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真夏の優しい幽霊

アルフレッドとゼノは翌朝

再び灯台に登り、何か手がかりがないかを探す。

ゼノ

 「アルフレッド、

  ちょっと来てくれ」

アルフレッドがゼノの元に向かう。

 「何か見つけたか?」

ゼノ

 「ああ。ネックレスが落ちている。」

床に蒼く光る宝石が埋め込まれたネックレスが落ちている。

挿絵(By みてみん)


アルフレッドがネックレスを手に持つ。

ゼノ

 「あれ。このデザイン、

  昨日、ストーン店で買ったネックレスと同じじゃないか」

アルフレッド

 「・・・。いや少し違っているな。

  だがよく似ているデザインで宝石も

  恐らく同じものだ。

  幽霊の落とし物かもしれない。

  ストーン店で話を聞こう。」

アルフレッド達が灯台から降りると

灯台の岬の先端に人がいることに気づく。

ゼノ

 「人がいるな。話を聞いてみるか」

アルフレッド

 「そうだな」

アルフレッド達は立っている初老の女性に話かける。

アルフレッド

 「すみません。

  ちょっとお話しさせてもらってもいいですか」

女性は少し驚いた表情を浮かべる。

 「・・・はい。

  何でしょうか?

  あなた方は地元の人じゃないようですが

  観光客の方ですか」

ゼノは女性を安心させるように微笑みながら

 「はい。観光でアーリルに来てます。

  僕たちはアシュフォードで警察官をしています。

  昨日、廃灯台のはずのこの灯台に明かりが

  ついているのを見て不審者じゃないかと思って

  調べていたんです。」

女性

 「アシュフォードの警察の方・・・

  私でお話できることがあれば言ってください」

アルフレッド

 「ありがとうございます。

  早速ですがこの灯台はいつごろから廃灯台に

  なったかご存じですか?」

女性

 「この灯台が役目を終えたのは

  20年ほど前になります。

  新しい灯台ができたためです。」

ゼノ

 「20年前?

  それにしては綺麗な状態ですね。」

女性

 「それは私が掃除をしているからだと思います。」

アルフレッド

 「あなたが?」

女性

 「はい。

  もともとここは私の父が灯台守をしていました。

  そのため廃灯台になっても定期的に掃除をしているんです。」

アルフレッド

 「そうだったんですか。

  最近この灯台が霧の夜に明かりが灯ると

  噂になっているようです。

  何かご存じないですか」

女性

 「いえ。私は何も知りません。

  灯台のドアは鍵を閉めていませんので

  誰でも自由に入れるのでいたずらかも

  しれませんね。」

アルフレッド

 「そうですか。

  お話をありがとうございました。

  最後にお名前をお聞きしても良いですか。」

女性

 「はい。オリビア・シューベルと言います。」

ゼノ

 「ありがとうございました。オリビアさん。」


ーーアーリル 浜辺の観光通り

ゼノ

 「アルフレッド、オリビアさんに

  灯台で見つけたネックレスのことを

  聞かなかったのはわざとか?」

アルフレッド

 「なんだゼノ気づいていたのか」

ゼノ

 「当たり前だろ。

  この数ヵ月でお前のことがわかってきた。

  お前のことだ何か気づいたんだろ?」

アルフレッド

 「ああ。

  恐らく幽霊の正体は彼女だ。」

ゼノは目を見開く

 「どういうことだ?」

アルフレッド

 「彼女は俺たちと話している時

  手を胸元に置いていた。

  いつもネックレスを無意識に

  触っていたんだろう。

  だが彼女はネックレスをしていなかった。」

ゼノ

 「あのネックレスはオリビアさんのもの?」

アルフレッド

 「恐らくな。

  あのネックレスのデザインが気になるんだ。」


ーーストーン店

アルフレッドが店主に声をかける

 「すみません。

  このネックレスについてお話を聞きたいんですが」

店主

 「はい。なんでしょうか?」

アルフレッド

 「これです。

  このネックレスはここで販売しているものですか?」

店主がネックレスを見る

 「ええと。そうです。

  これはペアネックレスです。」

ゼノ

 「ペアネックレス?」

挿絵(By みてみん)

