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AF―After Fantasy―  作者: 04号 専用機
Beyond belief
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反省してまぁす

「馬鹿ですか貴方は!!」

「うるさいな……反省してまぁす」

「この……! なんですその態度は! こっちは結構心配したんですからね!」

「死体で見つかるとでも思ったのかお前は。俺を甘く見すぎかお前は」

「ついさっき魔力を覚えたばかりでしょうが!」

 脱衣場にて、僕はユダから説教を食らっていた。

 僕は無事ドクトルの拠点に戻れた。方舟をさ迷っていると、突然目の前にトビラのようなものが出現して、そこからユダが現れたのだ。


  血相を変えて、とはまさにああいうのを指すんだろう。両親にもあれほど心配されたことなど滅多になかったから、僕は内心少し嬉しかった。……というのは秘密にしておこう。


「全く……貴方といると命が幾つあっても足りない! 私の方も危ない場面はあったんですからね!?」

「お前はお前で切り抜けただろうが。それで手打ちにしておけよ」

「結果論で話さないでいただきたい!」

 中々終わらないな、などと思いながら、僕は一向に痺れる気配のない足をさする。

 するとユダの方は、どうやら長く叱りすぎたと思ったらしい。急に怒りの矛を収めて目を逸らした。

「……もう良いです。生きていましたからね。これで晴れて報告できるというもの」

 ドクトルが僕の命に興味を持つとは思えないが。

 それに、僕達を脱衣所に追い出したのはドクトルだ。なんでも騒がしいのは好きじゃないらしい。

 報告の前に説教を済ませてこいとは、それを食らう僕の身にもなって欲しいものだ。

「終わりでいいか?」

「ああ……はい。これ以上言っても仕方ありません」

 よし、ならさっさと戻って外に出よう。いつまでも屋内にいるのは退屈極まる。

「さっさと済ませるぞ。まだ何も始まってないんだ」

「痺れていたのでは?」

「慣れてるんだ。何時間だって正座でいられる」

 ユダがため息をついた。

「叱られ慣れてますね……」

 そんなことはないと思う。

 確かに、父さんから説教されることは多かったが。

「貴方はもっと真面目な方だと思っていた」

「真面目だろ」少なくとも、戦うことに関しては。

 廊下を歩く。

 扉越しに豆を挽く香りがした。

 ドクトルめ、段々と珈琲の淹れ方が様になってきているな。

「終わったぞ」

「オッケー。じゃあ座って待ってて」

「私は――」

「懸垂用の器械用意しといたから使っていいよ」

「有り難き幸せ」

 さて、今のうちに考えを整理しておこう。

 まず、聞きたいことを。

  一つ目はやはりルシフェルのことだ。深層に潜れる者はほとんどいないと聞いた、ならば奴は多少なりとも特殊なNSということになる。「いっ……かいめぇえ!」気になるのは奴の出自。それから能力の「に……かいめぇ!」詳細。獲物は「さんかい……めぇえ!」この目で見たわけだから、あとは戦い方がどうかという「四回、めぇ!」

「俺もやっていいか?」

「謹め筋肉の民ども。ここを汗臭くしようって言うのかい」

 呆れたように言って、豆を別の器械に入れる。

 その手を見た。

 魔力が集まっている。

 空間が歪に見えるほど。

 手の向こう側が少し、近い。まるで、掌に分厚いレンズが出来たかのような。

 いったい、そこで何が起こっていると言うのだろう。

「あんまり見られると恥ずかしいな」

 ドクトルの言葉にハッとして、注視するのを思わず止めた。

 その姿が薄く見える。目に力を込めると、その姿はさらに――「魔力を見ようとしちゃダメだよ」

「なに?」

「そのやり方じゃ、僕は見えない。目をあわせて」

 消えかかっていた姿に慌てて目を合わす。

 姿がくっきりと浮かび上がった。

「大丈夫?」

「あ……ああ」

 不思議な男。

 ドクトルは本当に、謎に包まれている。

「その様子だと、しっかり魔力を覚えみたいだ」熱湯が器械に注がれた。「何より。たったの数時間でねぇ……」

 湯気が立つ。

 もうすぐ珈琲が入る。

 今日はどのくらい、美味い珈琲が出てくるのだろう。

「十回目ぇえ」

「ユダ。そろそろ始めるよ」

 汗の匂いが混じっている気がする。

 机には、珈琲カップが置かれていた。

「飲みながらでいいよ。まずはユダから」

 ドクトルは空いた椅子に腰掛けて指を組んだ。

 今日は、機械の箱に興味が無いようだった。

「……ふぅ。では、私から。何から話しましょうか?」

「進捗かな。どこまで分かったの」

 脱いだらしいシャツに袖を通しながら「半分です」とユダは答える。

「魔力の基礎は何とか履修済み、という段階まで。スサノオの能力、その有無はまだ不明と言うところです」

「サトリは能力じゃない、と?」

「ええ」僕に目配せし。「何度か、不可解な避け方を見た。その瞬間に魔力の変動は無し……となれば」

 メガネを拭いて。

「単純な――と言って良いものですかね。技術によるものと見て良いでしょう」

「オーライ、その報告はそこまで」

 銀淵のメガネが掛けられた。

「では、次は?」

「…………。……犯人は?」

 ユダが大きくため息をつく。

「それはあまり、良くない報せになりますが。それでも?」

 ズレたメガネを治す。

 そういえばメガネ率が高いなここ。

「もちろん」ドクトルがゆっくりうなずき。「その為に派遣したんだぞ君ら」

 僕は珈琲を啜る。

 ユダは困った様に僕を見た。

 肩をすくめる。何を躊躇するのか分からない。

「……捕らえることは叶いませんでした。と言うより、捕らえることは難しいでしょう」

 まず、結果から話し出す。

「遭遇したのは方舟の深層。この時点で、相手を引きずり出すのは簡単だと思っていましたしかし――」

 しゃらくさいな。

「そいつは、深層を塒にする男だった」

 僕から話そう。

「黒尽くめの男。俺の追っている相手。……それが盗難の犯人だ」

「なぜ深層が塒だと?」

「……」考えていなかった。「勘」

 その勘は概ね正しいらしかった。ドクトルは納得したように数度頷き、言葉を紡ぐ。

「なるほど、彼か。厄介なのに絡まれたな」

「なぁ」蚊帳の外はいい加減嫌だ。「お前も知ってるのか?」

 ドクトルはちょっと意外そうな顔をして。

「もちろんだとも。彼は結構有名人だ」


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