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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第147話 汐の風

 ゼストが金の柱を操作すると、黒球は音もなくゆっくりと降下した。


 門というのは、この黒球のことらしい。


 球体の部屋の一番底まで降りてくると、その動きは止まった。


「向こうの安全は確保されている筈だから心配するな。既に滞在組には連絡を入れてあるから、しばらく待てば迎えがくるだろう」


 詳しい話は現地で、ということだ。


「わかりました」


 先ずは俺から黒球に触れる。


 実体があるように見えて、影のようなものらしく触れた手がズブズブと沈んでいった。


 隣を見ると既にリザ、シアン、ミラさんも一緒に黒球に触れている。


「みんな一緒に行きましょう」


 並び立つリザが答えた。


「そうだな」


 俺たちは互いに顔を見合わせ、一斉に黒球へと潜り込んでいった。




>>>>>




 真っ暗な闇の中。


 何処が上か下かもわからない。


 まるで夜の海の中へと、沈んでいくような感覚。


 周囲に手をやって空間を探ってみるも、何も掴むことはない。


 探知スキルも役に立たない。


 ここは、何処なんだ。


 ちゃんと転移できたんだろうか。


 みんなは無事だろうか。


 何も見えない闇の中で、言い知れない恐怖が心のなかに入り込んでくる。


 もしも、このまま1人になってしまったら……一瞬そう考えると、グッと胸が締め付けられる思いがした。



 そんな不安がよぎる中、そっと俺の手を掴むものがいた。


 細くて柔らかい手だ。しっかりと握られていて力強い。


 不安な気持ちを拭い去ってくれる優しい手だった。




「……着いたかな」


 未だ周囲は闇に閉ざされているため、今自分が何処に立っているかさえわからない。


 だが、不思議とあの黒い空間を抜けたという感覚はあった。


 何処かに着いた。そんな気がする。


 今まで周囲に感じなかった人の気配。


 隣で寄り添うように立つのはリザだ。


「何も見えませんね。でもカビや埃の臭がします。地下でしょうか」


 直ぐ近くにシアンとミラさんもいるようだ。


「塩の匂いもします。たぶん海が近いと思います」


「にゃぁう」

 

 闇の中にネロの声が響く。


「皆無事のようですね。よかった」


 ミラさんの声は少し不安げだった。


「取り敢えず、明かりが必用だな」



 火魔術 灯火



 手元から生まれた火球が周囲を明るく照らす。


 取り敢えず5個くらい生み出して、適当な空間に配置した。


 魔物が直ぐ側にいる場合、自分の位置を知らせてしまうことになるため考えて使わなければ危険にもなる行為だが、この場所は安全が保たれているということなので大丈夫なのだろう。



 明かりが灯ると、周囲の様子が見えてきた。


 リザの言うとおりこの場所は地下のようで、高い天井に石の壁、石の柱が並ぶ遺跡のようだ。


 見たところベイルの遺跡にも何処と無く似ている。年代的にも同じくらいなのだろうか。ともあれ、相当古い時代なのは間違いなさそうだ。


 

 広範囲探知を展開して周囲の様子を探る。


 近くに魔物の気配はないようだ。


 同時に地形探知が、遺跡の形状をあぶり出していく。


「地上への道らしきものを見つけたぞ。取り敢えず行ってみよう」




 崩れた石材が転がる遺跡を慎重に進み、俺たちは外へと通じる扉を発見した。


 扉は古くかなり重いが、筋力強化があれば何とか押し開けることができた。


 アルドラがいれば楽なのだろうが、今は魔力を消耗して休ませてある。


 魔石を消費すれば呼び戻せるが、無闇に消耗するのもどうかということで保留とした。  



 扉を開けると、湿気を含んだ冷たい風が頬を撫でた。

 

 空には雲一つない青空。


 風に含まれる塩の香り。


 嗅いだことのある独特の生臭さが鼻に付く。


 シアンの言うとおり海が近いようだ。



 扉を開けて出たのは草原のような場所で、あたり一体を短い草が覆っている。

 

 ザッハカークで見るような大きな木は無く、周辺で目につくのは巨岩ばかりだった。


「ここがレヴィア諸島ですか」


「うわぁ……」


「にゃぅ」


「何か変な匂いがしますね」 


 俺も久しぶりだが、彼女たちは初めての遠出だものな、色々と興味も湧くことだろう。



 広範囲探知で周囲の様子を確認。


 アルドラは休ませているし、皆魔力を消耗しているので出来れば安全な場所で休息したい所だ。


 探知で見た所この場所は小さな島のほぼ中央にあり、島はなだらかな平の島で他にこれといって何もない島のようだ。


 地形探知で見ることで盗賊の地図にも記載された。


 魔物もいるようだが、あまり強そうなのはいないな。


 まぁ、後で確認しておこう。



 ゼストの話では「海の側に天幕を貼るのは止めておけ」との事だったので、どこか海から離れた所に適当に貼って休憩にしようと思う。


 まぁ、その前に――


「島を少し見て回るか」


「はい」


 そうして歩き出した俺たちの背後から、突如ズシリと重い何かが動く気配がした。


 魔力探知では魔物の気配はなかった。


 何処かに潜んでいたのか?



 振り返ると地面が隆起し、大量の土が寄り集まり、何かの形をなそうとしている所であった。



 アースゴーレム 魔導兵Lv42

 弱点 風  耐性 土雷闇

 スキル 創造


 

 そこに現れたのは、4メートルを超える土の巨人だった。   

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