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アルフレッドの作戦

 ガッガッガッガッ


 ガリガリガリガリ


 木の虚の中には、外でナイトクロウが岩壁に体当たりしたり、嘴や爪で岩壁を削る音が響く。

 時々ブルースが魔法をかけ直しながら、クロスとブルースが矢を作り終えたところでアルフレッドがポンと手を叩く。


 「良いこと思い付いた!ちょっと聞いてくれるか。」

 「どうせ、ろくでもない事だろうが一応、言ってみろ。」

 「そうですね。ろくでもなさそうですが、一応、聞きましょう。」

 「2人とも酷くね?」


 クロスとブルースの言い様にショックを受けつつアルフレッドは、思い付いた作戦を説明するため、アイテムボックスから瓶に詰まったあるアイテムを出す。


 「それは?」

 「キラーアンツからドロップした【殺人蟻の分泌液】だ。」

 「ああ、あの子馬位の大きさの蟻の事ですか。でも、そのアイテムがどうかしたんですか?」

 「まあ、ちょっと見てろ。」


 アルフレッドはそう言うと、瓶の蓋を開けると中身を落ちていた木の枝に一滴垂らす。


 ジュッ!


 「うおっ!これは強酸か!?」


 驚いたクロスが【殺人蟻の分泌液】を垂らした木の枝を見てみると、溶けて無くなっていた。

 さらに見ていると、垂らしたはずの分泌液があっという間に土に吸収されていく。


 「この分泌液はな石とか土以外のモノを溶かすんだ。しかも土に吸収されて無くなるから土とか石の壁で防ぐ事が出来る。」


 「ふーん、それでどうしようというんです?」

 「こいつをナイトクロウにぶっかける。」

 「「は?」」

 「つまりだな、俺が木の上に登ってこの瓶をナイトクロウに向かって投げるから、クロスがクレー射撃みたいに矢を射って瓶を破壊す。で、ブルースは落ちたナイトクロウに止めを刺してくれ。これぞ名付けて、『アシッドレイン作戦』だ!」

 「何が『アシッドレイン作戦』だ!だよ。でも、ネーミングセンスはともかく、・・・良いんじゃないか?』

 『そうですね。作戦名はともかく、割りとまとも?だと思いますよ?』


 自信満々で言ったにもかかわらず酷い言われようにいじけてのの字を書くアルフレッドだった。


 「ほら、そんなところでいじけてないで行きますよ。」


 スッと立ち上がったブルースが魔法を準備しながらアルフレッドに言う。


 「え、何してんの?」


 アルフレッドの疑問にブルースの横で矢をつがえて準備していたクロスが答える。


 「ブルースが魔法で壁を爆破して俺らが鳥どもを引き付けるからその隙に木に上れよ。上ったら連絡しろ。」

 「いやいや、俺の計画じゃ、こっそり行くつもりだったんだけど?」

 「あれだけの数のモンスター相手に見つからずに上るのは無理ですよ。だから、派手にぶちかまして陽動しますからその隙に上って下さい。じゃ、いきますよ。3・2・1、エクスプロージョン!」


