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隣の転校生は重度の中二病患者でした。  作者: 夏風陽向
「嫉妬と強奪の女王」
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嫉妬と強奪の女王 part3

「どうして私があそこにいるってわかったの?」



1時間目の音楽を終え、私と真悠は1度教室に戻る為廊下を歩いていた。


すると、真悠が気まずそうに質問をしてきたのだ。



「廊下にいる人に聞いていったら『部室棟の方へ行った』って情報をもらってさ。部室は部活以外でそうそう入れないだろうから、廊下にいなければあとは女子トイレだけだなと思った!」


「うう……ごめんなさい……」


「ちょっと何を謝ってるのよ!? 別に真悠が悪いことしたわけじゃないでしょ。そんなことより、また変なことに巻き込まれたりしてない!? 下崎の時とは違って相手は女だから『もしかして』ってことはないと思うけど……」


「うん、大丈夫! 心配してくれてありがとね、しーちゃん!!」



真悠は私の前に回り込み「心配いらないよ」と言うかのように笑顔を見せた。


私と真悠の付き合いは長いから、その表情の意味はある程度理解できたつもりだ。


しかし、私が思うにその笑顔は「半分は感謝」そしてもう半分は「強がり」だ。


その「強がり」は2年女子から呼び出された時に抱いた恐怖に対してのものだろう。


--------------------


真悠の「強がり」に対する詩織の考え方は、はっきり言って間違っている。


確かに恐怖に対しての「強がり」であることは間違いない。ただし、2年女子……鈴木花梨に呼び出されたこと自体が恐怖なのではなく、自分が持っている「詩織に対しての思い方」が揺らいでいることに恐怖を抱いているのだ。


真悠にとって詩織は、幼馴染の大親友。


友達が多い真悠にとっての詩織は、他の誰とも比べ物にならないほど大切な存在だ。


それはずっと変わらないのだが、一緒にいる時間が長くなるにつれて、詩織への「大切」だと思う気持ちは大きくなったいく。そんな自覚は真悠自身にもあった。


そんな中、鈴木に問いかけられた「詩織を自分のだけにしたい」と実際に思ってしまったことがあるということに、真悠は恐怖を抱いていた。


真悠と詩織の関係は1番適切で、友情関係で言えばこれ以上はないだろう。しかし、真悠は頭で「この状態がベスト」だもわかっていても、心はもっと親密になりたいと願っている。


