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隣の転校生は重度の中二病患者でした。  作者: 夏風陽向
「嫉妬と強奪の女王」
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嫉妬と強奪の女王 part10

お昼休みが終了する5分前に黒山は教室へ戻ってきた。


自分の席に向かう途中、私と真悠を横目で一瞬見たが何も言わずに席に着いて窓の外を見始めた。


それから2分が経ち、授業開始まで3分前になったところで、真悠は授業の準備を始める為に自分の席へ戻った。


私はその隙を狙って黒山に話し掛ける。



「ちょっと黒山君!」


「待て梶谷。言いたいことは大体わかるが、話は後だ」


「え、なん……」



「なんで?」と聞こうとすると、黒山は目線で答えてくれた。


その目線の先には真悠が居て、今まで見た事無いような顔でこちらを見ている。


口元は笑っているが、ただでさえパッチリとしている目をいつも以上に開いた顔で。


首を少し傾げた状態なので、縛ってある長い髪や横髪が目にかかり、毛先は机の上で倒れている。



(こっわ……。真悠、こっわ……)



大事な事なのでもう一度言わせてもらうと、こちらを見ている真悠の顔が怖い。


黒山はわざとらしく深くため息を吐くと、再び窓の方を見始めた。すると、その動きに合わせて真悠はブレザーのポケットから携帯端末を出して授業開始までの1分を待ち始めた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


黒山が昼休み中に教室を出て行ったのには3つの理由がある。


1つ目に、上杉の存在。黒山は何故かわからないが、お昼休みに上杉が教室に来ることを直感的に予想していた。


今朝、相棒関係の提案を断ったにも関わらず、上杉は黒山に「諦めない」と言った。しかし黒山にとっては迷惑に感じる話である為、出来るだけ上杉との遭遇を避けたかったのだ。


