第六章 教会活動
クラブの外の街灯がぼんやりとした黄色い光を落とし、ウェルズとシャーロットの影を斜めに長く伸ばしていた。背後のクラブの喧騒が遠ざかるにつれ、夜の通りはいっそう静まり返って感じられた。
「あの自動ピアノ……演奏の効果は、四階の神術『安定心神』に匹敵すると言っていい」ウェルズはかすかに眉を寄せ、先ほどの楽曲の奥深さに思いを巡らせた。「あれをクラブに置けるということは、製作者は第一皇子とよほど近い間柄だな。お前、心当たりはあるか?」
シャーロットの瞳の奥で燦然たる金の光が揺らめく。夜の闇に鋭さを秘めた宝石のようだった。見当はついているらしく、自信に満ちた微笑みを浮かべた。
「まず間違いなく、あの保守派の帝国公爵——称号は律動執掌」シャーロットの声は落ち着いていたが、聖階の相手への畏敬と慎重さが滲んでいた。「彼女の道系は律動。本人は音波と震動波を操る聖階の強者。聖階形態を展開すれば、数百メートルに及ぶ巨大な音波場が生まれ、周囲へ定期的に放たれる反響だけで、正気を失いかねないほどの強烈な耳鳴りが起きる。そして最も得意とする聖階魔法『震盪大地』は、都市一つを丸ごと滅ぼす地震を一瞬で引き起こす。それだけじゃない。音波に通じている以上、音楽の造詣も極めて深く、吟遊詩人のように心霊法術も使える。たとえば士気鼓舞、安定心神、それに極めて厄介な群体人間定身まで」
その話を聞くうち、ウェルズの脳裏には、大地が震え、音波が空間を揺さぶる恐ろしい光景が浮かんでくるようだった。立憲派がこの先必ず越えねばならない険しい峰——そう思うと、強い脅威を覚えずにはいられなかった。
訪問を終えて宿に戻ると、たらふく食べたシャーロットは怠惰な大猫のように、人目もはばからず大きく伸びをした。あくびを一つして、今にも柔らかなベッドへ飛び込もうとしている。
「本当に竜族が羨ましいな……腹いっぱい食べて寝るだけで強くなれるんだから」
種族間の越えがたい溝を思ってやれやれとこぼすと、ウェルズは踵を返して自室に戻り、あぐらをかいて退屈な瞑想を始めた。
教廷の援助のおかげで一行の懐は今や潤っており、フリーデにも教会へまとまった寄付をする余裕があった。
夜が更けていく中、フリーデは自分の部屋で静かに過ごしていた。
薄黄色の魔法灯の下、彼女は書き物机の前に端然と座り、特製の描画用のペンを手に、一心に魔法の巻物を書き上げていた。魔導構体である彼女に雑念はない。ペン先は羊皮紙の上を滑らかに走り、複雑で奥深い魔法文字を描き出していく。
この巻物に込めるのは、彼女の五階の権能の核心——空間封鎖だ。極めて広い範囲で、あらゆる転移能力を完全に封じることができる。この先、聖階の強者と戦う際には欠かせない戦略道具となるだろう。彼女自身は聖階ではなく正面から渡り合うことはできないが、この極めて稀な封禁の魔法を、力を貸してくれる帝国の味方に託せば、必ずや戦局を覆すほどの効果を発揮するはずだ。
一夜が明け、彼女がペンを止めた時には、巻物は三割まで仕上がっていた。
白く細い手がそっと描画用のペンを置く。彼女は立ち上がって窓辺へ歩み寄り、重いカーテンを一気に引き開けた。まばゆい朝の光がたちまち流れ込み、部屋全体を照らし出した。
「今日は香草と一緒に、教会で奉仕活動をする約束の日」
フリーデは帝都の通りを歩いていた。昨夜の雨が石畳を洗い流し、道端の草木の葉にはまだ透き通った水滴が残っていて、朝の光を受けて瑞々しい緑にきらめいている。その澄んだ景色に、彼女の心も自然と晴れやかになった。
教会に着いて最初にするのは、恒例の朝の祈りだ。
