01. 祖父との約束
わたしの祖父、ユーリは魔術士だった。
小さい頃はそういうことを全く知らなかったし、祖父の方でもわたしの前で魔法を使ったことはない。
……使っていたのかもしれないね。
いつだってうちに来る時は、お菓子を山盛り持ってきてくれた。上着の内側だとか、袖の中、隠すにしたってありえないほどの量をぱかっと出して、わたしを驚かせていたんだから。
おじいにしてはいけめんだったと思う。のっぽな身体の上に、ちょっと角ばったすっきり顔がくっついていた。人が言うには、わたしは祖父にそっくりらしい。
「目ぇ背けとったけど、俺も年や……。こないだ医者に、胃が肺がどうのって言われたから、心配になってもうてぇ」
わたしが十一の時、祖父はうちにいきなりやってきて、ふは〜とぼやいた。
その日両親はたまたま外出していて、お茶を淹れたのはわたしだ。近所に住んでしょっちゅう会ってはいたけれど、そういう顔の祖父を見るのは初めてだったから、わたしはちょっと不安になる。
ず〜! 年寄り臭く湯飲みをすすって、祖父はごそごそ上着の内側を探った。
「これ。お前に預けといていい?」
「何これ、うでわ?」
食卓の上にことんと置かれたのは、古びた環っかだった。紐で作ったように見える、精巧な細工物。だいぶ黒ずんではいるけれど、ところどころ鈍く光る銀の環には半透明の白っぽい丸石が一つ、はめこまれている。わたしは手にとってみて、きれいだなと思った。
「昔こしらえた、結界封印の目安なんやけど〜」
「はあ?」
両手で頬杖をついて、祖父は眉毛をきゅうと下げている。
「若い頃の仕事やったし。俺も年取ればじじいになって、じきに死ぬってこと、も〜……。全然考えんと、やってもうてな。お前を見込んで、引き継ぎを頼みたいんよ」
「仕事って?」
わたしの方も、何も考えずにその腕環を左手首にくぐらせていた。
「俺の代わりにな。【眠り姫の封印】を護って欲しいんよ。ウーニャ」




