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夕日に映る君――初恋の音色  作者: 月原 悠
翼になりたい

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最終話 夕日に映る君


医師や家族、渡辺の声かけで、琴音は意識が戻った。


「琴音……」

「琴音ちゃん……」


琴音は水江の方を見つめた。


「お姉さん、お願いがあるの……」

「どうしたの?」

「先生と二人きりにさせてほしいの……」


水江は医師に確認を取ろうとした。

しかし、医師は静かに言った。


「そうさせてあげてください」


医師は静かに視線を落とした。

琴音は窓の外を見て呟いた。


「先生ね、この窓から野原が見えるの。先生と出会った時のような野原よ」

「本当だね……」

「お姉さん、ごめんね。先生と二人きりで野原に行きたいの」

「うん……」

「ありがとう、お姉さん」


病院から琴音と渡辺は二人で野原へ向かった。

風が柔らかく吹いていた。

野原に着いた。


「先生、思い出します」

「何を思い出すのかな」

「先生がね、夕日に輝いてとてもかっこよかったの」

「……」

「でも、どうして、泣いているの? 先生」

「琴音ちゃん……」

「泣いたら、私の好きな先生じゃないでしょ」

「琴音ちゃん、おんぶしようか」

「琴音は重いのよ、でも、今はそうでもないのかな……先生はぽっちゃりとした子が好きだって言ってたのにね……」

「大丈夫だよ……ほら……」

「ありがとう、先生」


夕日が顔をのぞかせた。


「先生、ちょうど夕日が見えてきたのね」

「ああ、本当だね」

「風もここちよいです。先生、重くないですか」

「大丈夫だよ」


「先生、お願いがあるの。今日はお願いばかりでごめんなさい」

「いいんだよ」

「先生ね、先生は頑張る子が好きだって言ったでしょ。だから、琴音は一生懸命練習したのよ。でも……」

「琴音ちゃん、もう頑張らなくてもいいんだよ」

「先生、お姉さんが好きでしょ。お姉さんも先生のことが好きなのよ。私は先生もお姉さんも好きよ。だから……」

「どうしたの……」

「もういいのよ。先生、私のことは気にしないでね」

「琴音ちゃん……」

「先生とお姉さんの笑顔が見たいの。本当よ。だから……もういいのよ」

「琴音ちゃん……」


「先生の背中は温かい……」

「……」

「先生、ありがとうございます……」

「琴音ちゃん……」

「先生と出会えて幸せでした……」

「……」

「先生……なんだか眠くなっちゃった」

「琴音ちゃん、琴音ちゃん」


「ありがとうございます……せんせい……」







どうしたの――――

さっきから、独り言を言って――――



ええ、聞いていたのですか――――



ああ、鳥のさえずりが聞こえてね――――



どのような、さえずりでしたか――――



君みたいな、可愛らしいさえずりかな――――



私を鳥だと思っていらっしゃったのですか――――



君も可愛いね――――



じゃあ、私が鳥なら

肩の上にとまっていいですか

そこからなら、夕日がもっときれいに見えます――――



じゃあ、ほら

僕の肩にのせるよ――――



駄目です――――



どうして――――



恥ずかしいですし

私は重いですよ――――



だって、君が僕の肩にとまりたいと言っただろ――――



じゃあ、今度は、先生の肩の上にとまりますね

先生……



本当に、夕日がとてもきれいに見えます――――



先生、ありがとう




了


最後まで、琴音の初恋を見守り続けていただき、ありがとうございました。

琴音は幸せでした。

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