神との対面と真実
「…………ん…。」
俺は眩しさを感じて目を開けた。
「…ここ、どこだ?」
目覚めた俺がいたのは、ただ真っ白な空間だった。天井も壁も真っ白で、汚れ一つ見あたらない。ドアもなければ、窓もない。
そんな空間に、俺は呆然と座り込んでいた。
(俺はさっきまで森にいたはずだ。なのに何でこんなところにいるんだ?原因はやはりあの上級魔法か?ただ死にたくない一心で使ったが、やはり駄目だったのか?駄目だったとしたら俺は死んだのか?狼達に食い殺された?それとも、魔力の使い過ぎ?出来れば後者がいいな。狼に食われて死ぬなんて不名誉すぎる。でも、死んだとしたら何で俺はこんな不思議な所にいるんだ?もしかしてこの何もない空間が天国なのか?こんな所が?)
『こんな所で悪かったな。』
「うわっ!」
俺が内心で色々と考えていると、突然目の前の何もなかった場所に机と椅子が現れ、それに続くように一人の青年が姿を現した。
「あ、貴方は誰ですか?」
『ふん!その話し方はやめろ。俺はお前の本性を知っている。今更取り繕っても遅い。』
俺の質問に青年は上から目線でそう言ってきた。
(何だこいつ。偉そうにして。質問にも答えてないし。年上は敬えって習わなかったのか?)
『お前に言われたくない。それに俺はお前よりマシだと思うがな?面は優等生、裏では口の悪いがさつな男、のお前よりな。』
(っ、何でこいつがそんなこと知ってんだよ!記憶を思い出してから一番必死に隠してたことを!何でこんな会ったこともないやつが!)
『そりゃあ知ってるさ。俺はお前が生まれた時からずっと近くで見てきたからな。お前のことで知らないことなぞない。』
(なんかストーカーみたいだ。気持ち悪い。・・・・というか、今気づいたが、何でこいつは俺の思っている事の答えを返してこれるんだ?俺は一度も話していないのに。)
『ははっ!本当に今更だな?俺は神だからな。心の声ぐらい聞けるんだよ。』
青年は遂に頭がおかしくなったのか、いきなり意味のわからない事を言い出した。
(こいつ、イカれたか?)
『………イカれたとは失礼なやつだな!この俺に向かって!』
青年はそう反論してきた。
このままじゃ話が進まないと思った俺は、取り敢えず神だとかいう言葉は信じることにした。
「で、神だから俺の心が読めるんだよな?じゃあ、俺は喋らなくていいのか?」
『ああ、そうだ。やっと信じたか。』
(ああ、信じてやるよ。で、お前が俺をここに呼んだのか?なら早く要件を言え。)
俺はこいつと会話すのが面倒になってきたので、心の中で話すことにした。それにこいつの言ってることが本当なら、問題ないだろうし。
『お前、さっきと態度が違いすぎないか?』
(そうでもないだろ。あと、俺のストーカーならこの程度でうろたえてちゃ駄目だと思うが。)
『だーかーら!ストーカーじゃねぇって!俺はこの世界の神なの!だからお前のことも、お前の前世の事も何もかもを知ってるの!分かったか!?』
俺が青年をストーカー扱いすると、思った以上に怒り出した。結構びっくりした。
(この程度で怒るなんて、この世界の神って心が狭いのか?)
