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東の森で

「そんなデカブツ、ここじゃ振り回しづらいだろ。ライム、移動は任せた!」


(オッケー!)


 返事と共に、一瞬で景色が移り変わる。俺の身体で、木々の間を飛び跳ねる様に器用に動きながら、魔物の背後までほぼ一瞬で辿り着いた。


 俺は愛剣を抜き、魔物に向かって振るった。しかし偶然か否か、魔物は折った樹を僅かに動かし、斬撃を止められてしまう。ゆっくりとこちらを振り返る魔物に、悪寒を感じてしまった。


「やっぱり、その辺に居ていい魔物じゃねぇ! ライム、気合い入れるぞ!」


(おー!)


 魔物がなにかしようとした瞬間、俺達は距離を取った。アメルに危害がいかないようにライムも気を配ってくれている。その場から離れた俺達。少しして、木々が根付いていない場所へ出た。ん? ここだけ整地されている様な……? 剥き出しの大地が顔を覗かせていた。


 鬼の魔物もゆっくりとした様子で現れた。魔物が出て来た方向に視線を向けると、少し先に一軒の古家? みたいな、何か建造物が見える。人が住んでる? 住民なら、エルフの可能性が高いか。いや、いい。今考えてる場合じゃない。俺達は、眼前の魔物に集中した。


「いくぞ!」


 俺達は一瞬で距離を詰める。さっきは偶然か攻撃を防がれてしまった、なら今度はと武器を持っていない腕へ向けて剣を振るう。その攻撃はーーーーまたも、武器にしている樹で遮られてしまった。この感じ……さっきのも偶然じゃない! 狙ってやってんのか!?


「……成程、早イナ。ダガ、動キガ素直過ギル」


「喋った!?」


 再び距離を取る俺達。……おいおい、冗談だろ? 喋る鬼の魔物なんて、希少種じゃねぇか! それも、オーガに似たーーそう考えていた時、昔の会話が俺の頭をよぎった。それは、アミカさんと食事をした時の話。


 ーーオーガらしい奴が、都市外をうろついていたらしい。それがな、角が一本で、肌色は人に近かったって言うんだ。


 特徴はそのまま、眼の前にいる魔物と一致する。その時の会話でオーガの様な魔物は、中層にいるオーガをいとも容易く倒せるだけの実力を持っていることを推測していた。


「……勘弁してくれよ。いきなり大当たりじゃねぇか」


「デハ、コチラカラモ行クゾ」


 その魔物はしっかりと加速して、俺達へ向かってきた。それを横へ躱そうとしたが、動きを合わせる様に攻撃を振ってきた。


 速度はこちらが上。だが、戦闘センスは魔物が圧倒的に上だった。俺は慌てて愛剣で攻撃を受けたが、慌てていたせいもあって刃の腹で受けてしまい、バキッと綺麗に折れる音が。


「げっ」


 そのまま、もの凄い衝撃と共に吹き飛ばされ地面を滑っていく。……痛い、超痛い。だが、痛いのは一瞬だけ。そのまま倒れている訳にはいかない。俺達は見えない膜がある限り、外へ出れない。逃げようにも、眼の前にいる鬼はそうさせてくれそうもない。


 幸い、アメルが膜の外側にいる。入口にいた職員さんを通じて、応援を呼んできてくれるはずだ。応援に来た人が、膜の内側に入れるかは正直謎だけど。結局、この魔物は俺へ集中させないと、被害がとんでもないことになる。


 俺は立ち上がり愛剣を見る。根本の刃しか残っていない剣へ、心の中で感謝と謝罪をし鞘へ収めた。


「ティアジャールさんになんて説明すりゃいいんだ……ったくよ!」


 俺は拳を握りしめ、魔物へ猛進していった。

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