真悠は、そんな思いを「もっと友達になりたいだけ」と解釈していた。


--------------------


時はかなり進み、放課後。


黒山は1日中、昨晩のことを考えていた。


今後、黒山だけが襲われるなら対処に問題はないが、もしも詩織と真悠が襲われてしまうようなこともあるかもしれない。


そんな結論に至った黒山は、隣に座っている詩織にこんなことを言い出した。



「梶谷。今日から、君の家まで一緒に帰らないか?」


「えぇ!? な、なに急に!?」



詩織にとって、黒山の発言は理解不能だった。


色んな考えが脳内を横切る中、そんなプチパニック状態から復帰させてくれたのは、ちょうどこっちへ来た真悠の一言だった。



「ちょっと黒山君! 私に断りもいれないでしーちゃんと2人で帰ろうとは、思い切ったことをするねー?」


「……? よくわからないが、いいタイミングで来てくれた。栗川、君もだ」


「え……? わ、私はしーちゃんと一緒ならいいんだけどぉ? 黒山君、2人同時にって欲張り……」


「ちょっと何言っているのかわからないな」



2人の食い違っている話は、見てて面白いものだった。


詩織は2人の様子をニヤニヤしながら見ていると、それに気付いた真悠の顔はほんの少し青ざめた。



「……で、なんで急に私や真悠と帰るなんて言い出したわけ?」


「実は……」



黒山が昨晩あった出来事を詩織と真悠の2人に話すと、血相を変えて「え、大丈夫なの!?」とハモった。



「俺は問題ない。だが、俺と関わっている以上、2人も危ないかもしれない」


「確かにそれはそうね……。だったら一緒に帰ってくれると安心だわ」


「そうだね……! 私なんて強くないし、しーちゃんだって強いのは態度だけだからね」


「うん、そうね。って真悠、今なんて言った?」


「なんでもなーい!」


「……まあいいわ。それより黒山君。私と真悠のこと、ちゃんと守ってね?」


「約束する」



こうして今日から3人は一緒に下校することとなった。


--------------------


今日は金曜日。


下校中、私と真悠、そして黒山の話題は「休日の予定」だった。



「私は特にこれといって予定はないけど、黒山君はどうなの?」


「俺か? 土曜日は見回りだな。基本的にあのメンバーで2人ずつ交代して見回っている」


「へぇ……。事件が起こってからじゃ取り返しのつかないこともあるもんね」


「そういうことだ。高校生だけならともかく、中学生はもちろんのこと、大人だって発症する人はいるからな」


「なるほどねぇ。真悠はどうなの?」


「んー。私も今のところは特になーい!」


「あ、そうなの? じゃあ、久々にうちにおいでよ! みんな喜ぶよ?」


「いいの? やったー!!」



朝とは違い、真悠の顔は晴れている。


いつも通り無邪気な笑顔を見せてくれると、私も安心できるのだ。


そんな私と真悠の様子を見て、黒山の顔も一見真顔だが、ほんの少し表情が和らいでいた。


そうこう盛り上がっているうちに自宅へ着いた。


黒山は、私と真悠が近所だということを知らなかったみたいで驚いていた。



「送ってくれてありがとう!」


「黒山君、また月曜日ねー!!」


「ああ、また月曜日に」



私と真悠が家に入るのを確認してから、黒山も自分の帰り道へと戻った。


--------------------


昨日は「それ」がずっと問い掛けてきたが、今日は全く声は聞こえない。


しかし、黒山は来るかもしれない襲撃者を警戒していた。


そしてその警戒は無駄ではなかった。案の定襲って来たのだ。



「やぁぁ!!!」


「ふっ!」



襲撃者による突然のパンチを右手で受け止める。


すると今度は背後から蹴りが飛んで来た。



「!?」



黒山はすぐに右側へ移り、蹴りを回避する。


相手は2人……と思いきや、3人、4人、5人と増えた。


相手の人数が増えようと、連携が取れていなければ黒山にとって敵ではない。


だが相手は、立て続けに攻撃を仕掛けて来ており、黒山に反撃の隙を与えない。



「くっ……厄介だな」



1人の攻撃を受け止め反撃しようとするが、背後にいる敵がすぐにカバーする。


能力を使って相手の意識を『拒絶』してしまえば、すぐに終わるだろう。


しかし、黒山には限定的な能力の行使は出来ず、1度意識を刈り取ってしまえば、解除をできる能力者(黒山の場合、梨々香)がいなければ永遠に目が覚めない可能性もある。


なにより、黒山は「重度の中二病患者」以外に能力を使わない主義だった。



(くそっ……多少のダメージは覚悟するしかないか)



そう考えた瞬間、相手の1人が「うぐぁっ」と言って倒れ込んだ。



「誰だ!?」



黒山と敵4人は新たな参戦者の方向を見る。するとそこにいたのは……。



「らしくねぇじゃねぇか。案外、対集団には慣れてねぇんだなぁ」



不敵な笑みを浮かべた鎌田浩二だった。


--------------------


鎌田は外に出ていた。


独自の情報網で、ここ最近「女を泣かせる男」が増えたという話を聞いていた為、独断ではあったが調査をしていた。


調査……と言っても、黒山達の仲間としてよりよりも「1人の男として、そんな野郎は許せねぇ」という意思に基づいたものなので、自主パトロールに近いだろう。


すると、5人で歩いているグループを見つけた。


それだけなら鎌田はスルーしていただろう。しかし、その中にいる1人に鎌田は見覚えがあった。



(あぁ? あれは……)



