生産は楽しい
ログアウト後、食事をして家事と入浴を済ませると、時刻は20時を回っていた。
明日は日曜日という事で冷蔵庫には晩酌の為のお酒とツマミが入っていたが、アルコール摂取してのVRワールドへのダイブは接続不良や何らかの障害が出るので厳禁である為、飲むわけにもいかず暇をもて余していた。
そこで集合時間にはまだ早かったが、ログインする事にしたのだった。
*****
マチルダ嫗に与えられた部屋のベッドで目覚める。
(何をしようか?)
そう思いながら部屋を出てリビングに行くとマチルダ嫗がいた。
「あら、クロスちゃん。動物の毛皮は捕ってきてくれた?」
クロスはその言葉で思い出す。
(そういえば、クエスト受けてたんだった。)
「あっ、はい。捕って来ましたよ。」
そう言ってアイテムボックスから狼の毛皮を取り出して渡す。
【クエスト 動物の皮を手に入れろ をクリアしました。】
「おや、こんなに沢山!それじゃあ、防具の作り方を教えようかね。」
「お願いします!」
それからクロスは、マチルダ嫗の指導を受けながら防具を作成していく。
途中、何度か失敗はしたものの店売りの防具より性能の良いものが出来上がる。
出来上がった防具を、早速装備する。
【装備 防具】
頭 無し
体 狼の胸当て(赤)
腕 狼の籠手(赤)
腰 無し
脚 狼の脚絆(赤)
出来上がった防具は全て、裁縫スキルの 技能染色 で赤く染めてあり、更に 技能デザイン でフレア模様まで入れてある。
因みに、頭の装備である狼の革兜も作成してあったのだが、角が引っ掛かり被れなかった為に装備するのを断念した次第である。
「うん、なかなか良いじゃないか。それじゃあ、私は戻るから後は好きに使っていいよ。」
マチルダ嫗が出ていって一人になった工房でクロスは、まず時間を確認すると、集合までに現実の時間で一時間ほどあったが、ゲームの中では時間の流れが加速されている為、ゲームの中では数時間ほど余裕がある。
(下駄からブーツに変えるか。)
クロスはまず、ブーツを作る。
【装備 服】
上半身 丈夫な長着(白)
下半身 丈夫な袴(黒)
靴 狼のブーツ(赤)
装飾1 丈夫な改造袖無し羽織(黒)
装飾2 無し
装飾3 無し
次にクロスは、ログアウトする前に買った大量の布地と売らずに持っていた狼の毛皮を使って裁縫スキルのレベル上げをすることにした。
まずは普通にシャツとズボンを作っていたが、段々と暴走し始める。
(普通に作っても面白くないな!)
手始めに某ブランドのデザインに似た服を作り、その後は遠慮が無くなったのか、学生服・メイド服・警官の制服・Zな戦士が着ている胴着・戦隊ヒーローっポイ全身タイツとマスク各5色等々。
買い込んだ布地が無くなると、次は狼の毛皮を使って革鎧を作っていく。
これも最初は狼の革鎧一式を作っていたのだが、レアドロップの狼の頭を見つけるとアイデアが浮かびすぐに暴走し出す。
狼の頭をフェイスガードと兜に使い金色に染めた革鎧は魔○騎士に見える革鎧一式、それからロ○の紋章を入れた革鎧一式などを素材が無くなるまで作り上げていく。
「ふぅ、結構スキルレベルあがったな。」
クロスが出来上がった作品を前に満足していると、フレンドチャットのコールが入る。
『ちょっとクロス先輩!待ち合わせの時間過ぎてますよ!何してるんですか早く来て下さい!』
『ワリぃ。すぐ行く。』
クロスはそう返事すると、作った服や革鎧をアイテムボックスに納めて急いで中央広場に向かうのだった。
*****
「すまん。遅くなった!」
「遅い!何やってたんだよクロス。」
駆けてきたクロスを開口一番に非難するアルフレッド。
「何言ってるんですか。アル兄さんも今来たばかりじゃないですか!」
が、アルフレッドも同類の様である。
「おい!」
「いやでも、クロスよりは早かったし。」
「何をバカな事を言ってるんですか。それでクロス先輩はどうして遅れたのですか?」
「いやぁ、晩酌出来なくて暇だったから早めにログインして生産スキルのレベル上げてたら、夢中になりすぎて時間忘れてたわ!」
「はぁ、ホント何やってるんですか。それにしても、生産スキルなんて持ってたんですか。何のスキルなんですか?」
