64 切替が早すぎた!
同じベッドに好きな人がいて止まらなくなってしまった心花が手を出しそうになった時、百合は反射的に彼女のことを拒絶してしまった。その事に絶望を覚えた心花は百合から離れて反省と自虐を始めたのだが、そんな反応は百合にとって不本意であった。
「嫌なんかじゃない…!!私は心花のことを拒絶したりしない…!!」
「でも…さっきは拒絶された気がするんだけど…?」
「それは…」
言葉にするのが難しいが、何とか自分の中の語彙を絞り出して彼女に伝える。
「そういうことは本当に付き合ってからにしたいから…かな…?お試しで付き合ってる子とそういう関係を持つのは不誠実だと思うし…」
どうせ付き合うなら大切にしたい。特に小さい頃から一緒にいてくれた心花なら尚更だ。
なんかこういう話葵の時もしたような気がする。まあそのことが百合が芯のあるブレない女の子だという証明になっているだろう。
そしてその百合の想いは少しずつ心花の心に届き、彼女が理解を示し始めてくる。
「そゆことか…。じゃあ正式に付き合い始めたらヤリ放題って事?」
「ん???」
なんか開き直るの早すぎない?流石にもう数分は引きずると思ってたんだけど。
まあこれがポジティブ魔王心花の良いところなんだけど、流石にここまでくると怖くなってくる。
というかヤリ放題って何?思考がピンクすぎない?返答に困るんですけど。
「どうなん?それ次第であたしのこれからの恋愛のモチベに関わるんだけど?」
「そんな事でモチベーション上げないでよ…」
「何だと!?性欲は恋愛において正義だろ!?」
「聞いた事ないんですけど!?」
とても強い思想をお持ちの心花に圧倒されてしまう。流石に理解が及ばなくて少し後退るのだが、それでも彼女は突き進んでくる。
「別いいじゃん?アンタの事エ○い目で見てても」
「よくはないでしょ…」
「じゃあ…嫌…??」
「………」
上目遣いで、少し悲しそうな目を向けてくる。
(くっ…それズルすぎるよ…!もぉ…!!)
割と単純な百合は、渋々首を横に振った。
「ううん…嫌ではないけど…」
「そう?じゃあこれからは堂々とエ○い目で見るね!」
「それはやめて!?せめて隠す努力をして!?」
何でこの子はこんなにオープンなんだ。普通こういう話は恥ずかしいものじゃないの?
いや、そんな常識が通用する相手ではない。その言葉は今までで十分に理解しているので、百合も早々と諦めてとりあえずこの話を終わらせることに注力した。
「というか普通にそんなことし始めたら別れるから」
「え!?なんで!?」
「いや普通そんなキモい人が彼女なんて嫌でしょ…」
「そんなぁ…。じゃあバレないようにするしかないかぁ…」
「是非そうして」
いや結局そういう目で見るのは変わらないのね。まあ最低限貸してくれるらしいからいいけど。
てかこれ完全にドアインザフェイス…。普通ならそういう目で見てくるのすら嫌がるべきだよね。でも百合は鈍感だからそんな事には気づかず、とにかく話を変えることだけを考えていた。
「あ、でも百合は普通に堂々とあたしのことエ○い目で見ていいからね?このおっぱいとかお尻とかも全部アンタのものだから」
わざわざ胸部を持ち上げたり尻を向けてきたりしてアピールしてくる。
流石に危機感が無さすぎる。いくら同性とはいえ、いつ狼になるかわからないんだぞ?
…いやそれは心花にとって本望か。完全にペースに乗せられてしまっている。
(〜〜!!落ち着け百合…!!我慢我慢…!!)
正直なところ軽く触ってみたくはあるけど、それをするとマジで始まってしまいそうだから我慢するしかない。必死に自分の欲望を抑え込み、何とか言葉を選んだ。
「ウン、ソダネ〜」
「興味無!!??そんなに無関心だと流石に悲しいんだけど!?」
「イヤイヤ、キョウミシンシンダヨ〜」
「言葉に気持ちがこもって無さすぎる!?一応あたしスタイル抜群だと思うんだけど!?普通興奮するだろ!!!」
その主張は相手が異性だった場合に適用されると思う。同性しかいないこの状況ではあまり意味を為さない。
「いや常識キモすぎでしょ」
「そこまで言うか!?こんだけアピールしておいて軽く触られすらしないのは恥ずかしくて死ぬぞ!?」
「じゃあちょっとだけ触っていい?」
「え、マジ?どうぞどうぞ〜♪」
「……」
本当に何なんだこの切り替えの速さは。感情の変化激しすぎて風邪引きそうになるんだけど。
いやまあちゃんとモノは触らせてもらいますけどね??
結局欲望に負ける百合である。
予告の通り本日から4、5日程度お休みさせていただきます。次回投稿までお待ちいただけると幸いです。