鎌田にとってその人は初対面なのだが、SNSで加工写真を上げていた女の彼氏だった。


いや、正確には元カレであり、鎌田が得た情報の中にあった男だったのだ。


鎌田は彼ら5人を尾行することにした。


彼らを尾行している中で、気になったことがあった。


集団とは、必ず中に「リーダー的存在」がいるはずだ。それは1人だとは限らないが、彼らの中には誰1人として引っ張る人間がおらず、しかも無言でどこかへ向かっている様子だった。


まるで誰かに命令されたかのように。


しばらくして、彼らは人目につかない場所で人を襲った。


相手が黒山だというのは、鎌田自身も驚いたが「あいつなら大丈夫だろう」と陰で見ていた。


しかし、鎌田の予想は裏切られ、黒山は苦戦していた。そこで鎌田は参戦することにしたのだ。


--------------------


「ぼさっとしてねぇで、さっさと片付けるぞ」


「あ、ああ……」



新たなる、予想外の敵が現れたにもかかわらず、それでも残った4人は黒山だけを狙った。



「くっ……!」


「俺を無視するんじゃねぇぞぉ!!」



鎌田も能力を使わなかったが(正確には使えなかった)元々喧嘩慣れしている鎌田は、易々と1人、また1人と顔面に一撃を入れて仕留めていく。


鎌田が4人のうち2人を相手したので、黒山も十分に戦いやすくなり、1人はみぞおちを狙って殴り呼吸困難。もう1人は顎に裏回し蹴りを当て、脳震盪(のうしんとう)を起こし気絶させた。



「すまない鎌田。助かった」


「どうってこたぁねぇよ。……だがてめぇ、なんで能力を使わなかった?」


「俺たちは取り締まる側だ。相手が能力を使ってくればともかく、普通の人間に能力を使うというのは……」


「はっ! そいつは御大層なことじゃねぇか。だがな、それでてめぇを守れなきゃ何の意味もねぇ。俺たちは別に傷付けるために能力を使ってるんじゃねぇだろ? 守るためだろうがよ? たかが守る相手が『誰か』から『てめぇ』に変わっただけじゃねぇか」


「そう……だな。そうかもしれないな」


「そもそもなんでてめぇが襲われてるのかよくわかんねぇが、次の集会の時にちゃんと説明しろよ?」


「集会……じゃなくて、定期報告会な。あまり気は進まないがそうさせてもらう」


「そんじゃ、こいつらが起きる前にさっさとずらかろうぜ? またな、透夜」


「あ、ああ……。またな」



この時、鎌田に下の名前で呼ばれたのは初めてだった。


しかしそのことを鎌田に指摘せず、頭の中で思うだけに留めて、黒山も自宅へ帰ることにした。


--------------------


実は今回も彼らは5人の操り手である女王は、その現場を見ていた。


黒山と鎌田が去った後に、彼らにかけた能力を解除する。



「ふーん、あの子も不思議な力を持っているんだ? 見て見たいな。……それにしても」



女王は無様に倒れた5人を見下ろし、蔑むかのように言った。



「とんだ役立たず共だったわ。それに比べ、彼は優秀そうね。……絶対手に入れてあげるからね、黒山透夜?」



『崇められる為の絶対令』鈴木花梨は、夜空を見上げてそう呟いた。

読んで下さりありがとうございます! 夏風陽向です。


作品について何か語れればなと考えていましたが、何も思いつきませんでしたので、ちょこっと近況を……。


毎年この時期になると、私の職場は大変大騒ぎになります。


忙しいから……というわけではなく、普段の忙しさにプラスして「外部監査」があるからです。


私は、監査の為に特別何かを用意するわけではありませんが、品質と生産量の向上をどう比例させていけばいいのか……という課題を考えさせられます。


話はガラリと変わりますが、職場の近くにある自販機に、コーンポタージュが追加されました。


去年もそうなのですが、人気なのですぐに売り切れとなってしまいます……


これからまだまだ気温が下がってくるでしょうから、皆様も体調を崩されないよう、お気を付けて!


あともう1つ。先日の台風による暴風の影響で、家の屋根瓦が一部落下してきました。


怪我人がいなくてよかったと思います……。


次回の更新予定日は11月1日(水)です。お楽しみに!

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