教会の中では、ステンドグラスを透かした色とりどりのまだらな光が、整然と並ぶ木の長椅子に降り注いでいた。フリーデは静かに座り、壇上の司祭が太く穏やかな声で説く教義に耳を傾けた。人と人は互いに尊重し、和やかに共に生きるべきである。忍耐は美徳であり、善良な者には最後に善き報いがある。悪を為す者は、最後の審判で必ず罰を受ける。欲望を節制してこそ心は浄められ、金銭を慕う者の心に神はなく、高利貸しに至っては許しがたい大罪である。
「教会の理念は、本当に美しい」
フリーデが隣に目をやると、香草は椅子に座ったまま両手を固く組み合わせ、敬虔に目を閉じていた。朝の光がその柔らかな横顔を縁取っている。ふと、かすかに震える目元から二粒の澄んだ涙がこぼれ、音もなく頬を伝い落ちた。言葉にしがたい祈りの喜びに、全身で浸っているようだった。
司祭が説教の終わりを告げて、ようやく香草は目を開け、満面の笑みで人々と一緒に立ち上がった。
「ふう——祈りと告解を終えるたびに、心が洗われて、新しく生まれ変わった気がするんです」彼女は晴れやかに息をつき、フリーデに手を差し出した。「今日は何かお手伝いできることがあるか、見に行きましょうか?」
少女はその手を取り、引き起こしてもらうようにして立ち上がった。
信徒たちが帰ったあと、二人は司祭のもとへ行って尋ねた。
「最近、教会は新しい区域の治安維持を引き受けたばかりでしてね」司祭は穏やかに言った。「よからぬことを企む輩に出くわしたら、お二人で止めていただけると助かります」
「もちろんです!」香草は嬉々として任務を引き受けた。
二人は連れ立って教会を出て、目的の街区へ向かった。
日が高くなるにつれ、帝都には暮らしの気配が満ちていった。道すがら、フリーデは洗濯婦たちが日差しの下で衣服を力いっぱいはたいて干しているのを目にした。遠くの工場では巨大な機械が轟音を立てて動いている。街角のパン屋の前を通ると、焼きたての香ばしい匂いがふわりと漂ってきた。忙しく行き交う市民たちは時おり足を止め、物珍しそうに二人を見上げては、こんな小綺麗な身なりの御方たちがどうしてこんな所に、と首をかしげていた。
通りを歩きながら、フリーデは尋ねた。「さっきの祈りの時、どうして泣いていたの?人が泣くのは、悲しい時じゃないの?」
「違うんです……」香草は静かに首を振り、眼差しに深みが宿った。「敬虔に祈る中で神の存在を感じたから、嬉しくて泣いてしまっただけなんです。私たちの魂は神性の火花で、第一原因が推し進めて創り出したもの。私は分かたれた存在だから孤独で、だから自分の本源を感じ取ると、思わず胸がいっぱいになって涙が出てしまうんです」
こうした抽象的な概念は、フリーデには難しかった。それでも香草の輝くような笑顔と穏やかな表情を見ていると、きっと良いことなのだろうと思えた。
巡回は予想外に順調だった。
「道中、何事もなくてよかった。この平和がずっと続けばいいのに」
「それはフリーデに気高くて凛とした風格があるからですよ。悪だくみをしている人なんて、見ただけで肝を潰しちゃいます」香草は笑って言った。
それもあながち嘘ではなかった。常識的に考えて、身なりの整った者はたいてい貴族か魔法使いで、非凡な力を備えているのだから、小者どもが震え上がるのも当然だった。
巡回を終えて教会に戻ると、司祭はまず二人の働きに礼を述べ、続けて新しい仕事を頼んできた。
「お二人ともご苦労様でした。受付所には、手紙の代筆を頼みたい人たちがまだ大勢集まっています。よろしければ、そちらを手伝ってあげてください」
「もちろんです!お任せください!」香草は二つ返事で引き受けた。
香草のあとについて、教会の脇にある受付所へ向かう。簡素で清潔な建物で、二人の修道士が列をなす労働者たちの応対に追われていた。フリーデは空いている席を選んで腰を下ろした。
