45 とんでもない提案をしてしまった!
「で!!結局どうするの!?私のこと振るの!?それとも付き合うの!?どっち!?」
色々考えている最中、心花は頬を桃色に染めながら返答をせがんできた。
しかしそう簡単に解決できるような問題では無いため、百合は必死で頭を回転させた。
「そ、そんなこと言われても…私には葵がいるし…」
「まあそれはそうだけど…でもまだ付き合ってないんだよね!?まだあたしチャンスあるよね!?」
「そうなのかも…??」
いやさっき葵にどう告白するべきか考えてたところなんだけど。確かにまだ本当の意味で付き合ってはいないけど、二人は完全に両想いでほぼ恋人だから正直望み薄だ。
(一応傷つけたくは無いし…何とか穏便に解決させる方法は…)
小さい頃から一緒に過ごしてきた幼馴染の親友を失恋で泣かせるなんて心苦しすぎて立ち直れる自信がない。しかしだからと言って葵とのことを考えると告白を受け入れるわけにもいかなくて、とりあえず全神経を使って解決策を考えた。
その結果、百合が出した結論はこうだ。
「…あのさ、ちょっと提案があるんだけど」
「なに…?もしかして私もお試し期間と称してキープするつもり?」
「言い方…キープじゃないって!」
「まあ何でもいいけど。でもお試し期間を否定しないってことはそういうことなんでしょ?」
「そ、それは…はい…」
「そんなことだろうと思った」
なぜか完全に心を読まれてしまっている。これが幼馴染パワーなのだろうか。いや流石に怖いから違うと言ってほしい!
「ちなみに何でわかったの?」
「アンタの考えてることなんて手に取るようにわかるからね。何年親友やってると思ってんの?」
「さ、流石ですね…」
こっちは心花の考えてることなんてちっともわからないのに!!現に好意を寄せてくれてるなんて微塵も気づかなかったし。同じ幼馴染なのになぜこんなにも違うんだろうか。
いやもしかしたら心花はずっと見てくれていたからなのかもしれない。人見知りで陰キャでボッチで誰も話しかけて来ない中、心花だけは何の躊躇いもなく話しかけてきてくれた。中学に上がって心花が陽キャグループに属し始めてからも、彼女は前までと変わらない笑みを向けてくれた。
そして高校に上がる時、私が変わりたいと思った時、一番近くでアドバイスしてくれたのは心花だった。髪の整え方とかメイクの仕方とか、人との話し方や笑顔の作り方まで、心花は全て教えてくれた。
そういう思いやりの一つ一つが私の心の理解度を高めて、自然と考えていることがわかるようになったのかもしれない。
じゃあ一体、私は彼女に何をしてあげただろう?
(そういえば私…心花のこと全然知らない…)
心花は私と遊ぶ時、全部こちらの趣味に合わせてくれる。ゲームしたいといえば付き合ってくれるし、ホラー映画を見に行きたいと言ったら普通に着いてきてくれる。
よくよく考えてみれば、心花が行きたいところに行ったことがほとんどない。彼女は私と違って普通の女子高校生だからオシャレなカフェとかキラキラした場所に行きたいはずなのに、今までそんな提案をされることがほとんど無かった。それは多分、こちらに合わせてくれていたからなんだろう。
(…流石にこのままじゃダメだ…!)
こちらにばかり合わせてもらう関係を果たして親友と呼べるのか。それは親しい友人と、胸を張って言える関係性なのだろうか。
(もっと心花のことを知りたい…!多分それからでも遅くはないはず…!)
こんな魅力的な女の子のことを何も知らないまま終わるのは絶対にイヤだ。
もっと一緒の時間を過ごして、女子高校生らしいことをして、それから考えても遅くはないんじゃないか?
百合の心はそういう考えに至り、彼女は緊張に怯えつつも自信を持って言葉を紡いだ。
「あのさ…!一ヶ月だけ、時間をくれない…?」
「あたしは考えてくれるなら何でもいいけど。七瀬さんの方はどうすんの?」
「まぁ…どうにかするよ…」
そう言ってみたはいいものの、本当にどうしよう。葵とのお試し期間はもう終了するし、そろそろ結論を出さないと流石に怒られそうな気がするんだけど。
(…葵なら許してくれるよね!多分…)
彼女の優しさに賭けるしかない。
そんな他人任せな考えのもと、百合は心花との恋愛を開始したのだった。




