第12話 そして、魔法の『師匠』
「…なんなんすか?なんでなんすか?
俺が朝が弱いって知ってて、何の嫌がらせなんっすか?ありえないっす!」
次の日の朝、『師匠』が連れてきたのは、見事な黒髪を長く伸ばした、背の高いキレイな男の人。
少し不機嫌そうに呟いている。
「『師匠』、この方が?」
「ああ、口は悪いが、魔法を人に教えるのは上手なのでねえ」
「…あんた、感覚で魔法を教えるもんな。あんたは魔法を教えない方がいいって言ったのは俺だもんな」
軽口に『師匠』の空気がぴりぴりしだす。
「…あんまり囀ると…舌を抜くよ」
「こわっ!!おお、こわ~!!」
『師匠』の怖い雰囲気をものともせず、軽口を続ける。
僕の視線に気づいて、にっこり笑う。
「あ!俺は…『影』って呼んでくれ。よろしく、少年?」
「『影』…さん?テインです。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
「おお!!なんて礼儀正しい子!!」
「当たり前だよねえ。私の教え子だ」
『影』は噴き出す。
「あんたの親馬鹿発言!!うける!!!」
げらげら笑う。
ああ、『師匠』が切れそうなくらい怖い。
なんだか、『師匠』から黒い不穏な空気が流れている。
『影』さんは、気付かないの?それとも気付いていて、わざと?
でも、僕は嬉しい。
だって、『師匠』が僕の事、まるで自慢するみたいに言ってくれたのが、嬉しい!
「じゃ、少年に魔法を教えるよ」
そう言って『影』さんは、腰につけていた小さなカバンから椅子を二つ取り出す。
不思議カバン(『師匠』は帽子だけど)再びだ!!
椅子は木でできた小さいものだ。
座るように促される。
「魔法に系統があるのは知ってる?」
系統?属性じゃなくて?
「はい。火、水、風、土、光、闇、ですよね?」
「はい!よくできました!」
『影』さんはにっこり笑う。
「君の系統を調べたいところだけど…」
『影』さんはちらりと『師匠』を見る。
「…ああ、構わないよぉ。こちらの流儀にはめる必要はない」
「では、まず系統を調べよう!得意なところを伸ばすところから始める」
系統?なに?
首を傾げていると、『影』さんは不思議カバンに手を突っ込んで、小さな水晶を取り出す。
「はい!これで系統を調べるよ」
手渡される。なにこれ?
「ぐっと握って」
あれ?光りだした。
「う~ん、君は…あれ?これは、光っすかね?」
『影』さんは首を傾げる。
「なんだね??」
「…これは」
『影』さんは、考え込んでしまう。
「おい!なんだって言うんだね?」
「いや…。いいんすか?
この子きっと…」
言い淀む『影』さん。
「構わないさ」
きっぱり『師匠』は言い切る。
なんだろう?
「わかったっす。ただ、光は特殊すぎて、俺じゃ教えられないので、それなりの時期が来たら、神皇国に行くことを奨めるよ。
俺はあくまで、基礎の基礎のみ。
どう伸ばすかは、自分次第だよ」
真剣な『影』さんの様子に頷く。
「まずは、自分の中にある魔力を見つけるところから始める
魔力ってのは、そこら中にあるものだ。植物の中、動物の中、もちろん土や水、風や火、本当にどんなものにもその力は宿っている。
もちろん、自分の中にもね」
『影』さんは僕を指さす。
「さて、まずはそれを見つけよう!
眼をつぶって」
眼を閉じる。
「そのまま、自分の中に感覚…意識を集中させる…
身体の表面に何かの膜のようなものを感じたら、それが魔力だよ」
意識を自分の中に…
膜…
しばらく集中していたが、全くわからなかった。
僕に魔法なんて使えるのかな?
『影』さんは、初めてで、できるようになるやつなんていない。毎日、時間がある時に探してみろ。と言ってくれた。
「ただし!精霊は呼ばないこと!
制御もできないうちから、精霊に力を借りると、あとの反動が大きくなる。
それから…」
『影』さんは、不思議カバンから何冊かの本を取り出す。
「俺は毎日は来られないので、この本を読んで精霊と系統について勉強すること。
分からないことは、次に来た時に聞くこと。
それから、俺に教わっているときは、他の奴から魔法を教えてもらわないこと。
わかった?」
僕が頷くと『影』さんはにっこりと笑う。
「素直でよろしい!がんばろうな」
ぽんぽんと頭をなでてくる『影』さんは、お兄さんって感じの人だな。
そして『師匠』より師匠っぽい…
なんてことは、『師匠』が怖いので、絶対に言わないけど…
ちなみに、僕が魔力を見つけられたのは、それから6日後のことだった。
『影』さんが6日間来れなくて、一人で頑張ったけど、どうしても駄目だった。
『影』さんが、身体を流れる血液を想像して!って教えてくれたら、すぐに見つけられるようになった。
やっぱり、『師匠』より…とは言いません。




