表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AF―After Fantasy―  作者: 04号 専用機
Beyond belief
35/166

ルシフェルのことを

「ああ、そうだった。いやはや残念」

 ムカつく男だ。

「それじゃあ話の続きを。ルシフェルが出てきたのは本当に最近のことでね。ゼウスが教育係に任命されたのは記憶に新しいよ」

「ゼウスを師に?」

「そうだね。今までも、ゼウスの弟子は何人かいたけど。でも、ゼウスに認められてるのはルシフェルだけかな」

 強いわけだ。

 ゼウス。あの男とは一度会ったきり。しかし、隠し切れないその強さが見えた。

 本気で習うなら、ゼウスしかいない。そう思えるほど。

 ルシフェルは彼に認められている。

 それだけ知ると、自然、僕の口元は綻んだ。

 相手にとって、不足はないか。僕ももっと、進まなければ。

「魔力の扱いと、剣術に関してはピカイチだ。正面から挑むのは得策じゃないかな」

 僕の方を見て、ドクトルは片眉を吊り上げる。

「でも正面から行く気でしょ?」

「もちろん」むしろ、それ以外のやり方は知らない。「他にはどうだ」

「部下は四人。人間を育ててる」

「人間をか」

「そう。孤児が好きみたいだね。扱いやすくていいんだろう」

「そいつらは――」

「方舟への出入りは分からないね。少なくとも、君以外に人間の気配は感じないし」

 ただ、とドクトルは付け加え。

「部屋の外――深層にいるなら、可能性はあるよ。何せ気配が探りにくい場所だから」

 だからこそ、深層を塒にしているのだろう。賢しい男だ。

「気をつけな。ルシフェルの首を狙うなら、確実に部下の相手もしなきゃならない」

 ルシフェルと遭遇した時は一人だった。

 盗んだ装置に近付けば、部下にも遭うのだろうか。

 おそらく部下も出来る人間だ。

 魔力を使えることは前提として、やはり、戦世とやらの出身なのだろう。そうなると気になるのは――

「そう言えば、能力……とはなんだ」

 ――能力の有無か。

「ルシフェルにも、ミカエルにも、ユダにも。神官は皆能力を持っているんだろう? それは一体なんなんだ」

 ドクトルは思い出したように「ああ」と零して、カップに目を落とした。

「凄く簡単に言うと、魂のカタチのことだよ」

「それは、肉体に反映されるはずだろ」

 前の説明ではそうだったはず。

 まだ何か話していないことがあるとすれば、それが能力だ。

「魂のカタチは肉体のカタチ。それがお前の説明だった」

「じゃ、そこからプラスってことで、話そうか」僕に手を差出し。「おかわりいるかい」

 そういえば、カップはもう空だ。

「今度は水が欲しい」ここのところ珈琲しか飲めていないから。「口の中が粘ついてる」

 不思議なくらい疲れないのは、きっと魔力のせいだろう。未だに巡らしているこの管が、僕を少しずつ治しているのだ。

「水、か」ドクトルは扉を指さして。「脱衣所に洗面台があったでしょ」

「まさかとは思うが……そこから汲めと?」

「仕方ないじゃん。そこ以外は飲料水じゃないし」

 再び席を立つことになるとは。

 まぁ良いかと言い聞かせ、僕はベッドから立ち上がる。

 コップを渡された。

 面倒だが、無いものは仕方がないな。



 そういえば腹が減ったと思いながら、僕は蛇口を捻っていた。

 魔力は一を産み出さない。体内から無くなったものは補えないようだ。

 これからは、出血に気を付けた方がいい。血が造られる過程などよく分からないし、下手に強化してまた倒れるのも困る。

 まだまだ、出来ないことばかり。

「おっ――ととと」

 水が溢れた。

 一旦コップを置いて手を――

「……タオルがない」

  ――そういえばドクトルはタオルを使わないのか。

 ため息をついて、服で拭う。

 コップに注がれた水を呷って、もう一度注いだ。

 今度はゆっくりと。


 ルシフェルのことを考える。

 やつは一体なんなのだろう。皆が皆、僕が彼を知っていると言う。

 事実、顔も見ていないのに、僕は何故か奴に懐かしさを感じている。

 どこかで会ったことがある。

 どこか、どこか。どこで?


 蛇口を締めた。

 考えても仕方が無い。

 八分目で止まった水を少しだけ飲んで、僕はドクトルの元へ戻ることにした。


「53……5、4……55ォオオ!!」

 ユダが盛り上がっている。

 静かにして欲しいと思いながら、僕は聞き流すことに決めた。

「さて……」凄くうるさい。「何か食うものあるか?」そういえばドクトルは食わないのか。「……ないよな、悪かった」

 返答を待たず勝手に自己完結した僕に、ドクトルのため息が返ってくる。

「そういえば君らは食べなきゃ駄目なんだったな。……面倒事が増えちゃったよ」

「迷惑をかける。できればあった方がいい」

「分かった。次までには用意しておこう」

 ゴリゴリと音を響かせて豆を挽くドクトルを脇目に、僕はユダを見た。


 惚れ惚れする筋肉だ。

 一つ一つの隆起も然ることながら、何より美しいのは全体的なバランスだろう。

 どの角度から見ても黄金比的に整った肉体。広背筋の動く様など何時間でも見ていられそうだ。

「…………ユダには戦い方を教えたのか」

「ん? まぁ、基本はね。触れないから訓練は碌に詰めてないよ」

「なら、アイツには拳法が合うだろう。あれだけの下地があるなら、勁が走る感覚もすぐ身に付く」

「すごく意味が分からないけど、分かったよ。今度教えておく」

 机にコップを置いて。

「じゃあ、続きを話してくれ。能力のことを」

 ドクトルの手が止まった。

 器械を僕の近くに置く。

 それから指を鳴らす――そこにはサイフォンが現れた。

「紹介しておこう。これが僕の能力」

「便利なポケットが?」

「政世の子はみんなそう言うな……厳密には全く違う者だよ」

 「見てて」と言って、ドクトルの魔力が椅子に伸びた。

 それが椅子全体を覆ったかと思うと、次の瞬間。

「……小さくなった」

「これが能力。僕は魔力が通ったものを圧縮できるのさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