グルメレポート大失敗 その後
皿に熱々のお肉が盛られて、半魚人のテーブルにやってきて、スタッフが切り分けるところまで良かったのだが、ステーキソースをたっぷりからませたお肉を、口に放り込んだとたん、半魚人は叫び声を上げて肉を噴き出した。
「アギャクピョケー!」
どうやら、刺激物のたくさん入ったステーキソースが、さっきの火傷にしみてしまったようだ。半魚人は炊事場に乱入すると、水を張った洗い場の中に顔をつけ、水を飲み干した。
しかし、水だと思っていたが、洗い桶の中の液体は、人肌より熱めのお湯。
洗い桶の中には洗剤も入っていたらしく、半魚人は、口からカニのごとく泡を噴き出し、調理場を駆け回ったので、レストランはパニックになってしまい。スタッフ一同、店側に謝罪をする羽目になってしまった。
もちろん、撮影は没になり、半魚人のグルメレポートという企画は二度と日の目を見ることもなかった。哀れ半魚人は、また仕事探しに、ハロワに通わなくてはならなくなった。
それでもまだ未練があるのか、撮影スタッフを見かけるとテレパシーで打診をする。
「半魚人さん。グルメレポーターの話はもうありません。永久凍結です」
女性スタッフがきつめに主張すると、半魚人は首をうなだれて、以後この話題は語ることもなくなった。
そして、分厚いステーキへの渇望は、ますます彼の脳を占領するのであった。
最初は物珍しさから、半魚人の動向に注目していた視聴者も、飽きがきたのか、それ程視聴率も稼げなくなって、いつしか撮影クルーも撮影に来なくなった。
定刻になると、半魚人は水辺から上半身をせり出して、ワゴン車の来るのを待ちわびていたが、やがてスタッフが来ないことを学習すると、車窓から見た景色を頼りに徒歩でハローワークへ通うのであった。
慣れないアスファルトの道の上を、水かきのついた足でぺたぺたと足を鳴らしながら1時間もかけてハローワークへ通う。顔見知りの職員が、ねぎらうような笑顔で出迎えてくれる。半魚人はテレパシーで礼をいう。
半魚人は、もう一度、口中の火傷が治ったら、ステーキを堪能する気でいたのだが、そのためにはとにかくお金を稼がなければならなかった。しかし、普通のビジネススキルがまったくない半魚人に向いている仕事は、なかなか見つからなかった。
職員は、半魚人に資格が必要なく、彼の特性を生かせそうな仕事を探していた。それは主に水辺での仕事が中心になるが、求人はなかなか見つからなかった。
◆◇◆◇
今、半魚人は、各地の湖沼で、外来種の駆除をしている。
ブラックバスやブルーギルを捕まえて魚籠に入れる。池の水を抜いたり、網でとることに比べたら非効率だが、人間が気づかない、穴場のチェックはお手の物だ。給金は微々たるものだが、お役に立てるということが、半魚人の心に利他心という喜びを目覚めさせた。
「魚のあんちゃん。精が出るね」
船の船長が、半魚人に声をかける。
「水の中なら疲れ知らずだ」半魚人はテレパシーで答える。
ステーキも気になるが、自分の働きで人様のお役に立てることが、半魚人の勤労意欲をかき立て、仕事の喜びへとつながった。
今日も半魚人は、どこかの池で、外来種駆除にいそしんでいる。




