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【書籍化】 使い潰された勇者は二度目、いや、三度目の人生を自由に謳歌したいようです  作者: あかむらさき
新しい同居人編

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南の都編 その1 子爵家の御令嬢

 さて、心機一転、いよいよ新しい街作りの始まり!!・・・等という事はなくここはまだ王都。

 ほら、先にすることがあるじゃないですか?

 そうだね、求婚したお嬢さんのご実家にご挨拶だね!

 困難が予想されていた大きなお家、キーファー家、ヴァンブス家、フリューネ家、そして王家に挨拶は済んでるようなものだけど結納品(?)を持って行かないといけないしさ。


 ちなみにコレ、自分の財力だけではなくその品物を手に入れるための伝手なども勝手に他人に評価されちゃうと言うそこそこ悪趣味な風習なんだよなぁ。

 個人的には『面倒だし金貨の袋でも積み上げろよ』とか思うんだけどね?

 貴族として下品なことをするとお相手のお家の威信とか名声にも関わるし。

 まぁ結納はまとめて後日でいいとして先にご挨拶である。


 最初に向かうのは一番付き合いの長いメルちゃんのご実家。

 メルちゃん、俺の記憶が確かならば公爵家の寄り子の子爵家の御令嬢だったはず。

 てかご実家、王都じゃなくて北都の西の方らしいので転移で北都まで飛んでから馬車でガタゴト移動する。

 もちろんそんな音は鳴らないんだけどさ、黒馬車。


「こうしてみると北都周辺って山が多いよね。北の黒竜山脈方面以外はそびえ立つってほど高くも無いけど。西都とか王都周辺に比べると平野部が少ないっていうか」

「・・・」

「南の方もこんな感じなのかな?完全に手付かずらしいし町どころか村も無いらしいけど。確か大きな川が2本流れてるんだっけ?」

「・・・」

「いや、緊張しすぎじゃね?今まで見たこともないような表情になってるよ?」


 運転しながら話しかける俺と助手席で石像のように固まる道案内のメルちゃん。

 ちなみに道案内の方法は胸の前で小さく指をさすという『あっちむいてホイか!てか前向いてるんやから見えへんわ!そもそも気付かへんわ!』とツッコミを入れたくなる方式である。


 そんな2人きりのドライブを楽しむこと約2時間。

 到着したのは


「あんまり土地が開けてないから北海道みたいな雄大な感じでもないし・・・なんかこう微妙な感じの田舎町って感じ?」

「・・・」

「いや、だから何か反応してね?」


 メルちゃんの地元、山に囲まれた農村以外の表現のしようがない様な田舎町、トアドストール子爵領『ビルツ』の町?村?である。


 そこから小汚い農民のガキ・・・おほん、腕白な雰囲気の地元の子供達に馬車を先導されて向かうはもちろん領主宅。

 こちらのお屋敷も物凄い・・・地味。もちろん昔のヴァイデ男爵邸(通称・壊れた体育館)みたいにオンボロではないんだけどさ。

 田舎のそこそこ裕福な農家ってレベルだな。広い畑に囲まれてるし。


 板塀で囲まれた屋敷の門をくぐり、お家の中に声をかけると現れたのはこれまた地味なおばちゃん。


「どちら様・・・あら、お嬢様ではねぇですか!そげなええべべ着せてもろて、いったいどうなさったんです?」


 まさかの異世界なのに日本昔話のような空間に迷い込んでしまったようだ・・・。


 来訪目的を告げる俺。そして集まるメルちゃんのご家族。

 ご当主らしき人も畑から来たんだけど・・・ここは本当に子爵家なのだろうか?

 そして集まった人数、メルちゃんの母方の曾祖父さん筆頭に年寄りが8名、中年が13名、若いのが46名。

 すげぇな、身内だけで某男爵領の半分以上の人口だよ。そして年寄が全員元気すぎる・・・。


 てかさ、メルちゃんのご実家だからお父さんとか思いっきり武闘派だと思ってたのにめっちゃ農家のおっちゃんなんだけど?

 いや、お父さんだけじゃなく兄弟従兄弟再従兄弟含めて男連中が全員農家のおっちゃん&兄ちゃんなんだけど?

 それに比べて姉妹従姉妹再従姉妹の人達は結構な美人さん揃いと言う。


「それにしてもまさかメルティスがこんな男前の旦那さんを連れてくるとはねぇ」

「何をトチ狂ったのか『私は剣にこの身を捧げるのだ!!』とか毎日叫んでたあの粗忽者の乱暴娘がねぇ」

「綺麗なべべも着せてもろてお姫様みたいなごとあるねぇ」

「母さんもおばちゃんもよけいなこと言わんでええけん!!」


 メルちゃん、まさかの方言女子だったらしい。ちょっと今晩はベッドでもそれでお願いしたいです!!