『お前、本当に失礼なやつだな。まぁ、いい。今回は許してやる。時間もなくなってきたから要件は手短に話すぞ。いいな?』
(………ああ。)
『そうか。』
自称神の青年は、俺が素直に頷いたのが余程嬉しかったのか、何度も「うん。うん。」と首を縦に振った末、要件とやらを話しだした。
『まず、今日お前をここに呼んだのは、お前の転生について伝えるためだ。今回は完全な事故だった。お前の魂は、今から三千年前に一度目の死を迎えた。それから今まで、お前はこの世界ではない他の世界で、七度の転生をし、そして、八度目の転生で本当は成仏するはずだったのだ。だが、それは出来なかった。お前の魂の徳が高すぎたのだ。徳というのはな、七度の転生の中で人を救った場合に溜まっていく、点数のようなものだ。で、それがお前は高すぎた。だから成仏させる訳にはいかず、一度目の世界でもう一度人生を謳歌させることにしたのだ。ただ、そこでまたもや問題が生じた。この世界、俺が眠っている間に転生者達が増殖してたんだ。俺はお前の一度目の人生を知っている。お前が男達から愛され、それから逃げた事も。逃げた結果、男達がヤンデレ化した事も。だが、それに気づいたのは、お前を転生させた後だった。だから俺は、お前が前世を思い出す事がないように、記憶を封じた。』
俺が思っていた以上にやばい話だった。もしこれが本当なら、俺は良いことをしたのに不幸になるということか?最悪だ。
というかこいつ、今寝てたらって言ったよな。寝てたら増えてたってどのくらい寝てたんだよ。
俺は疑問に思い、自称神の青年に聞いてみた。
『寝てた時間か?大体二千年位だな。だから俺も最近起きたんだよ。』
俺は無言で自称神青年を殴った。つもりだった。たが、俺の拳は空振りした。
自称神青年が瞬間移動で避けたのだ。
『危ねえなー。当たりそうになったじゃねぇか。』
(知るか。…はぁ、もういい。話の続きを。)
俺は色々と諦めてため息をついた。
『そうか?じゃあ、続きを話すぞ?』
(ああ。)
『えっと、どこまで話したかな。………あー、俺が記憶を封じたにも関わらず、お前は前世を思い出した。それにより、全てに変化が生じてしまったんだ。転生者達はお前が転生した事に気づいてしまった。まだ誰かは分かっていないみたいだが、いつかはバレるだろう。』
(いつかはバレるって。嫌だな。俺はどうすればいいんだ?)
嘆く俺に対して、自称神青年は一つの提案をしてきた。
『俺から一つ提案がある。』
(提案?)
『そう。提案だ。他の転生者はお前を血眼になって探している。だが、今のままであれば見つけることは出来ないことも分かっている。そこでだ、十五歳。お前が十五歳の時、大陸全土に皇帝から勅命が出されるはずだ。《大陸の十歳以上の魔法を使える子供を、全員魔法学院へ入学させよ。》とな。』
(魔法学院?それって。)
『そう。これは、ダンテ。お前を探すための勅命だ。そしておそらく、お前とお前の双子の兄妹は、第一高度魔法学院へ行くことになる。』
(第一高度魔法学院?俺達が?何故?)
俺は理由が本当に分からず、首をかしげた。
自称神はそれに対してこう答えた。
『そんなの理由は簡単だ。お前も、お前の兄妹達も、魔力が多く、頭がいいからだ。それに加えて、君と妹は、光魔法の使い手だしな。』
(エミリが光魔法の使い手!?)
『そうだ。』
自称神青年は、俺へ新事実を投下しておきながら何を当たり前な事をと言うふうに頷いている。
(…で?さっきの提案っていうのは?)
俺は怒りを抑えながら聞いた。
『ああ。そうだったな。言ってなかったな。提案の内容は簡単だ。お前が俺と契約すること。これだけだ。』
(…………………は?)
俺は思いもよらない事を言われて驚きで固まった。
契約?俺が?こいつと??どうやって???
『ははっ!理解できてないようだな。いいか?契約ってのはな、神が気に入った人間を助ける為にする約束の様なものだ。お前が俺を呼ぶだけで俺はお前を助けに行く。どうだ?神の力が手に入るんだ。得だろ?』
神の助けが貰える、か。確かにそれは凄いことだ。だが。
(…………………いらねぇな!)
『………は?』
(だからいらねぇって言ってんだよ!何が契約だ!そんなのバレたらいらぬ注目浴びるだけだろうが!それにな!俺は自分の身は自分で守れる!俺はそこまで弱くねぇんだよ!そんな下らない話なら俺を返せ!今すぐに!)
『ま、待て!今のは俺が悪かった!だからもう一度考え直してくれ!』
俺の怒りに自称神青年は、突然低姿勢になって謝ってきた。が、その程度で収まる怒りじゃねぇ!お前は俺の逆輪に触れたんだからな!
(うるせぇ!謝罪なんていらねぇんだよ!早くもとの世界に返せ!)
『わ、分かった。今日は返す。だが!また呼ぶからな!絶対に!』
自称神青年が返すと言った瞬間に、俺は光に包まれて、次第に意識が薄れていった。
最後に聞こえた事は気のせいだと思いたい。




