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第12話



 第12話 




 麻薬がありそうなのは、屋敷の敷地内の倉庫か何かだろう。

 当然、警備されているだろうからなんの証拠もなしに行って探すというわけにはいかない、リスクが大きすぎる。

 最初にするべきは、麻薬があるという証拠をつかみ確証を得ることだ。

 証拠がつかめそうなところといえば、やはりこの屋敷の主に居室とか執務室だ。

 屋敷の見取りは、だいたいどの屋敷も同じだからこれまでの経験をもとにそれらの部屋を探していく。


 「新入りさんかい?」


 途中でこの屋敷に勤める人に話しかけられることもあったが


 「えぇ、こないだ来たのですがまだいろいろな部屋の場所を覚えきれていなくて……」

 「そうかい、励みなよ」


 といった調子で愛想よくやり過ごしていく。

 廊下に面して少しばかりつくりの大きな扉があった。

 

 「おそらく執務室だな……」


 周囲に人のいないことを確認してから、扉に耳を当てて中に人がいるかを確認する。

 中は無音だった。

 ドアノブに手をかけて扉を押し開ける。

 かすかにきしむ音をたてながら扉が開いた。

 中に、人はいないな……。

 部屋の真ん中に置かれている机へと向かう。

 一番上の引き出しから丹念に中を調べ上げていくが、麻薬に関係するような書類は全く出てこない。

 というか、いくつかの書類が引き抜かれたらしき痕跡が残っていた。

 

 「持ち出されたか……」


 なら、この部屋に用はないな……そう思って退室しようとドアノブに手をかけたとき廊下を歩く足音がこの部屋の扉の前で止まった。

 少し時間をかけすぎたか……。

 迷わず、壁に張り付いて懐からリボルバー式の拳銃を抜く。

 扉が静かに開く。

 メイド姿の女性が入ってきた。


 「動くな、両手をあげろ。声も上げるな」


 見つかってからでは遅いので先手をとる。

 女性は、拳銃を床に落とし両手をあげた……かに見えた。

 女性の手元に何かがきらめいた次の瞬間、耳元を風切り音を立てて何かが飛んでいく。

 

 「イゼリナか?」


 その動作には見覚えがあった。


 「敵かと思いました」


 聞きなれた声が返ってきた。


 「俺も焦った、何か証拠はつかめたか?」

 「それが、何も……。そうか、それでルカは見たか?」


 イゼリナは首を横に振った。

 嫌な予感がするのは気のせいか……。

 その直後、屋敷の裏手から連続的に銃声が響いた。


 「やっぱり、あいつ一人で行かせるのは間違いだったか……」


 イゼリナも苦い表情を浮かべていた。


 「ほっといたら事態は暗転しそうだ、行くか」


 嘆息する間もなく駆けだす。

 やたらと長い丈の服のせいか、いつものような軽やかさはないがそれでもあっという間に銃声の聞こえた場所についた。

 あたりには、人だかりができている。

 場所は、麻薬を集積してある可能性の高い倉庫前だ。

 集まる、人だかりの中には武装した人間もいて倉庫を取り囲んでいた。

 そして倉庫の前には幾人かが倒れ伏している。


 「やっぱりか……」

 「……のようですね」


 予想を裏切ることなく銃声はルカの放ったものであった。


 「とりあえず、行くか」


 周囲の人々の視線は、倒れ伏している人の方へと向いているため目立つことなく倉庫へと侵入できた。

 倉庫の一番奥にルカが立っていた。


 「おい、ルカ……」


 駆けよって小言を言おうとするもけらけらと笑うルカを見るうちに呆れてものをいう気もなくなった。


 「行っちまったぜ」


 ルカの指さす先には、開け放たれた扉があった。

 倉庫内の荷車のおいてあるスペースには荷車数台分の空きがあった。


 「追うぞ」


 倉庫を抜け出し屋敷内の馬小屋で馬を三頭強奪すると塀の低くなっているところから、追いすがる警備兵らを尻目に外へと飛び出す。


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