 ブルースはカウントダウンをすると、準備していた魔法を岩壁の放つ。

 発射されたのは火魔法のエクスプロージョン。

 それを岩壁に取り付いているナイトクロウごと爆破する。

 派手な爆発と土煙を上げて、何匹かのナイトクロウを巻き込んで岩壁が吹っ飛ぶ。


 「あーもう。なんか俺の考えてたのと違う!」


 そんな諦めに近い悲鳴を挙げながら、アルフレッドは気配を消して土煙に紛れて外に出る。


 「いってらっしゃーい!」

 「ガンバれよー。」


 そんな無責任な応援を送りながら、2人は虚の入り口に立つ。


 「さて、派手にやるか。」


 クロスはそう言うと、武技アーツを使い矢を射る。


 「二連弓ニレンキュウ!」


 一度に二本の矢を放つ武技アーツで、上空から降下して来るナイトクロウを射落とす。


 「おお、それが弓の武技アーツですか。僕も負けてられませんね。クロス先輩、ちょっとデカイのかましますんで援護お願いします。」


 ブルースはそう言うと、詠唱を始める。

 クロスは了承の意を示すかのように、無言でブルースを庇う立ち位置へ着く。


 「三連弓サンレンキュウ!」


 一度に三本の矢を放つ武技アーツでナイトクロウを射落とし、


 「蛇弓ダッキュウ!」


 軌道を曲げる事が出来る武技アーツで横から回り込もうとするナイトクロウを仕留め、


 「突弓トッキュウ!」


 力を貯めれば貯めるほど貫通力が増す矢を放つ武技アーツを今は僅かな貯めで迫り来るナイトクロウと、その背後にいたナイトクロウを穿つ。

 次々と矢を射ながら、ブルースの様子を伺い詠唱が終了したタイミングで横に退くと、ブルースが笏を持った手を掲げて魔法を放つ。


 「サンダーレイン!」


 無数の雷の雨が降り、ナイトクロウ達を地面に叩きつける。

 その際に、上の方からぎゃあああという悲鳴が聞こえた様だが気のせいだろう。


 「今ので魔力が尽きました。少し回復させます。」


 ハアハアと荒い息をさせたブルースは、虚の中に下がると瞑想をして魔力を回復させる。

 クロスはブルースが瞑想から覚めるまで1人でナイトクロウの相手をしなければならなくなり、手数が足りずに接近を許したり反撃をくらったが、そういう時は殴ったりしてはたき落とす。

 それでもブルースに届かせなかったのは称賛に値するだろう。


 「すいません。手伝います。」


 瞑想から覚めたブルースが、死角からクロスに接近していたナイトクロウに魔法を放って退けると、クロスの側までやって来る。


 「サンキュー。助かる。」

 「いえいえ。こちらこそ、回復するまで守っていただいてありがとうございます。」


 そこへアルフレッドからパーティーチャットのコールが入る。


 『上に着いたぞ。ってかさっきの雷、ブルースだろ!俺に当たったぞ!』

 『すみませーん。でも、パーティー組んでるんですから当たってもダメージ入らないじゃないですか。』

 『アホか!ダメージは無くても、衝撃とか痛みはあるんだよ!』


 そう、パーティーを組んでいるメンバー同士なら間違って攻撃が当たってもダメージ入らないのだが、受けた痛みや衝撃までは無くならないのだ。


 「「カーカーカー!」」

 『ヤベッ!見つかる前に始めるぞ!』


 ナイトクロウが周囲を警戒し始めたのを見てアルフレッドは焦り、急いで【殺人蟻の分泌液】が入った瓶を取り出してナイトクロウ達の上に投げる。


 『いくぞクロス!それー!』

 『あっ!ちょっ、ま。ッチ、いきなり始めるなつーの!』


 アルフレッドが瓶を投げ始めたので、クロスは慌てて弓を構えると矢を射る。

 暗闇の中、慌てて矢を射ったのにも関わらず、瓶に見事命中したのは暗視を含めたその他のスキルのお陰だろう。

 矢に射られた瓶はパリンと割れるとその中身をナイトクロウ達の上にぶちまける。


 「「ガァーーー!」」


 【殺人蟻の分泌液】を浴びたナイトクロウは、ジュゥゥっと羽を溶かされ地面に墜落する。


 『次いくぞ!』


 そう言うとアルフレッドは、再び【殺人蟻の分泌液】を投げる。


 『クソッ、少しは人の話し聞けよな!』


 クロスは文句を言いつつも矢を射って瓶を破壊する。

 またしても、その割れた瓶の中身を浴びたナイトクロウは地面に落下する。

 ブルースは地面に落ちたナイトクロウに魔法で止めを刺したり、クロスとブルースの方に落ちてくる分泌液を岩壁で防いでいた。

 そしてアルフレッドが三本目の瓶を取り出したとき、周囲を警戒していたナイトクロウの様子が変わる。


 「「カーーーー!」」


 アルフレッドが潜んでいる場所へ突撃したのだ。


 「ヤッベ!見つかった!」


 動揺したアルフレッドは急いで投げようと立ち上がったが、そこは足場の狭い枝の上、急に立ち上がった際に足を滑らし背中から地面に向けて落ちていく。

 手に持っていた瓶も手を離れ空中に投げ出される。


 「うわぁーーー!」


 ドスン!!


