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第28話 大ッ嫌い

バナナワニ園に行ってきた。

感想はマスコットのキャラ詰めが甘い。

マナティーは正義。

魚、満面の笑み。

私は今とても困っている。なぜなら同い年の勇者が

ついてくるからです。しかもこっそりと。


しかし人混みを縫うように歩いていけば振り切るのは簡単だ。


人が多い所はなんとなく落ち着かないけれど背に腹は代えられない。


ため息を一つこぼしてからルミアは人混みに割って入る。

人の流れの隙間を見つけてはそこに入る。避けきれず何回か人にぶつかりながらも蛇行しつつ人混みを抜けた。


朝から尾行されることに気付いては同じことを繰り返しもう3回目である。


まだぎこちないながらも勇者を撒くことに慣れを感じ始めている。


「・・・よし、ついてきてない」


見つからないうちに角を曲がるとルミアはもう一度ため息をつくことになった。


なんかトゲトゲした見覚えのある攻撃的な鎧。


そうガーダーである。相変わらず腕を組んで壁にもたれかかっている。


町に頻繁に降りるようになってから角を曲がったところにこうして立っているの事が多いのだ。


つまりコイツもルミアを尾行してる一人という事になる。


「Zzzz・・・・」

「・・・」


こう見えてこの追手は非常に厄介である。寝ているのに必ず先回りされているからだ。


「・・・えいッ!!」


ルミアが突然ガーダーに蹴りを入れると耳障りな音を立てて何の抵抗もなく倒れた。


「zzz・・・」

「やっぱ寝てる・・・」


しかも、倒されても起きない鋼の睡眠である。

呆れを通り越して関心を覚えるルミアであった。


どうやってこの状態で私の跡を追ってるの?

不思議過ぎる、ある意味ヘレンよりも謎が深いかもしれない・・・。


「あ、いた!」


倒れてるガーダーを観察していたら背後からヲォルトの声が聞こえてくる。


あぁしまった、今日は目的地に行けそうもない、もうダメだ帰ろう。


「ガーダー私先に帰ってるよ」


声を掛けたところで夢の中だろう返事はない。


「その人いつも寝てる人だよね、叩けば起きるんじゃない?」


勝手に会話に割り込んできたヲォルトがガーダーの胴体に蹴りを入れた。


それを見てカッとなったルミアはヲォルトの腕を掴み自分の方にグイっと引っ張る。


「その人に乱暴なことしたら絶ッッ対に許さないから」


驚いて目を見開くヲォルトが真っ直ぐルミアを見る。


ヲォルトを睨むルミアの瞳には強い意志が宿っているように思えた。


その瞬間、強い意志の宿る瞳にヲォルトの心は吸い寄せられてしまった。


渦の流れに絡めとられた落ち葉のようにそれは抗えるものではなかった。


許さない?

ガーダー乱暴に蹴り倒したのは自分だというのに。


無茶苦茶を言う自分を心の中で嘲笑する。


無意識にヲォルトの手を引き空っぽになった頭で言葉を紡いだ。それだけのことなのである。


「あ、ごめん・・・困ってるのかと思ってつい・・・」


ヲォルトが申し訳なさそうに自分の頭をガリガリ搔きむしっている。その顏はトマトのように真っ赤だ。


「・・・ううん、こっちこそゴメンなさい。じゃあ私帰るね」


ルミアが体の前で小さく手を振って来た道を戻り始めた。

ヲォルトが顏を赤らめている理由はルミアにはまだ分からない。


そして、ここが最悪の始まりだということなど、なおのこと知る由もない・・・


「ルミアか・・・どこに住んでるだろう・・・」


自分でもよくわからない感情に押されるままにいつか聞き出そうとヲォルトは心を決めた。


秘密の場所から城に向かう隠し通路の入り口。

そこにもたれかかっているのは鎧を脱いだガーダーだった。


「・・・本当にどうやって回り込んでるの?」

「お前より・・・道に詳しいだけだ」

「きゃあ!?」


起きているのは完全に想定外。油断しきっていたルミアは背後から脅かされた猫の如く飛び上がる。


「起きてる!?!?!?」

「起きていては・・・不味いのか?」

「いつも寝てるでしょ!驚かさないで!!」

「いつも・・・起きてるぞ」

「嘘だ!!寝てるよ!!爆睡だよ!!蹴られても起きない程深く寝てるからね!?」


ガーダーは首を傾げるだけであった、恐らく何を言っても無駄なパターンである。


「訓練・・・するか・・・?」

「・・・少しだけね」


不機嫌な声で答えるルミアを見てガーダーは肩を震えさせて笑っている。


「で?財布の中身は入れてきた?」

「ああ・・・」


その場でお互い向かい合って構える。一際強い風が吹き、それに押されるようにルミアが動く。


「はぁッ!」


ルミアの最初の攻撃はボディーブローである。

馬鹿正直に真っ直な攻撃はガーダーが見切るにはあまりに容易い。


「甘い・・・」


ガーダーは攻撃を上手く()なしてルミアのバランスを崩し首根っこを捕まえた。


「きゃあ!!離して!離してよ!!」


持ち上げられてしまったルミアが手足をバタバタさせるがなんの意味もない。


「今日は・・・俺の勝ちだな・・・」

「いいから離して!顔が怖いんだよッ!!」

「・・・俺が嫌か?」

「そうだよ!嫌い!大っ嫌い!!ガーダーだけじゃない!!大臣も召使いも!お城のみんなが大っ嫌い!!私に構わないで!もう放っておいてよ!!」

「俺が・・・勇者に蹴られた時、俺の為に怒ったのに・・・嫌いなのか?」


暴れていたルミアの動きがビタリと止まった。


「お、起きてたの!?」

「だから・・・起きてると言っている」


ルミアの顏が赤くなる。先ほど見たヲォルトの顏と同じぐらい真っ赤になっている。


「寝ててよバカ!降ろして!降ろしてぇ!!」

「何か・・・理由があるのだろう?話すなら・・・降ろしてやるぞ」

「ッッッ~!!」


しばらく何も答えなかったがガーダーに視線をチラリと送った後観念した。


「お父さん、お母さん、ヘレン」

「?」

「私の大切な人達・・・みんな、居なくなっちゃた・・・」

「そうか・・・」

「私が大切に想う人はどこか遠くに行っちゃう。それなら、みんなに嫌われようと思ったの、そうすればきっと、誰も不幸にならなくて済むから・・・」

「・・・俺は大丈夫だ」

「・・・何が?」


ガーダーがルミアを降ろして話を続ける。


「俺は・・・居なくならない・・・」


ガーダーが小指をルミアに差し出した。


「約束だ・・・」


ルミアは下を向いたままだ。グズグズと鼻をすする音が聞こえる。


小指を出したまま待っていると、やがてルミアも小指を伸ばしてきた。小指と小指をキュッと結ぶ。


「「ゆ~びきり げんまん ウソついたらハリせんぼん の~」(ZZ)zzz・・・」

「やっぱ、ガーダーなんか大ッ嫌い」


文句と鼻を垂らしたルミアの表情は柔らかい笑みに満たされていた。

ヲォルトは兵士の依頼をよく受けているので

ガーダーと面識があります。


ガーダーは眠っている間に聞こえたことを覚えている

という変な特技があります。

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