 その後も特にご家族からの反対も無く、予想していた『どうしても娘が欲しければわしを倒す事だな』なんて感じの親父との決闘イベントも起こらず、普通に集まった皆で歓迎の宴のお食事会に移行することに。

 あ、食材は色々持ってきてるので俺もお手伝いしますね。


「すごいおっきいお魚だね!?」

「魚だけじゃなくエビとかカニもおっきいよ?川にいるやつとは全然違うもん!!」

「うまっ!?このなんかわかんない透き通った感じのやつうまっ!!」


「お肉、固くないお肉・・・」

「これってイノシシじゃないよね?ブタ?毛のないイノシシ?」

「鶏肉ってこんなお料理の仕方もあるのねぇ・・・」


 わいわいがやがやと食卓を囲む人々。俺の周りの女児率が妙に高いのだけは気になるけど。

 メルちゃんも緊張がやっと解けたのか、普段の表情に戻り温和な表情でご家族と話している。


「いやぁ、まさかあの行けず後家の娘がこんな立派な料理人の婿さんを迎えるとは、ありがてぇなぁ・・・」

「マル婆ぁ、ハリスは料理人じゃなくて普通に貴族様だぞ?あと私は嫁に行けなかったんじゃない、行かなかっただけだ!!」

「えっ?ハリスお兄さんは貴族様なのにお料理も出来るの!?」

「ふふっ、料理だけじゃなくハリスは何だって出来るからな!!」


 凄い凄いとはしゃぐ子どもたち。

 見てる範囲では全く飲酒してる雰囲気もなかったのに場に酔ってるのか顔を赤くして少しハイテンションなメルちゃん。

 うん、寄りかかって甘えてくる感じが凄く新鮮でよいと思います。あと何でもは出来ません。


「貴族様って言うとやっぱりうちとおんなじでキーファー家ご縁の寄り子さんなのかい?」

「少し前までそうだったけど今は都貴族になったんだよね?あれ?アリシア殿下が御降嫁されてからだっけ?」


「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」

「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」

「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」

「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」「えっ?」


 俺に向かって一斉に集まる大量の視線。


「殿下が・・・御降嫁される?・・・えっ、ええと・・・失礼ですが・・・ハリス様はどちらかの大貴族様のご令息様でいらっしゃいらっしゃいましますでしょうか?」

「ふふっ、ハリスはご令息ではなく普通にご当主様だぞ?『ハリス・ガイウス・プリメル・アプフェル伯爵』改め『ハリス・ガイウス・バーム・ラポーム侯爵』だったか?いや、侯爵閣下ではなく公爵閣下だったな!」


 正確には都貴族だけど新しく建てる南都『ルシメル(仮)』の人間になるから

『ハリス・ガイウス・ルシメル・ラポーム』

 だけどな!


 その後は時間の停止していたメルちゃんのご親類が一斉に土下座するのを宥めたり、先の皇国との戦場で俺が怪我を治療したらしい再従兄弟が土下座するのを宥めたり、黒い鎧のかたわれがメルちゃんだったと知った従兄弟が顔を引きつらせて少しずつ距離を取っていったり等々色々あったが宴はつつがなく進むのであった。

 てか結納とかどうしよう?

 普通に農家みたいだし鉄製の農具でも大量に置いていけばいいかな?



 ハリス、メルティス帰宅後のトアドストール家~


「いや、メルティスはどえらい婿さん見つけたな。まだお若い外見からは気付けなんだけどハリス様って名前でよくよく思い出すと竜殺しの子爵様のお名前だったんだよな」

「子爵様どころか侯爵様、いや、公爵様になられるらしいけどな?それよりも結納品が何もないところから大量に出てきたんだけど・・・そしてもののついでのようにお屋敷を建て替えてもらえたんだけど」

「屋敷って言うかもうこれちょっとしたお城じゃねぇか?いや、農具の方も性能がおかしいんだけどさ。ぶっとい樹が斬れる鎌とかお城の宝物庫にも無いと思うんだ」

「そもそも宝物庫に鎌とか鍬は入って無いだろ・・・呼び方は屋敷でもお城でもどっちでもいいけどこんな大きな建物が一瞬で建ったのが一番わけわかんねぇんだよなぁ・・・」


 そして純粋な彼、彼女達はハリスが言った『王都の魔法使いはこのくらいは出来る』を信じ込んでしまったのであった。

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