!NPCのくせに邪魔するな!イベントを逃しちまうだろーが!」
そう言われた警備兵も何か言い返し、両者は言い争いを始める。
暫く言い争った後、プレイヤーが剣に手を掛けたところで警備兵の隊長が現れ、通す事になった。
「話は分かりました。ですが我々はこの街に被害が及ばぬ様に、万が一に備え封鎖しているのです。しかしそこまで言われるのでしたら、通しますが、街に迷惑をかけない事と怪我をしても自己責任という事を約束してもらいましょう!」
「んだよ!そんな事言われなくたって分かってるよ!じゃ、通させてもらうぜ!おい、行こうぜ!」
そのプレイヤーはパーティーを組んでいる仲間に声を掛けると、不愉快な彼とその仲間達は森を目指して走って行った。
不愉快な彼とその仲間達がいなくなると隊長は、門の所に集まった人達を解散させる。
森へ行きたい冒険者は何かあっても自己責任という事で通し、住人達は日常へと戻っていった。
アルフレッドはというと、クロスとブルースが何か関係しているのかもしれないと思ったので、森へ行く事にした。
アルフレッドはちょうど門をくぐったところで、森から2人のプレイヤーが走って出てくるのが遠目に見えた。
(二人とも無事だったか。しかし、竜巻も隕石も降って無いのに何を慌ててるんだ?)
そう思っていると、一人が足を滑らせて倒れる。
その直後、森から白いシミが滲み出て来るかの様に広がって、倒れたプレイヤーへ迫って来る。
アルフレッドは本能的にアレがヤバい代物だという事を悟る。
(っ!アレが街まで来たら街が壊滅するぞ!)
そんなアルフレッドの心配も無用に終わる。
白いシミは倒れたプレイヤーの手前で消え失せたのだった。
倒れたプレイヤーが立ち上がり、こちらに歩いて来るのを見ると、アルフレッドはパーティーチャットで門の所に来ている事を伝える。
その後、2人と合流したアルフレッドは、周りに話を聞かれないようにパーティーチャットを利用して何があったかを聞いた。
歩きながら話を聞いていると冒険者支援センターに着いたので、クエスト完了の報告をする。
その後、クロスと明日の約束をすると、クロスはログアウトするため冒険者支援センターを去っていった。
「あら?アルフレッド。アンタまだ居たの?」
先程まで地下施設でスキルを取得していたバーバラとセリーナが後ろから来ていた。
「あっ、バーバラとセリーナ姉さん!」
「ブルース君!会いたかったですぅ!」
バーバラがブルースに飛びついてくる。
それをブルースがガシッと受け止め、抱擁しあう2人。
周囲の目があるなか、2人だけのピンク色の空間を形成し、見ている方が砂糖を吐きそうになる位、イチャつきはじめる。
「えっ、ブ、ブルース知り合いなのか?」
何故か声が震えているアルフレッド。
「はい。バーバラからこのゲームに誘われたんですよ。」
「ええっ!ていう事はだよ、リアルでも知り合いなのか?」
ブルースは少し照れくさそうに答える。
「はい。バーバラと付き合ってます!」
それを聞いたアルフレッドは、口から魂が抜けた様な表情になり、「なぜだ?同じ血を引いているのに・・・」とか「兄より優れた(モテる)弟など認めぬ!」等と、ぶつぶつと呟いている。
「それより、今日はゴメンですぅ!私から誘ったのに、一緒に出来なくて。」
「そんなの気にしなくていいよ!時間はいくらでもあるんだから。それに、βの時の知り合いなんでしょ?繋がりは大事にしないとね。今度その人達、紹介してよ。」
「うん!」
そう言ってより一層イチャつきはじめる2人。
「ハイハイ、アンタらいい加減離れな!周りからスッゴい見られてるよ。」
2人の間に入って引き剥がすセリーナのこめかみには青筋が浮かんでいるのは気のせいだろう。
「彼氏と別れたばっかりのアタイに見せつけるなんて、バーバラにはOSIOKIが必要みたいだね!」
「それって、八つ当たりなんじゃ・・・」
「理不尽ですぅ!」
「うるさいっ!黙ってアタイに殴られな!」
拳をパキパキと鳴らしながらバーバラに歩み寄るセリーナを見たブルースは、バーバラが殴られる前に話題の転換を図る。
「あっ、あの、バーバラとセリーナ姉さんは明日はログインしますか?もしよかったら、僕と、アル兄さんと先輩の3人とパーティー組んでモンスターを狩りに行きませんか?」
「あっそれ良いですぅ!セリ姉もそう思わないですか?」
ブルースの後ろに隠れたバーバラが、ヒョコッと顔を出してセリーナに賛同を求める。
「ん?そうだな・・・いいぞ!明日は昼からインするからそれでも良いならな!っと、捕まえた!」
セリーナは一瞬にして回り込むとバーバラを捕まえて出口へ引きずっていく。
「あ~ん、ブルースく~ん!」
「じゃ、インしたら連絡するから。」
セリーナはそう言うと二人にフレンドの申請を送り、受諾を確認もせずにバーバラを引きずって出ていった。
そんな二人を見送ったブルースとアルフレッドもログアウトする為、冒険者支援センターを出て宿屋に向かって行ったのだった。




