↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悠々異世界漫遊譚 〜引退してもいいですか? そうして始まった旅路は、世界の根幹に触れる〜  作者: かたか那由他
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/89

エピローグ

 乾燥した空気。


 白けた土レンガの壁で作られた街を強い陽射しが照らしている。


 市が立つ路上には、通り沿いに軒の天幕を張り出した常店が並び、籠一杯に入れられた果実や、色とりどりの反物が並んでいる。


 そこかしこで、客を呼び込む声が響き、交渉のやりとりが聞こえてくる。


 その市場を一人の女性が歩いている。


 ひしめき合う路上の物売りの天幕と人々。その中を涼しげに、一定の歩調で軽やかに歩いていく。


 白金色の長い髪と白い肌。羽織った真っ白いローブは、黒髪、褐色の人がひしめく中では浮いているように見えるが、道行く人や、通行人に声をかける物売り達がそれを気にする様子はない。


 まるで、見えていないかのように、変わりない日常が続けられている。


 長い睫毛に縁取られたエメラルドグリーンの瞳が、市場の様子を慈しむように眺め、ふと一人の物売りへと目を留めた。


 黄土色の天幕の下。本を平積みにした露店の老人が売り物の本の一冊を開き、うつらうつらと微睡んでいる。


 女性がきらめく髪をゆっくりとたなびかせ、その店の前でしゃがみ込む。


 人の気配を感じた老人が顔を上げる。やはり、この老人も周囲とは雰囲気を異にする女性の風貌には、一片も気を留めない。


 通り一遍の売り文句をもごもごと口にする。


「どれも綴じが綺麗な掘り出し物だよ。チビ向けの絵本から武人好みの英雄譚、奥方好みの恋愛譚まで、一通りは揃えてる。しっかり探して買っていっておくれ。中身の確認はほどほどにしてくれよ。あんまりひどいと衛兵に突き出すぞ」


 一息に言い終わって、店主は再び手元の本へ目を落とす。


 店主の口上を微笑みを浮かべて聞いていた女性がゆっくりと頷き、並べられた本から、青い表紙の本を一冊抜き取った。


 店主がそれをちらりと見て、少し相好を崩す。


「それは、子ども向けの訳本だな。儂も餓鬼の時分に読んで、西方にはこんな不思議な世界があるのかと興奮したもんだ。はて……いつの間に仕入れたんだったか……よく見つけたな。おすすめだよ」


 老人の言葉に耳を傾けながら、女性は懐から小銭を出して、老人へと渡す。


「毎度あり。本との出会いは、かけがえのないものだ。あんたは今日、良い出会いをした」


 決まり文句を呟く老人から、釣りを受け取り女性は白金色の髪を揺らして、また歩きはじめる。


 そして、立ち止まり、手にした本の表紙へと目をやる。


 表紙絵には、妖精の導きに従う、棒を肩に乗せた旅装の男、背景には大きな木がそびえ、男の後を二人の女と一人の女の子が追うようについて行っている。


 女性は表紙に描かれた女の子を愛おしげにそっと撫でた。


 そして、作者名を口の中で確かめるように呟くと、うっすらと目尻を光らせ、微笑んだ。


「またあえましたね、リンド──」


 西からの風が女性の頬を優しく撫で、薄い雲がたなびく青い空へと溶けていった。


 おわり

『悠々異世界漫遊譚 〜引退してもいいですか? そうして始まった旅路は、世界の根幹に触れる〜』をご愛読いただき、本当にありがとうございました。


本エピローグを持ちまして、本編が完結いたしました。

ブクマいただいた方、評価を入れてくださった方、また最後まで読み支えてくださった皆様に、心より感謝を申し上げます。


また別の作品でお会いできましたら幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。