第13話
第13話 謎の刺客
薬を運んだ荷馬車の行方にはもう目星がついている。
「荷物の行き先はおそらく、ソーウェンの港だ。先回りするぞ」
「間違えたら王女殿下に、どやされるな」
ルカは、これから始まる大捕り物に興奮してかどこかその声は弾んでいる。
「どやされるだけで済めばいいけどな」
「本当にソーウェンに荷がいきつくって保証はあんのか?」
保証か……。
そんなものはない、でもそう考えられる理由はある。
一つ目の理由としては、麻薬関連の情報が多いのは沿岸部という点から、港を使って外に密輸しようとしているのは明らかなこと。
二つ目の理由としては、麻薬はその取引価格が高い商品なので安全に輸送できる港を使うだろうということ。
ソーウェン港は湾内にある港なので外海の影響は少なく、安全な港なのだ。
三つ目の理由としては麻薬関連の情報の多い場所として挙げられるのがメルラン伯爵領とエルメス侯爵領で、メルラン伯爵領での麻薬関連の情報量が多いということはメルラン伯爵領から密輸される麻薬が多いということになる。
メルラン伯爵領から最も近い港は、ソーウェン港。
そこは、麻薬関連の情報の多いエルメス侯爵領なのだ。
「十中八九間違いない、というくらいの自信はあるさ」
「それは大した自信だな。このルカ様とイゼリナの命運はその自信に託したぜ?」
イゼリナも頷く。
「そりゃ、荷が重いな。だが、根拠のない自信じゃない。きっと上手くいくさ」
夜通し駆け、朝にはソーウェンの港町に入った。
「あれ、美味そうだな」
港町であるだけに店は数多く朝から活気に満ちている。
ルカは、数ある露店で気になる食べ物を見つけてはすぐに買い求めていた。
今も、さっき買ったばかりの魚の串焼きを食べているにも関わらずほかの露店でまた別のものを買っている。
「あの大きくない体のどこにあんなに入るんでしょうね……」
イゼリナも呆れていた。
言っとくと俺たちは遊んでいるわけじゃない。
港周辺を隈なく探索し麻薬が隠してありそうな場所や麻薬の交換場所になりそうな場所などを探しているのだ。
ちなみにすでに何か所かは目星をつけている。
「いや〜食った食った。新鮮な魚料理はいいね」
ルカはご機嫌だ。
「んで、見つかったか?」
こいつは、本来の目的を忘れて食うことしか眼中になかったらしい。
「見つかってたら歩くのはやめてるぞ」
「それもそうだな」
だんだん露店の数は少なくなり船で運んできたものの仮置き場である倉庫が増えてきた。
「隣国ドゥームの船が来る埠頭はこの先のはずだ」
しばらくすると、ドゥームへ輸出される品物の集積される倉庫があった。
「ちょっと中を確かめるぞ」
「はい」
「なんかおもしれーもの、ねーかな?」
倉庫の扉に手をかけようとした瞬間―――
パスッパスッ、と扉に矢が突き立つ。
「何者ッ!?」
さっと扉から距離をとり戦闘態勢をとる。
そして周囲に気を配りつつ腰の長剣を抜く。
わずかな金属音が聞こえた後、飛翔音が聞こえる。
その音に向かって長剣を一閃……矢は明後日の方向にその軌道をはじかれる。
ルカとイゼリナも同じように剣を振るっていた。
さらに断続的に金属音が聞こえた。
「今度は上かっ!?」
後方に向かってステップを踏み矢の射線から逃れる。
自分の足元に三本の矢が突き立つ。
「襲撃者は地上と倉庫の屋根の上だ」
金属音がしてさらに上からの矢が飛んでくる。
それを躱すべく後ろにステップを踏む。
ちらりとイゼリナとルカの2人に目をやれば、そちらも同じ状況らしく三人は背中合わせに近い状態となった。
「死にたくなければ去れ。我らの雇い主はお前らを殺したくないらしい」
屋根の上からクロスボウを持った男が現れてそう告げた。
「抵抗すれば、殺す。おとなしく去れ」
周囲の倉庫の屋根の上や地上にも同じようにクロスボーを持った敵がいる。
合計で十人か……地上の敵はともかくとして上にいるやつらが厄介だな……・
「ルカ、イゼリナ……退くぞ」
「そうするしかねーな」
「はい」
俺らは剣を鞘に納める。
「賢明な判断だ」
そう告げると敵は構えていたクロスボーを一斉に降ろした。
俺たちはお互いに背を向ける形をとりつつゆっくりとその場を後にする。




