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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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リア・ローズ4

山に入る前にふもとで一泊するということだった。夜の山は危険度が跳ね上がるためである。夜というのは魔物が活発化し、どこであろうと危険度が上がることには変わりはない。


次の日、私たちは山を登り始める。山の中を進むということもできるがそれは荷物の少ない冒険者などができることだ。今回のような馬車を使った移動の場合は、道が一つに限られる。


通る道がわかっているということは盗賊からはほぼ確実に狙われるということになる。


「お前ら、もうそろそろ盗賊が出るエリアだ。気をつけろ。」


いまは馬車の中ではなく、外を歩いている。馬も人間の歩く速度に合わせてゆっくりと足を進めている。これだと盗賊に狙われやすくなると思うかもしれないが、常に外で警戒できる分、奇襲や罠などに気づきやすいということらしい。


「ハーマイド卿、ここは辛抱お願いします。」

ユウトさんがそういう。


「……しかたあるまい。」

てっきり早く進め、というようなことをいうのかと思っていたけど、そうではないらしい。


「とまれ。」

しばらく進むとユウトさんが声を上げる。魔力的なものは何も感じないけど、何かあるのだろうか。


「罠だな。」


でこぼこした地面化と思っていたが、ユウトさんが少しけってみるとべこっと地面がへこんだ。

……そのまま行っていたら、馬車がそこに埋まっていたかもしれない。気づけなかった自分がふがいなく思えてくる。


「よく見抜いたな。はまってくれれば簡単だったんだがな。」


そういって盗賊と思われる人たちがぞろぞろと出てくる。だいたい十人くらいだろうか。


「すまないが通してくれないか?」

「通すと思うか?」


リーダーと思われる人の後ろから魔力反応があった。魔法師も数人いるようだ。


「ファイア……」

「バニッシュルーム」


相手の魔法にかぶせるように魔力を拡散させる魔方陣を展開させる。相手の魔法は空中で分散された。


「な、なんだこれは……。」

魔力を使えるものはうろたえているようだ。ちなみにハルさんのエミナさんも魔法が使えなくなっている 。


「リアちゃん、私たちの魔法が使えないんだけど!」

「問題ありません。ここは私が対処します。」


この程度の魔力拡散率では私は自由に魔法を使うことができる。しかしその必要はない。


魔物は常に瘴気を放っている、しかしそれは微々たるものでほんの数分浴びたくらいではどうってことない。しかしそれが濃ければ数秒浴びただけでも、人の生命力を奪うことが可能だ。


瘴気を放っているのは私も例外ではない。


私は剣を構える。


「華流・黒花かんざし」


黒い霧をまといながら、リーダーと思われる人間に切りかかる。


ギィンという音とともに、私の剣が受け止められる。


「ほう、子供にしてはなかなかつよ……。」


黒い霧に触れた瞬間に、徐々に言葉を失い地面に倒れた。剣先が相手の剣に触れた瞬間に感じたのだが、この剣には聖力が付与されていたようだ。だから一撃で壊れなかったのか。しかし、私の瘴気に触れるとその能力も解けて消えてしまった。


「おまえ!何をした!」

他の盗賊たちも標的を私に定め、襲い掛かってくる。


「ライトニング」


私がそう唱えると指先から電撃が飛んでいく。もちろん相手には魔法による防御ができないのでそのまま貫通する。運よくライトニングに当たらなかったものも、電撃にまとわりついている黒い瘴気によってどんどん倒れていく。私の魔法は広範囲攻撃となる。


「お、おい、やばいぞ。お頭もやられちまった!」

「弱音を吐くな、たかがガキ一匹だ……」


そのような声も聞こえた気がしたが、次々に人が倒れていき、そして盗賊の中で立っているものは誰もいなくなった。


「剣一振りと、魔法一発かよ……。」


ユウトさんがそういいながら近づいてくる。


「リアちゃんすごい……。」


グルンレイド領の中ではそんなにすごいことでもないのだが、外の世界は違うらしい。


「やはり魔物の力を使うのか。」

ハーヴェスト卿がそういう。


「申しわけ……」

「リアはお前を守るためにこの力をつかったんだぜ?」


私が魔物の力を使ったことを謝ろうとしたときに、ユウトさんがそういう。ため口……。


「……私は悪いとは言っていない。」

そういって馬車の中に戻っていった。


「ありがとうございます。私のために……。」

「いいってことよ、それにリアのことを嫌っているわけでもなさそうだったぜ?」


そうして盗賊の出る道を抜けた。


あれっきり盗賊が出てくることはなかった。情報共有でもしていて自分たちより強いものたちには手を出さないようにでもしているのだろうか。


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