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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第83話 守るべきもの

「リザ?」


「奴隷になればずっとジン様のお側にお仕えできますね」


 そう言って彼女は微笑むのだった。


「いやいやいや、ちょっと待って下さい。奴隷と言ったってリスクがあるでしょう?確か罪を犯したものは罰としての奴隷落ちというのもあると聞きました。となると相応のリスクがあるんじゃないですか?でなければ罰になり得ない」


 自由を奪われ他人に金銭でその身の権利を受け渡す、とは言っても良い人に渡ったのならそれは罰には成らない可能性がある。


 いやその人の境遇次第では奴隷落ちしたほうがマシという話もあってもおかしくない。


 もしくは良い人に渡るように手引する可能性だってあるだろう。


 つまりは奴隷落ち自体は罰とは成り得ない可能性だ。


「もちろんリスクはあります。ジンさんは王国の階級制についてはご存じですか?」


「ええ。ギルドの講習で聞きましたが……」


 ルタリア王国を始めとした多くの人族の国では階級制によって身分が確立されている。


 王族


 貴族


 自由民


 市民


 平民


 奴隷


 放浪者


 王族、貴族は言わずもがな領地を持ちそれとそこに住む者を庇護する立場の者達である。


 自由民は貴族に次ぐ階級の者。金銭でその地位を買うことは出来ず、古くからその土地に根付き住み着いていた者達などに与えられる階級。または王家に対して大きな働きをしたものに送られることもある。認められた領域内なら自分の意志で自由に住む場所を決める権利を持つ。


 市民は金銭で買える地位。城壁内に持ち家を得ることが出来る。市民権を得た都市でのみ有効のために、別の都市に住みたい場合はその都度、その都市の市民権を得なければならない。


 平民は最低限の人頭税を支払っている国民。城壁のない村落に居住する。得られる権利は最低限のもの。


 奴隷は人とは認められていない。人に所有される物である。


 放浪者は許可無く国に居座る者達である。犯罪者予備軍であり、都市内部に入街することは厳しく規制される。


「一度奴隷に落とされれば、たとえ奴隷身分から開放されてもステータス上は解放奴隷となり、それ以上変化しません。階級的には平民と同じですが、意味合い的にはかなり違います」


 一般的に奴隷というのは罪を犯してその罰として奴隷落ちとなったもの犯罪奴隷と、借金などしてその金銭の肩代わりとして奴隷落ちしたもの借金奴隷が大半である。


 現在王国は戦争を行っていないため敗戦国からの捕虜、戦争奴隷は扱っていない。


 つまり奴隷というのは、一般市民からは犯罪者か借金で首の回らなくなった自業自得の者という視線を受けるのだ。


 たとえ解放奴隷となってもステータスを調べればその経緯はわかってしまうため、世間からの扱いは厳しいものとなってしまう。


 元犯罪者だとわかれば、積極的に良くしてあげようと思うものはそういない。まともな仕事にもありつけず、厳しい生活を余儀なくされる。


「ハーフエルフである私の立場は元々この国では厳しいものです。たとえ奴隷落ちとなってもそう変化はないでしょう」


 リザは奴隷になるということに何の異も無いようだった。


「私もジン様は英雄の器だと思ってお有ります。だとすれば英雄の奴隷というのも望むべきものかもしれませんね」


 そういってリザはくすくすと笑った。


 奴隷は一般的に軽んじて見られる。


 だがその所有者が立場のある人物だったらどうだろうか?


 例えばこの国の国王の奴隷であるならば、その奴隷は国王の所有物である。


 軽んじた扱いを受けるはずがない。


 国民全員が称える英雄の奴隷であったなら?


 だれが邪険な扱いをするというのであろうか。


「私も兄様の奴隷になることに異論はありません」


 静かに階段を降りてきたシアンが話に割って入る。彼女の肩には護衛のためかネロが乗っていた。


「いや、だけどな……」


 そんな簡単に決めていいのだろうか?