アルフレッドのつまらない言い訳と、クロスの遅くなった理由に呆れてため息をつくブルース。
「裁縫だ。」
「へぇ~、裁縫ですか。もしかしてクロス先輩の服って自分で作ったのですか?」
「ああ、そうだ。因みにこの防具とアルの服もだな。」
「いいなぁ。僕も欲しいですね。」
「だったら、作ったやつがあるから気に入ったのが有ったら売ってやるよ。」
「えっ!?貰えないんですか?」
「当たり前だ!スキルのレベル上げの為に作ったといっても材利用費かかってるんだ当然だろ。」
「分かりました。じゃあ、売ってください。」
渋々ながら納得して頷くブルース。
「売買するんだったら商業協会に登録しないと駄目だぞ。」
アルフレッドがそう注意する。
「そうなのか?じゃあ、登録してくるから、ちょっと待ってろ。」
「あっ、ちょっとまーーー」
それを聞いたクロスは、アルフレッドが止めるのも聞かずに商業協会に走って行く。
その10分後、登録と説明を受けて戻って来るクロス。
「すまん、待たせたな。じゃ、コレ見てくれ。」
クロスはブルースに作った服の商品リストを送る。
「うわぁ、沢山作ったんですね。選ぶのに迷いそうです。」
ブルースがそう呟く隣でアルフレッドが何かを諦めた様な顔をしている。
「まったく、狩りに行くんじゃないのかよ。」
「少し位良いじゃないですか。僕は防具が装備出来ないんですから、少しでも防御力の高い服が欲しいんですよ。」
「まぁ、魔法使いだから当たり前だな。ローブとかは防具じゃなくて服のカテゴリーになるしな。」
「そう言う訳で、少し時間下さい。」
そう言ってブルースは服を選び始める。
「裁縫スキルって革鎧も作れたんだな。知らなかった。」
アルフレッドはクロスの革鎧を見てそんな事を言う。
「知らなかったのかよ!」
「うん、まぁ、興味無かったからな。金属鎧しか使ってなかったし。だから、鍛治スキル持ってる職人さんにしかお世話になってないから、そっちの方は知らないんだ。」
「そうか、じゃあ選び終わるまで少し待つか。」
「クロス、せっかくだからどんな防具作ったか見せてくれ。」
アルフレッドはクロスの作った防具に興味があったので、ブルースが選び終わるまでの暇潰しに防具を見せてもらう。
「ん、ほらよ。」
クロスはアルフレッドに防具の商品リストを送る。
それを暫く見ていたアルフレッドだったが、クロスの作った革鎧を見て噴き出す。
「ブッ!!なんだコレは!魔○騎士とかネタ装備じゃないか。しかも、今俺が着てる鎧より防御力が高いし!」
「欲しいなら売ってやるよ。」
「・・・少し考えさせてくれ。」
アルフレッドは少し迷って答えた。
「クロス先輩!コレ欲しいんですけど、お金が足りないんで安くしてもらえませんか?」
「う~ん、知り合い価格で安くしてあげたいけど無理だ。そのリスト一応、原価のままだから。」
「えっ、どういう事ですか?」
クロスは、商業協会で受けた説明をする。
曰く、製作物はゲームのシステムによって評価され売値価格が決められる。
曰く、売値価格はあくまで最低価格で、プレイヤーの判断によって技術料として売値を上げることが出来る。
「と、まぁそう言う訳だ。」
「へぇ~、そうなんですか。初めて知りました。」
「で、欲しいなら、物々交換もOKだ。登録の時に鑑定のスキルを貰ったから、素材の買取りなんかも出来るようになったぞ。」
「物々交換ですか。だったらコレなんかどうですか?」
そう言ってブルースが出したのは、弓と矢×99のセットだった。
さっそく鑑定を使って弓矢の価値を調べる。
「うん?2100Eか。それで、どの服が欲しいんだ?」
「この服なんですけど。」
ブルースが指し示した服を見てクロスは『え、マジでそれ買うの』といった表情でブルースを見る。
「じゃ、取り引き成立だな。」
服と弓矢を交換するクロスとブルース。
購入した服を早速着るブルースを見て、クロスはなぜその服を選んだのか尋ねる。
「せっかくだから、普段着れないような服を着てみたかったんですよ。それに、魔法使いポイじゃないですか!」
「いや、あえて言うなら陰陽師だろ。」
ブルースが選んだ服とは狩衣だった。
