67 落ち着かなかった!
その後葵にオシャレなカフェに連れ込まれてしまった百合は、そのまま全てを吐かされてしまった。
その結果、葵から放たれた言葉が…
「浮気ですね」
冷めた目で見つめながら冷ややかな言葉を浴びせられてしまう百合。流石に一瞬ヒヤッとしてしまうが、直後にしっかりと反論をする。
「いやだから許可は貰ってたよね!?」
「それはそうですけど、ここまで仲が良いのは聞いてないです」
今度は頬を膨らませて拗ねる葵。相変わらず感情が丸わかりで可愛らしいが、そんなことを言っている場合ではない。
葵が優しいだけで錯覚しがちだけど、普通に考えて恋人の前で別の女とのデートの話をするなんてただの修羅場でしかない。だから百合は神経をすり減らしながら言葉を選び、この流れを変えるために尽力する。
「まあ一応私たち幼馴染だから…?仲が良いのはどうしようもないというか…」
「…ずるいです。私だってもっと百合さんと仲良くなりたいのに」
いよいよ口まで尖らせ始めた。これは相当拗ねてるかもしれない。
まあだからといって解決策がそう簡単に浮かんでくるわけでもないので、とりあえず声をかけ続ける。
「それはこれから頑張れば良いんじゃない…!?私だってもっと葵と仲良くなりたいし…!」
「本当ですか…!?」
「もちろん!!葵のこともっと知りたいな!!」
「(やった…!)」
バレないように小さく拳を握っているが、全然丸見えだ。
普段は完璧美少女って感じなのにこういう抜けてるところあるんだよなこの子。まあそれが彼女の魅力の一つだからこれからもどんどんそういう一面を見せてほしいけど。
とまあそういう話は一旦置いておいて、このままの流れで話を変えることに専念しよう。
「じゃあ早速だけど一つ訊いてもいい?」
「何でしょう?♪」
「葵が好きな__」
「あれ、百合じゃん?」
「へ??」
そこで店の入り口の方から聞き覚えのある声が。目を向けると、そこで今だけは絶対に現れてほしくない人物が驚いた顔をしていた。
「あ、朝日奈さん…??」
「七瀬さんもいるじゃん。もしかして二人でお茶してた?」
「そ、それは…」
心花も状況を察してくれたのか、あまり踏み込んだ言葉はかけてこなかった。
しかしそれ以上に気になることが百合にはあって、それを彼女に問うた。
「それより何で心花がここに…?一人で来たの?」
「まぁね〜。今日新作が出たみたいなんだけど、どっかの幼馴染に断られちゃったからさぁ〜?」
「っ……」
そういえば今日の昼頃に「行きたいとこあるんだけど」とか言われたような…。何となく葵とのことは言わずに断ったけど、まさかこんなところで裏目に出るとは。流石に運命的すぎて衝撃を受けたが、それ以上にこの展開がまずいということに気づいてしまう。
「そういうことでしたら、朝日奈さんもご一緒にどうですか?」
「え、いいの?あたし邪魔じゃない?」
「いえいえ。前から朝日奈さんともじっくりお話ししてみたいと思っていましたので」
「マジ?じゃあお言葉に甘えよっかな〜♪」
葵の口車に乗せられた心花が隣に座ってくる。
(イヤなんでわざわざ隣に!?絶対わざとやってるでしょ!?)
目の前に妻、隣に愛人。こんなの修羅場以外の何モノでもないでしょ!?頼むから火に油を注ぐような行為はやめてくれ…!
という百合の焦りを見て面白がるのが心花である。彼女は葵にバレないように手を握ってくる。
「!!??」
「飲み物何にしますか?」
「紅茶にしよっかな〜」
「いいですね、紅茶。私もそろそろ飲み終わりそうなので同じものを頼みましょうか」
「お、良いね〜。百合も同じのにする?」
「へ__!?あ、うん!それにする…!」
心花は何もなかったかのように会話をしているが、百合の心はもうぐちゃぐちゃになってしまっている。
そして心花もそれを察したのか、手をにぎにぎして挑発してくる。
「百合、どうかした?♪なんか顔赤いけど?」
「いや、別に…。最近暑いからね…?」
「確かに最近暑いですね。そろそろ夏服にしましょうかね?」
「うわそれアリ!帰ったら出してみよ〜っと」
このまま何気ない会話が続けば良いのに。そう心から思った百合であったが、当然この三人が揃えば普通の話では終わらない。
ただ今は少しばかりの安息の時間を楽しむしかない。
(お願いだから手握るのやめて〜…っ!!)
安息なんて夢だったらしい。