店主

 「このデザインは人魚から身を守るとされている

  昔からこの地方に伝わるデザインで

  店では通常展示してあるデザインなんですが

  オーダーメイドでペアネックレスとして

  作成しているんです。」

アルフレッド

 「オーダーメイドですか

  この持ち主は分かりませんか」

店主

 「裏に日付とイニシャルが入っているはずです。」

アルフレッドがネックレスを裏にする。

XXXX.10.15 A・H to S・Hと刻まれている。

店主が台帳を確認する。

店主

 「わかりました。持ち主は

  日付とイニシャルからシューベルさんご夫婦です」

アルフレッド

 「シューベルさんの奥さんは

  オリビアさんですか」

店主

 「はい。ご存じですか」

ゼノ

 「廃灯台でお会いしました。」

店主

 「そうだったんですね。

  オリビアさんにそのネックレスは

  返してあげてください。

  夫のアルバートさんがあんなことになって

  猶更、大切にされていると思うので。」

ゼノ

 「アルバートさんはどうかされたんですか?」

店主

 「アルバートさんは腕の良い猟師だったんですが

  3か月ほど前に海に漁に出られて

  そのまま行方不明になってしまったんです。」

アルフレッド

 「・・・。アルバートさんの居なくなった日は

  それは霧の深い夜じゃなかったですか」

店主

 「ええ。そうです。

  なぜそれを?」

アルフレッド

 「ゼノ、繋がったぞ。」

ゼノ

 「? 何か閃いたのか。」

アルフレッド

 「ああ。」

店主

 「?」

アルフレッド

 「ありがとうございました。

  このネックレスは必ずオリビアさんに

  お返しします。」


ーーストーン店前

アルフレッドがスマホで何か検索している。

アルフレッド

 「よし。今日も霧が出そうだ。」

ゼノ

 「霧?」

アルフレッド

 「ゼノ。灯台に行こう。

  幽霊の足取りを知るための魔法をかける。

  また沿岸警備隊に確認してほしいことがある。」

ゼノ

 「アルフレッド、何がどうなってる。」

アルフレッド

 「夜になればわかるさ

  灯台に急ごう。」


ーー夜 灯台前

アルフレッド達は茂みに身を潜めている。

アルフレッド

 「霧が出てきたな。そろそろだ」

灯台のドアを開ける人影が見える。

ゼノ

 「声をかけるか?」

アルフレッド

 「いや。

  まだだ、灯台に明かりがついたら

  踏み込む。」

しばらくして灯台に明かりが灯る。

アルフレッド

 「ゼノ。今だ行くぞ。」

アルフレッドは駆けだすと

ゼノも後を追い駆けだす。

灯台の階段を上っていく。


ーー灯台 最上階

ガチャ

ドアを勢いよく開ける。

ゼノは明かり魔法を発動し部屋を見渡す

 「・・・誰もいない。

  また消えた?」

アルフレッド

 「大丈夫だ。

  今日は逃がさない。」

アルフレッドが魔導書を開き

ライトの光源の魔法石に向けて魔法を発動した。

黄金の光が魔法石から伸びて

壁を上り天井へ向かっている。

ゼノ

 「追跡魔法か」

アルフレッド

 「そうだ。

  24時間以内の残留魔力しか追えないがな。」

アルフレッドが大きな声で問いかける

 「オリビアさん。

  そこにいらっしゃいますね。

  下りてきてください。」

ゼノが続ける

 「大丈夫です。

  怖がらないでください。

  アルバートさんについて

  お話があるんです。」

・・・

ギー

天井の板が外れて梯子が下りてくる。

梯子を伝ってオリビアが下りてくる。

アルフレッド

 「天井裏に隠し部屋があったんですね。」

オリビア

 「・・・。

  天井裏の部屋は機材を置く部屋で

  私たち灯台守しか知りません。」

ゼノ

 「なぜ。霧の日に灯台の明かりを

  灯していたんですか?」

オリビア

 「夫の、アルバートとの約束のためです。」

アルフレッド

 「約束?」

オリビア

 「夫が夜釣りに出るときは

  目印に必ず灯台の明かりを灯していたんです。

  でもあの日、夫が帰ってこなかった日は

  私は体調を崩してしまい、

