リア・ローズ3
王都を出て平野を馬車が走っていた時に、予想通り弱い魔物に襲われた。三体のゴブリンだ。
馬が止まり私たちは馬車から降りる。
「俺たちはあの二体のゴブリンを相手する。お嬢ちゃんはあっちのゴブリンをやってくれ。」
剣士の男の人は少し心配そうな顔をしていたけど、ゴブリンごときで心配されるようなことは何一つない。
私はそのゴブリンの周囲の魔力密度を数百倍に上げる。自身より数百倍以上の魔力密度の中では、魔力酔いを起こしてしまう。その場に立っていることができず、ほとんどの場合気絶してしまう。今回も例外ではなく、ゴブリンはすぐに気絶してしまった。
「何をしたんだ!」
三人は驚いた顔でこちらを見る。
「少し魔力密度を上げただけです。」
ぽかんという擬音が似合いそうな表情をしていた。しかしまだ残りのゴブリンがいる。私が倒してしまおうかと思ったが、この人たちの実力を見てみたいと思ったので、手を出さないことにする。
「話はあとだ、まずはこいつらを倒す!」
男の人がそういうと残り二人が返事をする。
「ヒールルーム」
「スキルアップ」
男の人の周りには常時回復する空間が展開された。傷を受けてから展開するよりも、傷を受ける前に展開するほうがダメージの量や時間を短縮できる。さらにスキルアップで男の人の速度と攻撃力を上げる。
「バルザ流・断頭!」
一撃で二体のゴブリンを吹き飛ばす。もしかして私が思っているよりも強い冒険者なのかもしれない。確かに極東への護衛を引き受ける冒険者が弱いはずがない。
再び馬車は動き始めた。さすがに平原に出てくるのは普通の魔物であり、襲撃を受けることも珍しくない。ハーマイド卿も特に慌てる様子もなく馬車にいたようだ。
「嬢ちゃん、えっと……。」
「リアちゃんでしょ!」
そういって女の人に怒られる。
「すまんな、あまり名前を覚えるのは得意じゃなくて。」
「問題ありません。」
そういえば、このパーティの人たちの名前を聞いていない。冒険者は名乗らないものなのだろうか。
「あの、お名前を教えていただけませんか?」
「あぁ悪い悪い、グルンレイドのメイドの前に興奮しすぎて自己紹介を忘れちまってた。」
冒険者は名乗らないというわけではなさそうだ。
「俺の名はユウト・カンザキだ。」
剣士の男の人がそういう。
「私はハル。カシワシロだよ。よろしくね。」
攻撃魔法師の女の人が言う。
「私はエミナ・ナナクサよ。よろしくね、リアちゃん」
最後に回復魔法師の女の人が言う。
ユウト、ハル、エミナ……ここら辺ではあまり聞かない名だ。
「珍しいお名前ですね。」
「そうだね。よく言われるよ。」
「それでよリア、さっきはどんな魔法を使ったんだ?」
うずうずしていたユウトさんが我慢できずに聞いてきた。
「あれは魔法ではありません。単純に魔力密度を上げて、相手に強制的に魔力酔いを起こさせただけです。」
「それって、魔法師が魔法を使えない人に良くやる攻撃方法だよね?」
確かにそのとおりだ。魔法を使えない人の魔力密度はほぼゼロに等しい。ということはある程度の魔法師なら魔力酔いを起こすことが可能だ。
「おいまて、お前ら。魔物の魔力密度を知っているか?」
魔物はどんなに弱いものでも魔力密度が高い。なぜならその体は魔力によって形成されているからだ。
「リアちゃんほどの強さがあっても、まだ華持ちじゃないの?」
エミナさんが言う。
「そうですね。グルンレイド領には私より強い人はたくさんいます。」
「……そこには近づかないほうがよさそうね。」
「いや、俺は人生で一回は見てみたいけどな。華持ちのメイド。」
「君はかわいい女の子が見たいだけじゃないの?」
そんな感じでパーティ内の会話が弾む。私もこんな風に外の人と話すことがなかったのですごく新鮮だった。