その結果、物理的に詩織と距離を詰めていた真悠を抑えることで被害者となった詩織を救うことが出来たので良かったが、黒山自身がその結果を知ることは無い。


2つ目は真悠。黒山は、真悠から明らかに『 重度の中二病』を発症する予兆が出ていることがわかっていた。


このまま発症して無力化する手もあるが、相手は女子。能力によっての話にはなるものの、直接戦闘しなければならない可能性も十二分にある。


いくら無効化の為とはいえど、1人の男として女子に手荒な真似をすることが出来ない。


となれば、予兆が見えた真悠に対して発症のトリガーとなり得る刺激を与えなければいいと考えたのだ。


「詩織と関わることが発症のトリガーなる」というのはあくまで仮説段階であったが、昼休み明けの真悠を見て確信へと至った。


元より下崎の一件から2人と関わるつもりが無かったので、黒山にとってはむしろ都合の良い部分もある。


とはいえ、いくら「重度の中二病患者」と言えど黒山も人間だ。本人は自覚していないが、心の中では「寂しい」という気持ちがある。


「私がいるから大丈夫」と自分の中で黒い『何か』に包まれる気がしたので、黒山は「何が大丈夫だ」と心の中で黒い『何か』を拒絶し、思考を別の事へ向けることにした。


--------------------


その日の夜。日付が変わる30分前となった23時30分頃。


「美容の秘訣は睡眠にあり」という言葉に従っている真悠は、いつも通り既に眠っていた。


そして「あの夢」を見る。



「ねぇ」


「……?」


「ねぇ! こっち!!」


「えっ……!?」



振り返った先に立っていたのは自分自身だった。



「なん……で、私が2人……?」



訳もわからず不安げな声をあげる真悠本人に、もう1人の真悠は笑顔で「大丈夫!!」と明るく言った。


不思議と真悠本人は、もう1人の自分の声を聞いて安心した。「本当に自分だ……」と。


そしてほんの少し、いつもの笑顔を取り戻した真悠本人に、もう1人の真悠は問いかける。



「ねー!」


「うん? なーに?」


「私はね、私に今必要な力を私に来たの!」


「私に今必要な力……?」


「そうだよー!!」



もう1人の真悠は華奢な体にも関わらず、左右に現れた紺桔梗の色をした穴から右手と左手、それぞれ1つずつ体格に合わない大きな刃物を取り出した。


形はククリナイフに似ているが、持つところは丸くなっていて持ち辛そうだし、刃も逆に付いている。


しかし、もう1人の真悠はそれを軽々しく持ち上げていた。



「さあ、持ってみて!」


「え……でも私、こんなの……」



常識的に考えて無理だ。真悠本人の思っている通り「持てるわけがない」。


だが、この件に関して言えば、持てるか持たないかは理屈で語れない。


もう1人の真悠は真悠本人に優しく諭す。



「私はあなた。あなたは私。私に出来るなら、あなたにも必ず出来るよ……?」


「本当に……?」


「うん、本当! さあ……」



もう1人の真悠は、両手同時に刃物を回して刃の方を持つと、真悠本人が持ちやすいように持ち上げる。


恐る恐る手を伸ばし、右手の人差し指でそっとつつくが何も起きない。


ついに両手で刃物を持ち上げると、うっかり離してしまわないくらいには重量があり、軽々しく持ち上げられるほどの軽さがある。



「おめでとう……! これであなたは邪魔者を消すことができる」


「邪魔者?」


「私……あなたとしーちゃんの友情を邪魔する者。例えば……」



先程と打って変わって残酷さが惜しみなく出ている表情と声であの男の名を呼ぶ。



「黒山くん……とかね」


「黒山くん……」


「そう! 転校してきて僅か半年も満たない癖に、しーちゃんと仲良くする奴!」


「ああ……そうかぁ……」


「黒山くんだけじゃないと思うよ! 紅ヶ原の沙希ちゃんや奈月ちゃんもあり得るかもしれない」


「嫌だ……」


「他にも、私が見ていないだけでしーちゃんに近付く奴がいるかもしれないよねー?」


「嫌だ、嫌だ……」


「ずーっと、一緒にいた私を差し置いてしーちゃんと仲良くしようする奴らを、私は黙って許すしかないのかな……」


「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だーっ!!!!」


「うん! 私も嫌だ……だったらどうすればいいか、わかるよね?」


「うん、わかる。私……やる!」


「よく言えました! 頑張ってね、私……あなたのしーちゃんを取り戻す為に」



掛けておいたアラームの音が2人の会話を強制終了させ、真悠は「夢の内容をしっかり憶えている」という不思議な感覚を持って覚醒した。

--------------------


1週間の始まりである月曜から今まで見せたことなかった怖さを見せている真悠だが(黒山は1度垣間見ており、トロピカル・エクストラ・サマーエディションを奢らされている)火曜・水曜と日が進むにつれて、態度が怖くなっている。


変化したのが態度だけなら普通にしていればまだしも、学年内に好意を抱いている男子が何人いるかわからないほどの可愛さを誇っていたのが嘘みたいに真悠の顔はやつれていた。


流石というべきか、異変に気付いた真悠のお母さんが今朝「真悠、学校で何かあったの?」と私に聞いてきたのだが、私は「わからない。けど私も気になっているから、調べてみる」とだけしか言えなかった。


幼馴染で大親友……いつも隣で見ているはずなのに、真悠を変化させた要因が未だにわからずにいる。


肝心の黒山は、そんな真悠に気を遣っているのか真悠が教室にいるときはまったく私に話しかけようとしない。(元々話しかけてくることが稀なのだけど)


色々と変化している真悠だが、何故か変わらない点があった。


それは、私に執着する割に真悠自身が教室にいない時が不定期にあることだ。恐らく、他の友達と話しているのだと思われるが……。


とにかく、幸いなことに水曜の1時間目は移動教室ではない為、少しだけだが黒山と話すことができた。



「黒山君、ちょっと……」


「どうかしたか? ……と気楽に言っている場合ではないな」


「ってことは、もしかして……」


「ああ、間違いない。栗川は『患者』となった」


「そ、そんな……」



私は真悠が「重度の中二病患者」になってしまったことを認めなくなかった。しかし、実際に態度は怖くなり、顔がやつれてきているを見ていると信じざるを得ない。


まるで神が私に「現実とはこういうものだ」と遠回しに言ってきているのではないかと思ってしまうほどだ。


私がやり場のない怒りに心の中で震えていると、黒山が鞄から何かを取り出し渡してきた。


手を広げ、渡されたものを見ると、そこにあったのは2つの御守り。



「これは?」


「御守りだ」


「見りゃわかる! ……悪い気はしないけど、なんで御守り?」


「これには、能力の代償を1度だけ拒絶する効果と、1日くらいだが能力による被害を防ぐ効果がある」


「へぇ、そんな便利グッズが……!」


「精製がもう少し楽なら胸を張って便利グッズだと言えるんだがな……。これは元々、梶谷と栗川の2人に渡す予定だったが状況が状況だ。2つとも渡しておく」


「……ありがと」



私は長めの紐がついた御守りの1つを鞄の中に。もう1つを首に掛けた。


そんな私の様子を見て軽く頷いた黒山は「これ以上話していると危険」だと感じたようで、再び窓の外を見始めた。


実際、黒山の勘は大したもので、黒山が窓の外を見始めてから1分も経たないうちに真悠は教室に戻ってきたのだった。


--------------------


黒山と詩織が真悠と御守りについて話している一方、真悠は他クラスの友達と話していた……のではない。


女王……鈴木花梨に呼び出されていたのだ。


とはいえ、「直接」本人は真悠を呼び出してなどいない。講堂の舞台裏で紫色の針を刺してから脳内で命じるだけで真悠は命令通り現れる。


しかし、何でもかんでも脳内で命じられる程この能力は使い勝手が良くない。せいぜい呼び出しくらいしか使えず、他に命令を下したいのであれば直接言葉で下さなければならない。


月曜の夜に真悠は重度の中二病を発症し、能力を使えるようになった。その翌日……つまり昨日、真悠の能力を把握した鈴木は真悠に「放課後予定を空けられるように1日を過ごしなさい」と命じた。


真悠は無言で頷き、そのまま教室へ戻っていった。


鈴木にとって、真悠が目覚めた能力は非常に都合が良い。まだ実際に見たわけではないが、真悠の報告を聞く限り、鈴木が目標を達成するにおいての問題点を即座に解決できるものとなっているようだ。


鈴木は急いで使い捨てのマスクを着用し、にやけているのをどうにか誤魔化したのだった。

先週、更新出来ず申し訳ありませんでした!


本当結構真剣に書けませんでした……


ここ最近、どうにも職場での人手不足が目立っており、年末年始休業がある為少しデイリーベース(1日の生産量ノルマ)が多くなっていることから、休日出勤が相次いでいます。


毎日残業もありますので、どうにか書く時間を作れないものかと考えています。


エタりたくはないですからね!


次回の更新予定日は12月27日(水)です。お楽しみに!


クリスマス回、書きたいなぁ…

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