第11話
第11話
ルーバンミュンスターから逃げたその足でメルラン伯爵領へと急いだ。
追手の聖騎士は幸いにも途中で撒くことができ、何にも邪魔をされることはなかった。
しかし、俺らがここに来るのは司教たちにも見当がつくはずだ。
なにしろ司教自らここに麻薬が運び込まれていると言ったからだ。
それが嘘だとしてもこのメルラン伯爵領は麻薬関連の情報が多い所だ。
麻薬の密輸出には何らかのかかわりがあるだろう。
いや、あるはずだ。
「今日は、宿屋にするか? それとも野宿にするか?」
女性陣のことを考えればなるべく宿屋に泊まるようにしたい。
女性は男性よりもいろいろあるからな。
「今日は、野宿で裏商人探し出して麻薬のある所を襲撃しようぜ」
「ルカは、そう言ってるが」
イゼリナにも一応訊いておく。
イゼリナは周りに合わせるタイプだから訊く必要もないかもしれないが。
「じゃ、今から探すか。で、どっから探す?」
ルカはう〜んと唸った。
「お、そうだ。伯爵屋敷を襲撃して伯爵サマ本人に聞こうぜ?」
考えて出たのがそれか……。
「あのな? 俺らは隠密部隊だぞ? 一番バレたくないやつの前に俺らが自ら現れてどうすんだ? そもそもそれは隠密行動じゃないだろ」
俺らの存在は宰相と王女しか知らないはずだ。
国内貴族の不正糾弾のための隠密部隊だ。
ほかの貴族にばれてしまえば役に立たない部隊になってしまうだろう。
「チッ! せっかく考えたのによー」
「だが、とりあえず伯爵屋敷に行ってみるか」
そこに麻薬が運び込まれているかは、伯爵屋敷に出入りする人間が教えてくれるだろう。
「やっぱり、屋敷を襲撃か!? 翌日のニュースは、メルラン伯爵斃れるか行方不明で決定だぜ!!」
こいつは話を俺の聞いていたのか……?
「だから、襲撃はしないと言ってるだろうが」
「つまんねー」
「仕事につまるもつまらないもない」
―――メルラン伯爵屋敷周辺―――
「屋敷でけーな。なんだってこんな威張るようにデカい屋敷をつくんだ?」
「貴族ってのはそういうもんだ」
「そーか、威張るのが仕事か」
そんなとこだろうな。
現にこの屋敷の持ち主は領地の統治をほったらかして麻薬の密輸出なんぞに手を染めてるんだからな。
「しかし、ここまで大きいと入り口が多そうだから三手に分かれるか」
「そうだな」
ルカを一人っきりにするのはちょっと不安だがそうするしかないだろう。
ルカを信じることにした。
「何かあったら各自行動するように。場合によっては殺傷も可とする。だが基本はバレない、殺らない、殺られない、だ。無論、不測の事態も考慮しておくように」
三人では、心許なくなるな。
「任せとけ」
「はい」
そう返事をするとルカとイゼリナがそれぞれ闇へととけていった。
ルカがニヤニヤしているのが気がかりだが。
俺は、厨房裏の入り口から侵入した。
ちょうど屋敷内は夕飯どきなのだろうか厨房は人が多い。
人が多いということは何かあれば多くの人の目に留まることになるが、その分一人いなくなったくらいでは気づかれないし変装も容易だ。
扉の近くには生ごみの廃棄場所がある。
そこには雑多な食べ物が捨てられていた。
そして、生臭さを周辺に漂わせている。
生ごみの中には高級魚から野菜、珍味の残りかすなどがあり、貴族の食生活が窺える。
ここなら、だれか厨房の人間が食品を捨てに来るだろう。
しばらく、生臭さに耐えながら物陰に隠れることにした。
幸いにも数分と待たないうちに中からコック帽をかぶった小太りな男性が現れた。
コイツに入れ替わらせてもらおうか……。
男は、こちらの存在にも気付かず三角形のトレーに入った生ごみを廃棄していく。
俺は、後ろから忍び寄る。
そして腋の下辺りに鋭く手刀をたたき込む。
「グゲッ……」
男は小さくうめき声をあげたが黙った。
「悪いな…」
俺は、男の着ていた服をはぎ取り自分で着た。
だいぶ大きいな……。
その男は太っているので当然服の大きさも大きい。
服を剥ぎ終えたのでその男をさっきまで俺がいた物陰に移動させて人目につかないようにした。
扉のノブに手をかけて厨房へと入る。
何人かと目が合ったが何食わぬ顔を心がけてさも当然のごとく厨房内を通り抜ける。
ほかの二人はうまくいってるのだろうか…?
どうやらそれは杞憂だったらしい。
何も騒ぎが起きてないことからきっとうまくいっているのだろう。
二人とも折り紙付きの実力だしな、当たり前か。
歩いていると俺は道中でルカとイゼリナを見かけた。
見事にメイドに変装してたがやはり俺の目はごまかせない。
それは向こうも同じことだが。
軽く目くばせをして三人ともまた、散っていく。
第一段階はクリアだが、まだここからだ。




