43 相談されてしまった!
葵との関係をどうするか。
それは今までずっと考えてきたし、今だって真剣に考えている。
「はぁ…正解がわからない…」
正直、気持ちはもう決まっている。一ヶ月間葵と一緒に過ごして、人生で初めてこの人とならって思えた。だからもうハッキリ「よろしくお願いします」って言えばいいんだけど、それが簡単にできたら陰キャなんてやってないわけですよ…。
(やっぱ時代が時代だしメール送るだけで良かったりしない…!?)
最近流行りの文章告白だ。それは相手と会話する必要がなく、告白のハードルがかなり下がるものだ。
しかしもちろんデメリットもあって、直接話さないから伝わりにくかったり実感が湧きにくかったりする。つまり本気で気持ちを伝えたい時には向かないということだ。
(いや流石に直接言うべきか…。はぁ…何て言えばいいんだろう?なんせ一ヶ月も待たせてるわけだし…)
今更彼女に告白された時にYesと言っておけば良かったと後悔する。もちろん過去は取り戻せないので何の意味もないが。
(やっぱロマンチックな感じがいいかな?それともちょっと不意打ちで普段の会話の中でしれっと告白するみたいな…?うぅ…葵はどれが好きなのぉ…!)
今すぐ電話で聞いてみてやろうか。いやそれじゃあ告白するのバレバレじゃん。却下で。
【ねぇ、百合】
その時、ノック音が部屋に響き渡り、外から心花の声が聞こえてきた。百合は何も疑問に思わず、普通に彼女を部屋に入れた。
「ねぇ、ちょっと話あるんだけど」
「どうしたの珍しく真剣な顔して」
「あたしはいつでも真剣だわ」
「それはないでしょ」
いつも通りニッコニコで明るい感じで来ると思っていたけど、今日は少し様子がおかしい。今まで心花がこんな風になったことが無いからわからないけど、ちょっと悩みを抱えていそうだなといった感じだ。
表情も暗くて、言葉から覇気が感じられない。
長年の付き合いだからわかるけど、明らかにおかしいのは事実だ。百合は疑問を抱えつつ心花の言葉に耳を傾ける。
「で、その、話なんだけど…」
「もしかして相談?」
「まぁ…そんな感じ」
まさか心花から相談される日が来るなんて。そこまで信頼されているとは思っていなかったけど、悩みを打ち明けてくれるって意外と嬉しいなこれ。つい自信が湧いてきちゃう。
「相談なら私に任せて。大船に乗ったつもりでいて良いよ!」
「そうだね。じゃあその難破船に一つ訊きたいことがあって」
「………」
せっかく胸を叩いて自信ありげにしたのに、いつも通り軽くあしらわれてしまった。まあ良くも悪くもいつも通りだということだから滅茶苦茶悩んでいるとかそういう系では無いっぽいな。これなら気楽に相談に乗れるなぁ。
と、そんなことを考えている時だった。
「百合はさ…七瀬さんと付き合うつもりなんだよね…?」
「…へ?」
突然のことすぎて理解が追いつかないが、彼女は畳み掛けるように言葉を放ってくる。
「見てたらわかるよ。百合が七瀬さんのことちゃんと好きなことぐらい」
「そ、そんなにわかりやすかった…?」
「まあ割と。七瀬さんも何で気づかないんだろう?って感じ」
「〜〜っ!!」
とっっても恥ずかしい。恋愛系のことはあまり周りに知られたくなったからこそ、この気持ちがバレているのは心の底から恥ずかしい。
「てか!!その話必要ある!?私に相談したいことあるんだよね!?」
そうだ。心花が相談があると言ったから話に付き合ってあげているのに、何でこっちが恥ずかしい目に遭わないといけないんだ。流石に不条理すぎる。
もしかして相談とか嘘で私を揶揄いたかっただけなんじゃないの!?それなら結構人間不信になっちゃうんですけど!?
「ごめんごめん。でも一応確認しておきたかったから」
「確認…?もしかして相談と関係ある….?」
「うん…まぁ、その…」
目を左右に動かしながらどうするか迷っている。しかし直後に決意を固めたように動きを止め、強い眼差しでコチラを見てくる。
「もういい!単刀直入に言うね!!」
「はい…」
彼女は勇気を振り絞り、いつも以上に大きな声で気持ちを打ち明けた。
「アンタのことが好き!!」
長年紡いだ幼馴染の友情は、たった一つの感情で簡単に崩れてしまうのだった。