 「カハッ!」


 地面に思いっきり背中をぶつけ息が詰まるアルフレッド。

 高所からの落下のダメージで体力が削られる。

 そこへ【殺人蟻の分泌液】が詰まった瓶がアルフレッドの顔めがけて落ちてきた。


 ガシャン!


 ジュゥゥゥ!


 「ぎゃぁぁぁぁ!目がぁぁ!顔がぁぁ!」


 強酸である【殺人蟻の分泌液】を顔からモロに被ってしまったアルフレッドは、顔を焼かれるような痛みに地面をのたうち回りながら絶叫する。

 そこへ追い討ちを掛けるかの様に、ナイトクロウ達がアルフレッドに群がって嘴で突いたり、爪で引っ掻いたりする。


 「「「「「カーーーカーーーカーーー!!」」」」」

 「うぎゃぁぁぁぁ!」


 その様子を呆然と見ていたクロスとブルースだったが、ハッと気を取り直しアルフレッドに群がるナイトクロウを攻撃する。

 

 「突弓トッキュウ突弓トッキュウ突弓トッキュウ♪」


 武技アーツを使い、放たれた矢はナイトクロウを貫通しアルフレッドに突き刺さる。


 「ぎゃぁぁぁぁ!イテッ!イテッ!刺さってる!刺さってる!」


 わざとである。


 「ファイアーボール♪」


 撃ち出された魔法はナイトクロウに当たると、アルフレッドを巻き込んで燃える。


 「ぎゃぁぁぁぁ!熱っ!燃えるぅぅぅ!」


 こちらもわざとである。

 どうやらクロスとブルースの2人は、この様な事態を引き起こしたアルフレッドに対して罰を与えたかったようだ。

 そうしてる間にナイトクロウに襲われ続けたアルフレッドは体力が0になると、その場に人魂を残して消える。

 ナイトクロウ達はアルフレッドを倒すと、次はお前らだ!と言わんばかりにナイトクロウ達が2人に襲い掛かるが、アルフレッドが殺られた事で危機を感じていたのか、急いで木の虚に戻るとブルースがが岩壁で入り口を塞いだ。


 『あー酷い目にあった!トラウマになりそう。つーか、俺を巻き込んで攻撃するなよ!』

 『あぁん?誰のせいでこんな目にあってると思ってるんだ?』

 『そうですよ。今回はこの位で勘弁しておきますが、次は許しませんよ。』


 クロスとブルースが怒気を含めた声で言うと、アルフレッドは恐縮して謝ってくる。


 『マジ、さーせんでした!』

 『おう、今回は不可抗力とはいえ気を付けろよ。それで、お前はこの後どうするんだ?先にログアウトするか?』

 『いや、クエストの報告しなきゃいけないから冒険者支援センターで待ってるよ。パーティーで受けた場合は全員揃ってないと達成報告が出来ないからな。』

 『そっか、分かった。』

 『では、なるべく早く戻りますんで。』

 『ああ、死に戻りしないよう気を付けろよ。じゃあな!』


 そう言ってパーティーチャットを切った。

 アルフレッドがリタイアした事で戦力が減った2人はこれからどうするか相談を始めるのだった。

名前 クロス  性別 男  職業 侍  Lv11→14

    種族 鬼人族  格 酒呑童子

    冒険者ランク F


 スキル 刀術Lv4 弓術Lv4→8 格闘技Lv8 投擲Lv4 気配察知Lv13→15 気配遮断Lv6 魔力感知Lv2→6 魔力操作Lv1 索敵Lv13→15 威圧Lv9→10 暗視Lv5→8 魔眼Lv2→6 天空の目Lv5→8 裁縫Lv9 木工Lv1(New)→4 料理Lv1


 EXスキル 鑑定Lv―

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