ほどなくして、粗末な作業着の若者が進み出て、向かいの椅子に座った。どこか落ち着かない様子だ。
「お嬢さん……農村にいる父に手紙を出したいんです」青年は言った。「父と母にずっと会いたいと思っていること、故郷の景色も恋しいってことを書いてください。それと、心配いらない、首都でちゃんとした職人になって、決まった給料ももらってるって……あと、お金を少し同封して……」
フリーデは彼の言葉どおり、簡単な文章で手紙を一通したためた。小額の紙幣を数枚受け取り、手紙と一緒に封筒へきちんと収める。
「田舎に手紙を受け取ってくれる人はいるの?お父さんも字は読めないでしょう?」彼女は尋ねた。
「教会が手紙を村の教会へ届けてくれるんです」青年は素朴に笑った。「そこの司祭様が受け取って、父に読んで聞かせてくれるんですよ」
手紙を書き終えると、フリーデは手招きして次の人を呼んだ。
人々は次々と書き物台の前に座った。代筆に打ち込むうち、彼女は多くの底辺の労働者たちと出会った。後方にいる恋人へ手紙を送る兵士もいれば、別の区域で学ぶ息子に手紙を出す洗濯婦もいた。
仕事の合間には、訪れた人々に話を聞いてもみた。電報代が高すぎて庶民にはとても手が出ないこの時代、手紙こそが唯一の慰めなのだと、そこで初めて知った。
二時間近く働き詰めて、ようやく今日の代筆を頼む人々の姿が途切れた。
窯の前で立ち働いていた修道女たちが、どっしりした黒パンと魚のフライ、揚げジャガイモを山と積んだ手押し車を押してきた。代筆の列が引くと、入れ替わるように救済を待つ列ができる。教会が毎日無料で配る食糧を受け取りに並ぶ人々は、代筆を頼んだ労働者たちよりもいっそう粗末な身なりで、列には乞食の姿さえ混じっていた。
「一緒に食糧を配りましょう!」
香草に誘われて、フリーデも配給を手伝った。
ただ、今回は全員に行き渡るわけではなかった。長蛇の列のうち、パンと揚げジャガイモを受け取れたのは前半の人たちだけだった。
「もう……ないの?」
食べ物を配り終えたフリーデは、まだ大勢が並んでいる列を前に立ち尽くした。どうしても考えてしまう。この人たちはせっかく時間をかけて並んだのに、何ももらえなかった。なんて可哀想なのだろう。次の食事はどうするのだろう?
フリーデはまだ並んでいる人々のもとへ歩み寄り、声を張って言った。「申し訳ありません。今日のパンは配り終えました。明日また来てください」
「教会の資源には限りがあるので、公平を期すために、早く来て並んだ方から順にお配りするしかないんです」香草にもどうすることもできず、列を解くよう人々に告げるしかなかった。
人々の多くは、たちまち失望と恨みの色を浮かべた。だが教会の武力を憚って騒ぎを起こすこともできず、不満を抱えたままばらばらと散っていった。
その散っていく人波の中から、不意に誰かが力任せに石を投げつけた。石はまっすぐ香草の額に命中した。
「気持ち悪い亜人め!どうして俺たち帝国の領土に現れやがる!お前が盗み食いしたに決まってる!」
「あっ!」石を受けた香草は悲鳴を上げ、苦しげに額の傷を押さえた。鮮血が溢れ出す。
石を投げた男は、そのまま慌てて逃げ去った。
それを見たフリーデは、たちまち怒りに駆られた。魔力が激しく波打ち、駆け寄って石を投げた男を捕まえようとする。
だが苦笑いを浮かべた香草が、手を伸ばして彼女を押しとどめた。
「やめておきましょう。あの人も可哀想な人です。捕まえたところで、何の得にもなりません」
香草は長いため息をついた。それを見た教会の修道女が急いで駆け寄り、指先に白い光を灯して「軽傷治癒」をかけた。
「ほら、何の問題もないでしょう?」彼女が手を下ろすと、額の傷はもう元どおりに戻っていた。