白と紫の着物に烏帽子を被ったブルースは杖を装備していたが、狩衣姿に杖は似合わないと思ってアイテムボックスから木工セットを取り出し、杖を削って加工していく。
その様子を見ていたクロスにアルフレッドが肩をポンポンと叩く。
「よしっ!決めた。クロス、この魔○騎士の鎧を売ってくれ!後、色は変えられるか?」
「色の変更は別料金だがいいか?」
「むう、そこはサービスじゃないのかよ。まぁいいや、それでいいから色は紺色にしてくれ。」
「毎度あり~!少し待ってろ。」
クロスは 技能染色 を使い鎧をオーダーの通りに染めていく。
その作業をしているクロスにアルフレッドが聞いてくる。
「なぁ、クロス。さっき弓を貰っただろ?使ったりしないのか?」
「う~ん、どうすっかな?」
「俺が思うに、お前は魔法が使えないだろ?だから、遠距離攻撃の手段を持っておいた方が良いんじゃないか?」
「そう言われるとそうだな。控え武器としてもちょうど良いかもしれないな。そうなると、スキル取らないといけないか。」
そんな会話をしながらも、手は止めずに作業を続けているクロス。
「出来たぞ。」
「こっちも出来ました。」
クロスが鎧を染め終わったのと同じタイミングでブルースも作業が終わった様である。
そしてブルースが作ったのは、なんと笏だった。
「アル、鎧と色変更で3400Eだ。」
「分かった。ほらよ。」
アルフレッドは現金で支払いを済ませると、2人に提供する。
「狩りに行く場所は森でいいか?」
「任せるよ。」
「僕はお二人に着いていきますよ。」
「じゃ、決まりだな。行く前に冒険者支援センターでクエストを受けていこう。クロスはその時に弓に必要なスキルを覚えたらどうだ?」
「ん、そうだな。でも弓関係のスキルって何を覚えたら良いんだ?」
「え~っとだな、とりあえず歩きながら話そうか。」
3人は冒険者支援センターに向かう。
「それで、弓に必要なスキルだったか。先ずは弓術だろ、それから遠く離れた場所を見るための千里眼か、命中率に補正が掛かる鷹の目だな。後は、使えるかどうか分からんが天空の目っていうのがあるな。」
「「天空の目 (ですか)?」」
「ああ、これはβテストの時に使ってた奴から聞いた話なんだが、自分の知覚できる範囲を第三者目線でいろんな角度で眺められる感じなんだそうだ。それと、対象との距離が分かるようになるらしい。」
「え~っと、よく分からないんですけど?」
「そうだな、なんて言ったらいいか。ジオラマを見ている感覚?って言ったらいいのかな?よく分からんがそう聞いてる。」
アルフレッドのよくわからない説明を聞いてクロスは、ふと思った事を口にする。
「空間認識能力みたいなものか。」
「ああ、言われてみればそうかも。」
「なるほど。そう言われると分かります。流石ですねクロス先輩。アル兄さん、他にはどんなものがあるんですか?」
「他か?視野拡張の獣の目とかだな。」
「目を見たら状態異常を起こす邪眼とか無いんですか?」
「そんなモノは無いな。只、魔眼ってのはあるがな。」
「へ~、魔眼ですか。どんなモノなんですか?」
アルフレッドは少し言葉を濁しながら答える。
「うん、まぁ、あれだ、魔力が目に見える様になるだけだ。」
「魔力が目に見えるですか?」
「そいつの体からオーラ?っていうか輪郭が光って見えるんだ。魔力を消費すると光が減っていくから相手の魔力の残量が分かるって位にしか使えなかった。」
「使えなかった?」
「βテストの時に取得してみたんだ。いまいち使い道のよく分からないスキルだったよ。」
「なんかそういうスキル、他にもありそうですね。」
「ああ、そういう情報を掲示板に纏めてたヤツがいたから覗いてみたら良い。」
そんな話をしている内に冒険者支援センターに着いた3人は、クエストを受け、クロスとブルースはスキルを取得する。
建物の外に出ると、日が暮れはじめていたが3人は森へ狩りに出かけたのだった。
名前 クロス 性別 男 職業 侍 Lv8
種族 鬼人族 格 酒呑童子
冒険者ランク F
スキル 刀術Lv4 格闘技Lv8 投擲Lv4 気配察知Lv10 気配遮断Lv4 魔力操作Lv1 索敵Lv10 威圧Lv8 暗視Lv1 裁縫Lv6→9 料理Lv1
EXスキル 鑑定Lv―(New)




