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【書籍化】 使い潰された勇者は二度目、いや、三度目の人生を自由に謳歌したいようです  作者: あかむらさき
新しい同居人編

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南の都編 その2 准士爵家のご令嬢(ほぼ一般人)

 メルちゃん家の次に伺ったのは王都にあるサーラ嬢のご実家。

 そう、初めて訪問した時に死人が出かけてたあの道場である。


 黒馬車で乗り付けて2人で車から降りたら大歓迎・・・されることはなく、サーラ嬢を目にした門下生が溶けたアルミを巣に流し込まれた蟻のようにパニックを起こした。

 いや、どんだけなんだよサーラ嬢。

 今日はドレス姿で来たからいいようなものの黒竜鎧姿だったらもっと面白い反応に・・・アレだと顔が見えないから案外普通の対応だったかも知れないな。

 てか今回は来訪前に先触れを出すの完全に忘れてたんだよなぁ。

 メルちゃんの家に行った時も(先触れより先に自分たちが着いちゃうから)特に連絡しなかったので先触れが必要とか意識の片隅にもなかったよ。


 そんな現状で微妙な表情をしている俺と嬉しそうに俺の腕を取り、何事もなかったように中に入って行くサーラ嬢。まぁ実家だもんね?

 逃げ惑うアリンコ・・・ではなく門下生から来訪の連絡が通ったのか道場の方からそこそこの全力ダッシュで現れたのはもちろん道場主でもあるサーラ嬢のお父さん。

 確かシュペール准士爵だったかな?数ヶ月前に見た時と比べれば随分顔色が良くなっている気がする。

 久々に帰ってきた愛娘を見て一言


「・・・もう返品でございますか?」


 いや、逆だから。返しに来たんじゃなくて貰いに来たから。

 前回訪れた時と比べれば修繕も進み、小綺麗になった屋敷を奥へと歩く。前来た時も通された応接室で腰掛ける俺とサーラ嬢。

 そして集まるご家族。全員ビックリするほど表情を固くしているのはどうしてかな?


「・・・やはり・・・やらかしましたでしょうか?」


 お父さんに続いてお母さんの反応もそんな感じかー・・・。

 俺がこの子と知り合う前の問題児っぷりが伝わってくる心温かい一幕って感じだな。

 確かに色々とやらかしてはいるんだけどね?そんなに心配しなくても特に俺には害はないから大丈夫だよ?

 気立ての良い可愛い娘さんなんだからもっと誇っても大丈夫。

 確か家事系のスキルも持ってたしね?それが活用されている場面を見たことはないんだけどさ。


 そして何を言われようとも特に気にするでもなくニコニコ笑顔のサーラ嬢。

 こうして見ると温厚で美人で知的な雰囲気もある少し中性的な女の子なんだけどなぁ。

 俺に対して良く言えば献身的、客観的に見れば狂信的、いや、どちらかと言えば母性的で過保護な感じ?違うな、しっくり来るのはよく懐いたワンコ?

 何にしても忠誠心が非常に高いのが玉に瑕なんだけど・・・そんなところも理解すると非常に愛おしい。

 隣に座る彼女の頭をポンポンと軽く撫でる。


 そんな自然な感じでイチャイチャする俺たち2人に対して、サーラ嬢のご家族の空気は非常に重苦しい。

 いや、きっとお互いにとって悪い話ではないからそこまで身構えなくてもいいと思うんだ。

 さて、どうやって切り出そう?などと考えていると隣から


「父上、母上、私・・・嫁に行きます!!」

「・・・ああ、サーラ、すまないね。残念ながら嫁に行くにはお相手の方が必要なんだよ・・・」

「・・・サーラ・・・そんな妄想まで見るようになったしまっていたなんて・・・非力なあなたのお母さんを許してちょうだい・・・」

「いや、その反応はおかしい」


 悲報:サーラ嬢、本人が家族に婚約の報告をしただけで重度の心の病扱いをされてしまう。


 このままご家族4人で話してるだけだといつまで経っても話が進まないと言うか噛み合わないので俺が横からこれまでの経緯を説明することに。

 うん、少々どころではなくこっ恥ずかしいんだけどな!

 要所要所でお風呂のことやその夜のことなど口に出そうとするサーラ嬢の口を押さえつつもなんとかご理解いただけた。


 そして満面の嬉し笑顔で号泣を始める対面に座る3人の親子。

 そこから始まるサーラ嬢の幼い頃の思い出話。


「生まれた時から、見目だけは、そう、見目だけはとても愛らしい娘だったのですよ」

「それが3歳の時に木剣を握り」

「5歳で兄を撲殺しかけ」

「父親よりも強くなった9歳」


 なんかいきなり翼の折れた○ンジェルみたいな流れなってるんだけど?

 いや、相手をしてたご家族から見たら天使どころか『木剣を折りに来る悪魔』だったろうけどさ。


「それがいつの間にかこんなに大きくなり」

「凶暴さも上がり」

「最後には『私よりも強い人の下に旅立ちます』などと言い出す始末」

「まさか鎧ではなくドレスをまとって帰宅するとは」

「「「目出度いねぇ・・・」」」


 何この卒業式のアレみたいな感じのやりとり。そして俺の腕にもたれかかり上機嫌なままのサーラ嬢。

 てか娘さんが男性と腕を組んで、ドレスを着て帰ってるのに最初は『返品』だって思ったんだよね?

