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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第174話 フィッシャーマンズ・パーク5

「口内と額から出血、あと倒れた時に頭を打っているようです」


 状態:裂傷 出血 打撲 昏倒


「魔眼で確認した。ミラさんお願いします」


「はい」


 気を失っているようなので魔法薬を飲ませるのは難しい。ここはミラさんの光魔術で治療してもらおう。


 リザの見立てでは幸いにも傷は軽症のようだ。出血があるので見た目は派手だが、傷口を塞げば回復も早いだろうとのことだった。


 頭を打っているようなので、すぐに動かさないほうが良い。


 光魔術の治癒は基本的に本人の持つ自然治癒力を向上させる働きらしいので、回復させてから安静にできる場所に移動したほうが良いだろう。 


 レイド・アーチ 魔剣士Lv48

 特性:魔術耐性 剛力

 人族 26歳 男性

 スキル:剣術B級

     闇魔術C級

     氷魔術C級

     忍耐C級


 アルドラと対峙する男に魔眼を発動させた。

 

 かなりレベルが高いな。周囲の奴らが30台前半なのを考えても、飛び抜けて強い。それに恵まれた体格だ。アルドラよりも上背があり、肩幅もあってかなりの巨体である。


 それにしても人族には特性がないと思っていたのだが、そうでもないのか。特性がある人族というのは初めて見た。


 いや、俺も魔眼があるから、無いこともないのか。まぁ、俺の場合は例外と言えばそれまでだろうけど。


 アルドラが負ける姿など考えられないので、そっちは放って置いて良いだろう。


  

「あ、あれ?……私は」


 男に蹴り飛ばされた女の子が意識を取り戻した。


 混乱しているようなので、リザが状況を説明する。


「すいません。助かりました、ありがとうございます」


「いえいえ、災難でしたね。傷口は綺麗に治りましから、心配ありませんよ。女の子の顔に傷が残っては大変ですから。でも今度からは、ああいった話の通じないお客さんの対応には、何か対策を考える必要があると思いますよ」 


 ミラさんが優しく諭すと女の子は苦笑して頷いた。


 

 アルドラがレイドを背負投げのような技で投げ飛ばし、店内の海人族たちから歓声があがった。


 普段から鬱憤が溜まっているのだろう。酒も入っているようだし、ふんぞり返っていたチンピラ冒険者の親玉を投げ飛ばして盛り上がりは最高潮だ。


 だが相手は普段から荒事を生業にしている冒険者たち。

 

 特にこういった輩は体面を気にするものなので、舐められたと感じれば黙っては居ないだろう。

 

 案の定、店内の緊張感は一気に加速する。


 冒険者たちの怒号が響き、それに海人族の若者も反撃する。


 場内は今すぐにでも乱闘が始まりそうな、異様な雰囲気に包まれていた。


「コソコソ何やってんだ、貴様ら」


 風貌をして海賊といったような無頼漢がミラさんに近づいてきたので、危険を察した俺は咄嗟に殴り飛ばしてしまった。


 闘気、体術、奇襲で強化された不意打ちの拳打が、男の顎を打ち抜き昏倒させる。


「あ、つい、やっちまった」


 たぶん、俺のこの行動が引き金になってしまったのだろう。


 ついに店内の各所で酔っ払いたちの殴り合いが始まった。



「うおおおおあぁぁぁぁッッ!!」


「ぶっ殺せぇぇぇ!!」


「バカヤロウがぁぁぁ!!」


「このやろう!!」


「帝国のクソどもを追い出せぇーーー!!」


「生臭い魚人がほざいてんじゃねぇぇーーー!!」



 やばい。焚き付けてしまった感は否めないが、ここにいてはマズイ気がする。皆に火の粉が掛かる。危険だ。脱出しよう。


 アルドラは仕方ない、取り込み中のようだし置いていくか。どうせ帰ろうと思えば帰還で帰れるのだ。


 脱出する算段を皆に告げると、背後から巨人の如き大男が近づいてくる。


「あの野郎の仲間だな?逃げられると思うなよ」


 クソ。巨人もどきのくせに気が回る奴だ。面倒くさい。アルドラと遊んでろよ。


 俺が思わず睨みつけると、大男は気味の悪い薄ら笑いを浮かべて襲い掛かってきた。


「ああっ、鬱陶しいッ」


 掴みかかりに来る太腕を捌き、足払いをして相手の体勢を崩す。


 頭が下がった所で、その顔面に渾身の拳打を叩き込んだ。


 アルドラの組手と比べれば、動きは鈍いし単純だ。この程度なら余裕で捌ける。


 