  明かりを灯すことが出来なかった。

  ・・・

  だからあの人は人魚に攫われてしまった。

  私が目印を灯せなかったから・・・」

アルフレッド

 「だから霧の日に灯台に明かりを灯して

  いたんですね。」

オリビア

 「はい。無駄だとわかっていても

  あの人の帰りを信じたかったんです。」

ゼノ

 「大丈夫ですよ。

  貴方の明かりはアルバートさんに届いていますよ。」

オリビア

 「どういうことですか?」

ゼノがスマホを取り出すとどこかに電話をかける

直ぐに相手に繋がりる。

オリビアにスマホを渡す。

オリビア

 「?」

男性の声

 「オリビア。。。」

オリビアが驚く。

 「この声はあなた。アルバートなの?」

アルバート

 「そうだよ。心配をかけてすまない。」

アルフレッド

 「アルバートさんは沖で漂流しているところを

  沿岸警備隊に保護され、遠方の病院に搬送されました。

  意識が戻らず、身元がわからなかったんです。」

ゼノ

 「今日、沿岸警備隊に連絡して

  身元不明者がいないか確認したところ

  アルバートさんを病院で見つけました。」

アルフレッド

 「アルバートさんに

  声かけをしたところ

  あなたの名前を言ったら

  奇跡的に目を覚ましたそうです。」

オリビアが涙ぐみ

 「ああ。ありがとうございます。

  本当にありがとうございます。」

アルフレッドが手帳を破りオリビアに渡す。

 「アルバートさんの病院は

  こちらです。」

オリビアはそれを握りしめる。

ゼノ

 「アルバートさんのところに

  行ってあげてください」

オリビア

 「・・・。

  私は勝手に灯台に明かりを付けて

  皆さんにご迷惑をおかけしてしまいました。

  罪になるのではないでしょうか?」

アルフレッド

 「オリビアさん。

  灯台の明かりをつけたのは

  幽霊ですよ。

  真夏の夜に出た優しい幽霊です。

  だから行ってください。

  アルバートさんがあなたを待ってますよ。」

オリビア

 「・・・。ありがとうございます。」

オリビアが急いで灯台を降りていく。

ゼノがにやにやしながらアルフレッドを見る。

 「優しい幽霊ね。

  理論の怪物様が随分とロマンティックな

  ことを言うもんだな」

アルフレッドが不満そうに

 「・・・。誰かの悪影響だな」


ーー灯台の下

霧が晴れてきていた。

ゼノ

 「お。今夜は見えそうだ。

  アルフレッド浜辺に行こう。」

アルフレッド

 「今からか?

  何があるんだ」

ゼノ

 「見てからのお楽しみだ。

  きっとお前の気に入る。」

アルフレッド

 「?」

 

ーー浜辺 

夜空には数多の星が輝いている

またその星を海が映し出していて

壮観な風景が広がっている。

アルフレッド

 「・・・。綺麗だ。」

ゼノ

 「気に入ったか?

  アーリルは夜空でも有名なんだよ。

  お前にも見せたかったんだ。」

アルフレッド

 「気に入ったよ。

  何度でも見たくなる風景だ。」

ゼノ

 「そうか。良かった。

  アステリアの夏も悪くないだろ。」

アルフレッド

 「そうだな。

  いい夏だ・・・」

アルフレッドとゼノは夜空を見上げる。

挿絵(By みてみん)

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


番外編を楽しんでいただけましたら、

ぜひ本編『霧都の捜査録 ~消えた理論と兄の遺した魔導書~』も

お楽しみください。


本編では、ルシアンたちがアステリア公国で起こる

大きな事件と謎に挑みます。


「霧都の捜査録」本編はこちら

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番外編とは少し違った、シリアスな『霧都の捜査録』を

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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