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放課後カミカクシ・レトロ  作者: 雨音静香
第二章 演技? 真実?
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候補

「それじゃあ、凛花ちゃんも、史ちゃんも、加代ちゃんも入部するのね」

 体育館に報告を終えて、演劇部の部室に戻ってきたところで、裏方班として別行動していた委員長達と合流できた。

 私が「剣道部のお手伝いも可能な範囲でさせて貰うから、一応、兼部って事になった」と伝えると、委員長は「兼部……って、試合するの?」と首を傾げる。

「私としては、試合に興味があるんだけど、一応ドクターストップが頭に衝撃はダメ……なので、試合は出来ないんだけど、その代わり、マネージャーとしてお手伝いさせて貰うことになったんだよ」

 私がそう説明すると、史ちゃんが「え、それは私もお手伝いに行って大丈夫ですか、凛花様?」と興味津々と言った表情で尋ねてきた。

 ちょっと驚いたけど、私は瞬き数回で気持ちを整えて、少し考えてみる。

「伊東先生……えっと、剣道部の顧問の先生に聞いてみないとわからないけど、喜んでくれるんじゃないかなーとは思う」

 確信はないけど、伊東先生なら受け入れてくれるだろうと思ってそう返すと、その表情が一気に明るく輝いた。

 その顔を見てから、がっかりさせて曇らせないために先に確認してからにした方が良かったと、自分の迂闊さに気が付く。

 その事を伝えて謝ろうかと思ったのだけど、それよりも早く委員長が「ほほう、おチビッ子クラブで部活のお手伝いとか、人気が出そうね」と呟いた。

「ま、待って、委員長! 加代ちゃんは何も言ってないよ?」

 委員長の話を流してしまうと、流れで加代ちゃんも巻き込まれると思った私は、慌てて止めに入る。

 対して委員長は「というわけで、どう、加代ちゃん?」と流れるように話を振った。

「え? あー、私は参加するつもりだったよ。もちろん用事のある時は難しいけど」

 あっさりと加代ちゃん本人に参加を承諾されてしまったので、私としては全く異論は無くなってしまった。

「加代ちゃんが良いなら、頑張ろう?」

 なんだかふわふわしてしまったせいで、語尾に疑問符が付いてしまったけど、史ちゃんと加代ちゃんは小さく笑ってから「「おー」」とノッてくれる。

 ちょっとくすぐったいなと思いながらも、心地良い気分になったところで、リンリン様に『青春じゃのう』と揶揄われてしまった。


 そんなこんなで盛り上がっていると、目を輝かせた千夏ちゃんが近づいてきた。

「ねぇねぇ、何か面白そうな話をしているわね」

 私は千夏ちゃんと委員長が顔を合わすのは、ここが初めてだなとそれぞれの紹介をする。

「なるほど、噂の一年の演劇部エースさんね」

 委員長はそう言って笑みを浮かべると右手を差し出した。

 千夏ちゃんは手を握り返しながら「エースだなんて……演劇メインの一年が私しかいなかっただけだよ」と返す。

 ただ、その表情に僅かな曇りがあったように見えた。

 とはいえ、それはほんの一瞬のことで、すぐに元通りの笑顔に戻ったので、私の勘違いかもしれない。

 そんな事を考えている間にも、委員長と千夏ちゃんの会話は進んでいた。

「でも、良いなーF組、みんなそうだよね?」

 私たちを見渡しながら言う千夏ちゃんに「そうね。クラス分けで、今年一番の運を使っちゃったかもね」と冗談めかして返す。

 すると、千夏ちゃんは「いいなー」と苦笑を浮かべた。

 もう一度、あの影のある表情を見たことで、私は反射的に、口を開いてしまう。

 本当はちゃんと考えて、皆の意見を聞かなくちゃいけなかったのに「じゃあ、千夏ちゃんも『おチビッ子クラブ』に入る?」と、気付いたら聞いてしまっていた。

「え?」

 目を丸くした千夏ちゃんは、そこから数度瞬きを繰り返す。

 なんだか、隠されていた千夏ちゃんの素を初めて見たような気がして、胸がドキッと高鳴った。


 見つめ合うことしばし、千夏ちゃんがなんだか恐る恐る「いいの?」と上目遣いで聞いてきた。

 演技も上手かったし、格好いい立ち振る舞いのイメージが強く合ったせいで、なんだかか弱く見えてしまった千夏ちゃんの問い掛けに、気付けば、私は全力で応えないといけないと思ってしまっている。

 ズルイとわかっていながら「史ちゃん、加代ちゃん……いい……よね?」と聞いてみた。

「もちろん、私は良いですよ、凛花様!」

「メンバーが増えるってことは友達が増えるって事だもんね。私も賛成」

 二人なら受け入れてくれると思っていたけど、考え通りの反応に、ほんの少し罪悪感が胸にチクリと刺さる。

 でも、千夏ちゃんの笑顔を引き出したいと思う私は、更に畳み掛けることにした。

「委員長、メンバーが他のクラスの子でも大丈夫だよね?」

 私の問い掛けに、委員長は「大丈夫……とは言えないかもしれないわ。やっぱり、クラスの垣根が……」と真面目に答えてくれている。

 けど、ここではその話を遮らせて貰うことにした。

「それなら、部活応援の時のユニット、文化祭の時のユニット、体育祭の時のユニットみたいに、状況……条件に合わせてメンバーを入れ換えてみたら、どうかな」

 私の言葉に一瞬固まった委員長の目が、時間と共にギラギラと輝き出す。

「ほら、私たちはこの学校の生徒ってくくりだけど、一年生でも区切れるし、クラスでも区切れるし、部活でも、体育を一緒にやるクラスでも区切れるでしょ?」

 委員長にはその追加は要らなかったかもしれないけど、これは他の子達に伝えるためだった。

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