「さあ、教会に入って食事をする時間ですよ」先ほどの茶番などなかったかのように、香草はぱっと笑顔になると、フリーデを促して教会へ戻っていった。
教会の一室で、二人は空いた席に並んで腰を下ろした。香草は平民と同じ黒パンと揚げジャガイモを一人分取ってきて、テーブルでゆっくりと味わった。
「私の分は結構です。もう食べましたから」食事の必要がないフリーデは、そう口実を作って修道女の申し出を断った。他の人に回せば、それも善行になるのだから。
隣に座る香草は、先ほどの痛みなどもう吹っ切れたように、いつもどおりの笑顔を浮かべていた。だが、香草がこれほど善良だからこそ、フリーデはなおさら呟かずにいられなかった。「あの人……!本当に良心のかけらもない。あなたは助けようとしていたのに、逆にあなたを傷つけるなんて」
「あんなに長く並んで食べ物をもらえなかったんですから、腹を立てるのも当然ですよ」香草は気にも留めずに食べながら、かえって相手をかばった。
「でも、あなたは良いことをしていたのに……」フリーデはまだ納得がいかなかった。
「慣れっこですよ。私たちを嫌う人は多いですから、何でも勝手に私たちのせいにされちゃうんです」彼女は笑った。
「あなたが普通の人間じゃないから?」フリーデは尋ね、差別を受ける香草を思って悲しげに眉を寄せた。
「ええ」香草は静かに応じた。「でも、どこにでも良い人と悪い人はいます。私はそれで帝国の人を嫌ったりしません」
「でも、やっぱり私には理解できない……どうして助けてくれる人を傷つけようとするの?あなたはあの人たちのために、あんなに無私だったのに」フリーデはどうしても割り切れなかった。香草のために悲しみ、香草のために怒っていた。
香草は手を止めた。少女の問いの奥に、もっと複雑な感情が潜んでいることを敏感に察したのだ。
「人はとても複雑なんです」香草は静かに言った。「良いことをして理解されなくても構いません。自分でそれが良いことだと固く信じていれば、それでいいんです」
「自分で固く信じる……?でも、自分のした良いことが人に受け入れられなかったら、何の意味もないんじゃないの?」
「私の心の中の神が、それを良いことだと認めてくれれば、それで十分です」香草は笑って応じた。
香草の言葉に、フリーデは考え込んだ。思いを巡らせずにはいられない。正義や善といった基準は、いったい誰が決めるべきなのか?誰の定義に従えば正しいのか?香草にも、彼女なりの正義があるのだろうか?
考え込んでいるうちに、香草はさっさと昼食を平らげていた。
香草は立ち上がり、フリーデに手を差し出した。「食後の散歩に付き合ってください!」
フリーデはすぐには立ち上がらなかった。その浮かない様子を見て、香草は目を瞬かせた。「何か悩み事でもあるみたいですね?それなら……私の尻尾、撫でてみませんか?ストレスが吹き飛びますよ!」
そう言うと、彼女は自分からフリーデに身を寄せ、背中の三本のふさふさした大きな尻尾を広げて、少女の頬や首筋にふんわりと添わせ、ゆっくりと揺らした。
一瞬にして、フリーデの視界は尻尾に埋め尽くされた。頬と首筋に驚くほどの温かさと、密な毛並みの感触が伝わってくる。まるで巨大なテディベアが、遠慮なく顔にのしかかって甘えてくるかのようだった。
「なんだか……悪くない……」
張り詰めていた神経がほどけていく。フリーデは手を伸ばして香草の尻尾を掴み、ゆっくりと撫でた。胸の内が満たされていくのを、自然と感じていた。
毛並みを撫でられた香草のほうは、心地よさに思わず身を震わせ、尻尾をゆらゆらと揺らしている。
「んうう……撫でるの上手ですね……尻尾……尻尾、気持ちいい……!」
毛並みのふわふわした、ささやかなじゃれ合いの中で、二人はしばし煩わしいことを忘れ、この一日を終えた。




