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ドラゴン同士の戦い



 ジェイはゴローを気にかけつつも、金色のドラゴンがどこにいるかを確認した。案の定あのドラゴンは落下しているジェイを捕まえようと脚を向けたままこちらに飛んできている。

 ジェイは魔法を放ち、その脚をくっ付けた。

 それからゴローとは少し離れたところに着地する。

「ゴロー、あっちへ行け!来るな!」

 ジェイが叫ぶと、ゴローがジェイの方へ来てしまった。

≪だから、来るなってば!≫


「大丈夫ですか。背中から血が」

 ゴローの声は今まで聞いたことがないほどに強張っていた。

「俺は大丈夫だから、お前は逃げろ。あのドラゴンはヤバい」

「ダメです。ジェイ、私の背中に乗ってください」

 ゴローはジェイを助けに来てくれた。それでもジェイはゴローに乗ろうとはしなかった。金色のドラゴンを誘うように、ゴローから離れて行こうと向こうへ走り出そうとした。

「ジェイ、大丈夫です。火を吐いたりしませんから」

 ジェイを助けるためだけに来てくれたのだ。だけど、火の魔法は使わないという。


 今までのような相手ではない。ジェイが縄をかけるのに手こずるほどに素早く動く、手ごわい相手だ。そんな恐ろしいドラゴン相手に火の魔法を使わないと決意している。

「わかったけどっ、あのドラゴンはダメだ!あっち行け」

 ゴローは魔法を使わない。それがここでどんなに危険かをジェイは感じ取っていた。ゴローがジェイを助けに来てくれたように、ジェイもゴローを危ない目にあわせたくないのだ。

 あのドラゴンは力も強かった。


 ゴローの方を向いてゴローと話していると、あのドラゴンに放った魔法が解けてしまいそうになる。あのドラゴンだって必死にその口に巻かれた縄を引きちぎってやろうとしているのだ。その力の強さに、気を抜いてゴローの方を向いていれば、せっかくの魔法が台無しになってしまう。


 ジェイは金色のドラゴンに向き直ると、そちらに向かって走っていった。

「ジェイっ」

 待ってましたとばかりに金色のドラゴンはジェイを掴みにかかった。

 ジェイは縄を投げることもできずに、その脚を避けた。その拍子にドラゴンはそのムヴュを持つ小さな人間を翼で叩いた。

「ぐあああぁっ」

 硬い翼に頭から思いっきり叩かれて、ジェイは地面を砂煙をたてて転がった。

「ジェイ!」

 まるで物のように転がり蹲るジェイを助けようと、ゴローが飛んだ。そして今にもジェイを掴もうと襲い掛かる金色のドラゴンに体当たりをした。

「ゴっ・・・くるなっ」


― グルルゥー ―


 金色のドラゴンはスイと瞳を細めると、ゆっくりとゴローに向き直った。それだけで身が凍るほどの迫力だった。

 俺の獲物を横取りするドラゴンだと思われたのだろう。口を塞がれながらもその口からブスブスと煙を吐き、金色のドラゴンはゴローに攻撃を仕掛けた。


 脚をくっつけたジェイの魔法は解けて、その前脚でゴローを切り裂こうと爪を光らせている。

 激しい翼の音を響かせて、2匹のドラゴンが空中戦を繰り広げた。

 高速で飛びこむように相手の懐に切りかかるドラゴンたち。その左前脚を傷つけてしまえば、ゴローは死んでしまう。

「やめろっ、ゴロー逃げろ!」

 ジェイが叫んでも、ドラゴンたちにはその声は届いていなかった。


 ゴローは左前脚を庇うようにして、金色のドラゴンの顔や翼に向けて自分のカギ爪を振り回した。しかし、左前脚を庇っているために、いまいち相手に届いていない。

 それどころか、空中でドラゴンたちが交錯するたびに、ゴローは身体のあちこちを切り裂かれていた。

 黒い血が降っている。

「やめっ、ゴロー! やめろー!」

 一方的にゴローがやられているように見える。口を塞がれている不利を感じさせず、むしろ金色のドラゴンの方がどう見ても強かった。


 だんだんと金色のドラゴンの爪でえぐられるゴローは、それでもジェイを助けようとしているのだろう。金色のドラゴンに、下にいるジェイを見る余裕を与えないほどに食らいついていた。

 ジェイは最後の縄を投げようとした。しかし、2匹のドラゴンのあまりの激しさにそれもできなかった。


 このままではゴローがやられてしまう。

 ジェイはすっくと立つと、ゴローを助けるために魔法の準備をした。縄を投げるのではなく、ゴローのカギ爪が、金色のドラゴンの左前脚にくっつくための魔法だ。


 とはいえ両者の力はジェイの魔法でも手におえないほど強い。ただ魔術詠唱(まじない)を発しても彼らの力に押し返されてしまうだろう。だから、そうならないように、ゴローが金色のドラゴンを切り裂こうと手を出す時を待った。そうすれば、その力を利用してジェイの魔法の力を底上げできるからだ。

 2匹が交錯するその一瞬でそれは決まる。


 今、2匹がお互いの翼をガツとひっかけて、そして飛び去った。そして旋回してすぐに戻ってくる。すごい勢いだ。風が唸り、地上の砂がドラゴンたちの翼の勢いで巻き上げられている。

 そして2匹が両側から交錯した時に、ジェイは魔法を発した。


― ガツ! バササササ! ―


 2匹のドラゴンがぶつかり合い翼が絡み合う音がした。

「ゴロー!」

 ゴローのカギ爪は、金色のドラゴンの左前腕を切り裂いていた。ジェイにはそれが見えた。

 金色のドラゴンから黒い血が噴き出している。


 そして、ジェイの視界からゴローの姿が消えた。

「ゴロ―――!」

 ドラゴンが落ちた音とジェイの叫び声が響いた。




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