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かつて英雄と呼ばれた男は  作者: 水無月 霊華
村での生活
7/23

呪い

 見慣れた部屋で目覚めた俺に、朝日が降り注ぐ。神とか言う青年の元から俺は帰って来たんだ。この部屋にいると俺はそう実感する。


 そうして俺が密かに喜びを噛み締めていると、突然何の前触れもなく部屋の扉が開いた。


「「失礼しまーす。」」


 そう言って部屋に入ってきたのは、俺の双子の弟と妹のレオンとエミリだった。


「「あ〜!(お)兄ちゃんが起きてる〜!」」


 二人は俺が起きている事に気づくと、駆け寄ってきた。


「二人共どうしたんだ?」

「えっとね。私達ね。お兄ちゃんのお世話しにきたの!お兄ちゃん一週間も眠ったままだったんだよ?心配したんだよ?」


えっ!?マジか。俺って一週間も眠ってたのか。あの自称神の空間って時間軸がこちらと違うのか?


「………そうか。二人共心配かけてごめんな。」

「うんうん。いいの。私もレオンもお兄ちゃんのお世話できて嬉しかったから。ねっ!レオン。」

「そうだぞ。兄ちゃん。あと、兄ちゃんは強いけど、人間なんだから体は大事にしろよな。」

「ああ。そうだね。そのとおりだ。」


 俺は弟達からの気遣いの言葉に、自然と笑顔を浮かべていた。

 自称神の元であんな話を聞かされたせいでやさぐれていた心も癒やされていくのが分かる。

 やはり弟達は俺の癒やしだ。


「お兄ちゃん!お母さん達呼んで来るね!ちょっと待ってて!」

 

 俺が密かに二人から癒やしを貰っていると、エミリがそう言って部屋を飛び出して行った。


「あ!エミリ!待て!」


 エミリを引き止めようとしたのか、同じようにレオンも部屋を出て行ってしまった。

 俺は突然の事に、とっさに反応できず、二人を見送るしかなかったのだった。



✽✽✽



「インシオ。貴方が十二歳になったら、ガルム帝国へ行きましょう。」 


 セイン母さんは部屋に入ってくるなり、エミリオ父さんやレオン達を追い出し、唐突にそう告げた。


「え?帝国?」


 セイン母さんの突然の発言に戸惑いながらも、俺はそう聞き返した。


「そうです。帝国です。」

「……何で?」

「帝国で、貴方に、いいえ、貴方達兄妹に、すべき事があるからです。」

「俺達兄妹に?」


 どうやら帝国行きは俺だけの問題ではないらしい。

 弟達にも関係していると言われれば、俺は大人しく従うしかなくなる。


「セイン母さん。レオン達も関係しているなら、俺は何も言わないよ。でも、何の目的で行くのかぐらいは教えてくれないか?」

「ええ。もちろんです。それに、目的は元々伝えるつもりでしたから。」


 そう言って、セイン母さんが話しだした内容は、俺に驚きを与えるものだった。



 話の内容を要約するとこうだ。



 今の時代には、生まれた子供は一度必ず教会の司祭様に見てもらうという習慣があるらしい。それは俺達のような辺境の村で生まれた子供にも当てはまる。

 事実、こんな小さな村にも教会が立っていて、司祭様もいる。

 俺も生まれてすぐの頃、教会ヘと行ったらしく、そこで俺にある呪いがかかっていることが判明した。

 その呪いは、一種の拘束呪と呼ばれるもので、呪いをかけた者の精液を一滴でも摂取すると、その者から二度と離れることが出来なくなってしまうという恐ろしいものだった。

 しかも、呪いをかけたのは一人ではなく、簡単に数えただけでも、十人はいるとか。

 あと、この呪いは、効果が強過ぎて、解除しようとしても出来なかったので、今も俺の体に残っているらしい。

 

 まさに恐怖の最骨頂だ。   

 いくら何でも有り得ない。俺はそう自分に言い聞かせても、アイツらの仕業としか思えなかった。

 

「インシオ?大丈夫?」


 話を聞いて顔を青くさせた俺を、セイン母さんが心配したように見ている。

 俺ははっとして顔を上げると、セイン母さんを安心させるために微笑んだ。


「大丈夫だよ。少し驚いただけだから。ねぇ、それよりもさ、呪い?だっけ。それを解くために帝国へ行くの?」

「ええ。そうですよ。でも、今回はそれだけではなく、インシオ達の身分証明書を作ってもらう為にも行くんです。今の内に作ってもらっていた方が後々色々と便利ですからね。」


 そうなのか。なら、俺も別に文句はない。帝国には何か嫌な予感がするから行きたくないけど、呪いとやらを解くためなら仕方ないしな。

 俺はセイン母さんの説明に頷くと、いつ出発するのかを聞いた。


「出発は誕生日の翌日の朝にしようと思っています。インシオもそれまでには準備を終わらせていて下さいね。」

「うん。分かった。」


 セイン母さんは、俺が頷いたのを見ると、「今日はもう休みなさい。」と言って部屋を出ていった。


 俺はその言葉に素直に従って、布団に寝転がると、直ぐに眠りについたのだった。




 

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