 それにみんな俺を買いかぶり過ぎている。俺はそんな英雄の器などない。ただの一小市民なのだ。


 俺がぐだぐだと考えていると、シアンが駆け寄り俺の胸へと飛び込んできた。


「兄様、助けに来てくれてありがとうございます」


 そう言って彼女は俺の胸にグッと抱きついてくる。


 俺は優しく受け止め、軽く彼女の頭を撫でる。


「いや、遅くなってすまなかった」


「いいえ。兄様は絶対来てくれるとわかってましたから。だから少しも怖くありませんでした。だって守ってくれるって約束しましたものね」


 そう言って顔をあげる彼女は眩しいほどの笑顔であった。




ちらりとアルドラに視線を送ると「お主に託されたこと。自分で考え好きなようにするがいい」と判断は俺に任せるとのことであった。


 うむむ、と俺は唸って考え――


 自分の思う考えをミラに伝えた。


「ミラさんは二人が心配で俺に彼女たちを託したい、傍に置いてほしいということなんですね?」


「はい。お願いします」


 ミラは深く頭を下げる。


「わかりました。二人の面倒は俺が責任もって見ます。彼女たちを俺の妻にすることを許してください」


 彼女たちに視線を送ると、二人はまっすぐな瞳をこちらに向けてくる。


「もしものときに、たとえば居場所がわかったとしても、追跡はできても守る手段にはならないでしょうし、奴隷の首輪も魔道具であるなら破壊する手段もあるかもしれない」


 抑止力にはなっても、彼女たちを直接守る手段にはならないかもしれない。


「俺は彼女たちを手放すつもりはありません。2人とも俺の妻にして、2人とも俺が守ります。そして彼女たちには自衛の手段として、一緒に狩りに出かけレベル上げに参加してもらいます。特にシアンは今のままでは無力です。俺が見守り、最低限身を守る力を付けてもらいます」




「リザ」


 俺はリザに呼びかける。


「はいっ」


 多くを語らずとも俺の求めることに気づいたのか、椅子から立ち上がって駆け寄ってきた。


 寄ってきたリザとシアンの2人を抱きしめる。


「あっ」


「きゃっ」


 2人はされるがままに俺の腕の中に収まった。


「俺は自分を英雄の器だなんて思っちゃいない。臆病だし、特別鍛えているわけでも覚悟があるわけでもない。だけど皆のことを家族のように思ってるのは本当だ。本当に大事に思ってる。だから英雄になれって言うならなってやる。強くもなるし覚悟もする。まだ未熟な俺だけど……付いて来てくれるか?」


 リザとシアンは顔を上げて――


「何処までもお伴します」


「私は兄様と一緒がいいです」


 そう笑顔で言ってくれたのだった。




>>>>>




「足りない部分はわしが鍛えてやろう」


 そう言って笑うアルドラの瞳に火が灯ったような気がしないでもない。


 変なやる気のスイッチが入ってしまったかもしれないな……


「ジンさん。娘たちをよろしくお願いします」


 ミラは改めて頭を下げる。


 俺もまたミラに向き直り「お任せください」と頭を下げた。




「それはそうとお母様はどうなさるのですか?」


 リザの厳しい視線がミラさんを捉える。


「どうって……?」


 どうするって森に帰る、つまり実家に帰るって話か?


「お忘れですか?ジンさんはお母様の借金を立て替えて頂いているんですよ」


「あっ……」


 ミラさんが驚きの表情を見せる。


 たぶん忘れていたのだろう。俺も忘れていた。まぁ別にその辺は大した問題じゃない。俺が勝手に返してしまったわけだし。


 あと借金は正確に言うと、亡くなったミラさんの旦那さんのものらしいけどな。


「まさか何のお返しもせずに森に帰るなんて言わないですよね?」


 リザの口調が厳しい。


 ミラさんも失念していた為に言い返せないでいるようだった。


 リザは本来なら奴隷商に身を売り、その金で返済に当てるべきでは?というが……


「いやそれは……」


「もちろんジン様はそのようなこと納得されないでしょう。それにそんなことにならないように、お金を出してくれたわけですから」


 うん、勿論だ。ミラさんが奴隷商に身を売るなどしてもらっては、俺のしたことが意味なくなる。


「ですからお母様はジン様の奴隷になって、体でお返しするのが筋ではないかと思います」


「えええ?」


「えええ?」


 俺とミラさんは同時に驚愕の声をあげた。 

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ミラはどうして魔力の満ちた地下迷宮に行かないのか?
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