 ほんの少しだけ、自分のせいかなと思うところもあるが、彼女たちを守ることが最優先だ。そのためには躊躇する暇など無い。  

 

 降りかかる火の粉は全力で打ちのめし、この場を脱出する。


「兄様!」


「おおッ!?」


 シアンの叫びが、迫るもう一人の大男の存在に気づかせた。


 掴みかかろうとする太腕が俺の顔面へと伸びる。


 だが、その動きは寸前でピタリと停止した。


 まるで強力な力によって、無理矢理その動きを拘束されているかのようだった。


「助かった、リザ」


「おまかせ下さい」


 詠唱もなしに短時間の集中で、必用な魔術を必用な状態で発動させる。


 その正確度と精度は流石である。 


 魔術の拘束を受け無様な姿を晒す暴漢に、一切の遠慮なく渾身の拳打を叩き込み沈黙させた。 




「ふッ……ふっ、はははッ。やるじゃねぇか。エルフもどき。こいつぁ、面白くなってきた」


 レイドが笑みを湛えて、悠然と立ち上がるとおもむろに手を地へとかざす。


 すると地面から黒い影が出現した。まるで闇が染み出していくような、得体のしれない何かが広がっていく。


 黒い炎のように、地面から湧き上がる。すると徐々にその闇から、何かがせり出してくるのが見えた。


 レイドはそれを掴み引き抜く。それは黒く禍々しい、巨大な大剣であった。


 破壊の大剣(デストロイヤー) 魔剣 B級   魔術効果:破壊 増重 狂乱


 強力な魔力を宿した一振りの魔剣が姿を現した。


「もっと遊ぼうぜ。付き合ってくれるんだろ?」

 

「やれやれ、仕方あるまい」


 アルドラも収納から魔剣を取り出し、それに応じた。


 しかし、2人のその戦いが始まることは無かった。



 場内に突如冷たい風が吹き抜ける。


 外風が入ってきたのか。肌寒さを感じた者たちが、思わず入口の方へと視線を移す。


 正面の大扉が広く開け放たれ、そこから冷気を含んだ風が侵入しているようだ。


 ただの外気ではない。その冷気は徐々に強くなる。まさに真冬の吹雪を思わせる凍てつく風であった。


 誰もが違和感を感じ、不安を覚えた。場内を満たしていた争いは、凍り付いたように制止する。


 だが何人かの冒険者はその冷気の正体をすぐさま感じ取り、嗚咽にも似た恐怖の言葉を吐露していた。


「ぬう?」


 アルドラがその気配を感じると同時に、レイドの体が宙に浮いた。


「うグッ!!?」


 よく見れば首に縄が掛かり、首吊り状態となっている。


 いや、縄というよりも組紐だ。血のように赤い組紐。細い糸を何本もより合わせ、1本の丈夫な紐としているのだ。


 紐は天井に伸びる梁に掛けられ、その端は正面入口へと伸びていた。


 レイドの巨体が空中でもがき、暴れる。足をばたつかせ、必死に首を絞める紐の拘束を解こうと手を伸ばすが、きつく食い込んだ紐はなかなか外れない。


「なんじゃこれは」


 アルドラが飛び上がり、紐を斬りつけた。


 しかし紐はたわむだけで、切断することまでは叶わなかった。 



「そのようなナマクラでは、わらわの魔鞭は切れぬなぁ」


 正面の大扉から入ってきた3人の人影。


 黒いローブを目深く被り、その素性はわからない。認識阻害の装備か。それもかなり強力なものだ。


 何人かの冒険者は、その場に跪き身を屈している。彼らにとって3人はそういった存在なのだろう。


 愛奴の呪鎖(ラヴァーズコード) 神器 S級   魔術効果:苦痛 快楽 伸縮 束縛


 赤紐に魔眼を発動させると情報が手に入った。


お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ、評価よろしくお願いします(=゜ω゜)ノ

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