 言われてる本人ではなく俺の方がいたたまれない気持ちになってきてるんだけど?


 まぁそこからはメルちゃんのご実家よろしく門下生やご近所さんまで集まっての大宴会が始まったのだった。

 もちろんちゃんと食材は仕入れてきてある。だって最近は知り合いに隙あらばエビを所望されるから。

 毎回結構な量を買い付けるのでもしかしたらエルドベーレで甲殻類だけ値上がりしてるかも知れない。


 んー、昨日は米無しの和食と中華って感じだったから今日は素直に洋食系かな?

 てか、ここん家の食料庫に入ってるのはあちらに芋、こちらにも芋、むしろ全部芋って感じで芋ばっかりだな。

 よし『洋食(お子様ランチに入ってそうなおかずいろいろ)』から『洋食(芋づくし)』に変更しよう。


「閣下と一緒にお料理が出来るなんて感無量であります!」

「お、おう」


 食材(主に芋)の下拵えを俺と一緒にするサーラ嬢。普通にドーリスレベルで包丁とか使えるんだ?ここにきてまさかの女の子らしさ発見である。

 芋をマッシュするその姿は力強い限りだけどな!



「ま、まさか伯爵閣下が御自らお料理をなさるとは・・・」

「ふっ、父上、閣下は国王陛下にも認められるこの国一の料理人なのですよ?」

「なっ!?へ、陛下に料理を振る舞われるほど信頼されてらっしゃるとは・・・」

「ふっ、さぁ冷めないうちにどうぞ!!」


 いや、そこまで大げさには言われてないから。普通に「おいしいね?」くらいの話だったから。

 そしてサーラ嬢は何故得意げな笑いでワンクッションおくのか。

 あと冷めないうちにもなにも一品目、ポテトサラダだから最初から冷たいんだよなぁ。


 てことで本日の献立。


 ポテトサラダ、ジャガイモのガレット、コロッケいろいろ、ちくわにポテサラ詰めてフライにした後にパンに挟んだやつ、ムサカ(ナスとじゃがいもを使ったグラタンっぽいやつ)、おつまみにじゃがバター&じゃがベーコン&フライドポテト、おやつにポテトチップス、流石に見た目が寂しいので焼いた肉もいっぱい用意しておいた。


 ポテサラとコロッケの食感が似てるとかガレットとフライドポテトも食感が似てるとかじゃがバターとじゃがベーコンに関しては味まで含めてほぼ同じだとか気にしてはいけない。

 そしてムサカはラザニアと並んで俺の大好物料理なのである。


 ラインナップが部活終わりの男子高校生のメニューっぽいけどここって道場だし食べるメンバーも似たようなものだから問題なかろう。

 てかここも一応貴族街の一画のはずなのに集まったご近所さんの食べる速度が飢えた孤児院の子供みたいなスピードなんだけど・・・。


「父上、閣下は『娘を嫁に欲しいなら私を倒して奪っていくのだな!!』と言う催しを楽しみにしておられるのですがいつ始められますか?」

「サーラ、娘にすら勝てない父がどうすれば竜殺しの英雄様に勝てるのかな?」

「いえ、勝つ必要などまったくないのです。最初から期待もしておりませんし。そう、死にものぐるいで血まみれになっていただくだけで満足です!」

「サーラ、出来れば土下座だけで父さんは勘弁してもらえないかな?もちろん代わりに兄さんが」

「絶対に嫌ですからね!?」


 いや、俺も別にそんなものは求めてないからね?

 すがるようなおっさんのウルウル眼でこちらを見つめるのは勘弁してください。


 さて、ここん家も結納代わりに建て替えちゃおう!・・・とも思ったけど、そこそこ由緒ある道場らしいので控えておくことにする。

 農家なら農具、道場なら武器だろうと鋼製品の適当な武器防具を置いて帰るか!



 ハリス、サーラ帰宅後のシュペール准士爵家~


「父上、この、何と言うかこの・・・うちの家に在ってはならない様な品質の武具が乱雑に置かれているのですが?これ、触っても良いものなのですかね?」

「閣下が結納代わりとおっしゃってたから触るくらいは大丈夫・・・だと思いたいが。そちらの鎧はお前にサイズを合わせてくださっているらしいぞ?」

「いや、この鎧って見た目が完全にアレですよね?色も形も違いますが王女殿下が凱旋の時に着てらした赤い鎧の兄弟作。間違いなく国宝ですよね?それが2領もあるんですけど?」

「と、とりあえず盗まれでもしたら大事だから鎧は着て剣は腰に差しておくか?」

「いや、そんな完全武装で近辺をうろうろしてたらあっという間に衛兵に囲まれてしまいますよ・・・」


 そして道場に由緒はあっても特にこれといった思い入れはないのであった。

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