表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕日に映る君――初恋の音色  作者: 月原 悠
無言歌

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/54

夢の後に

ここから物語は、短い詩のような章を重ねながら、琴音の心の奥へと静かに進んでいきます。

繊細に揺れ動く心の変化を、静かに見届けていただければ幸いです。

夏祭りの余韻を残して、琴音らは帰っていった。

その途中だった。

水江と渡辺はちらり、ちらりと互いを見ていた。

琴音は祭りでのいつもと違う水江と渡辺の姿が気になっていた。


「ねえ、ねえ、どうして、お姉さんと渡辺さんは黙っているの……?」

「ああ、琴音ちゃん、疲れているんだ……」

「そうよ。琴音……」

「もう、いいわ」


琴音は自宅まで走りだそうとした。


「待って、琴音ちゃん」


渡辺が声をかけると立ち止まった。

ぽつりと言った。


「だって、先生がつまんなさそうにしているでしょ」

「そんなことはないよ。琴音ちゃん」

「本当……? だって、お姉さんも変だし……」

「気のせいよ。琴音……」

「どうして、こんなに楽しいはずなのに……先生もしかして……」

「違うよ」

「嘘……じゃあ、琴音と二人だけで帰ろう」

「琴音……」


渡辺は琴音と二人きりで帰ることになった。


「先生、この間ね、神社の赤い餅を食べたの。そしたら少しぽっちゃりなったの。だから、琴音のことが嫌いになったの……?」

「そんなことはないよ」

「先生、前にぽっちゃりした女の子が好きって言ったでしょ。あれは本当……?」

「ああ、本当だよ」

「先生、琴音のことを好き? 好きなんでしょ? 好きなんでしょ……? 琴音は先生のことが好きよ」


渡辺は突然言われて言葉にならなかった。


「どうして、黙っているの」


琴音は渡辺の方をじっと見つめた。

渡辺は目をそらした。


「もう、いいのよ……」


琴音は走り出した。


「待って、琴音ちゃん」


琴音は立ち止まった。


「先生、琴音のことが好きだったら、後ろから抱きしめて……」


渡辺は立ち尽くした。

小さな声で言った。


「琴音ちゃん……」

「どうして先生、できないの……」

「琴音ちゃん、手をつないで帰ろう……」

「うん……」


渡辺は遠くを見ていた。


「先生、琴音といると楽しい……?」

「ああ、楽しいよ……」

「本当? 先生……? でも顔が嘘をついてる」

「そんなことはないよ」


琴音は少し黙り込んだ。


「先生、ごめんなさい……ごめんなさい」


琴音は走っていった。

渡辺はもう追いかけることはできなかった。


小川のせせらぎの音がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