第150話〜後悔先に立たず〜
フィエルと共に、地上へ降り立つエータ。
――全速脚――
――破竜槌――
フィエルと二手にわかれ、怒涛の勢いでスライムを倒していく。
「アイテムボックス!」
――ピコンッ!
――――――――
マナが通っているため回収できません。
――――――――
「確実に倒したはずなのに⋯⋯」
ピクリとも動かないバラバラになった青いスライム。
しかし、それにはまだ外部からマナが通っているようだ。
つまり⋯⋯。
「誰かが操ってる⋯⋯? もしくは、コアみたいな物が存在するのか?」
考えても答えは出ないと判断したエータ。
とりあえず、市民の安全を第一にスライムを行動不能にすることを優先。
街中を走りまわる!!
「キャー!!」
と、南の城壁ちかくで襲われている女性を発見!
「間に合え!!」
――虚無也――
――破竜槌――
間一髪で、それを対処するエータ。
「どこか民家の中に入れてもらえ!」
女性の方を向きそう言うが、人間の女性はエータのことを恐ろしい物でも見るかのように腰を砕き、
「ひぃぃぃ!!」
と、言いながら城壁に向かって這っていってしまった。
「なにやってんだ!!」
家屋の影からスライムがあらわれ、女性に飛びかかる!
「ひぁぁぁぁ!!」
――ジュゥゥゥゥウ!!
エータは女性をかばうようにして、スライムを背中で受け止めた。
「――――――ッ!」
焼けるような痛みが走る!
「あぁ⋯⋯ぁ⋯⋯」
女性は完全にパニックとなり、視界がブレながらエータとスライムを見ている。
「ボサっとすんな⋯⋯良いからサッサと行け⋯⋯」
威圧しないよう、なんとか優しく問いかけるエータ。
女性は身体をビクリと跳ねさせ、こくりと頷いた後、城壁ちかくにある駐屯所へと這っていった。
駐屯所から避難したであろう人々があらわれ、女性を中へと助けいれる。
それを見たエータはホッと肩を撫でおろし、スライムをマナで弾き飛ばした。
「ラチがあかねぇな⋯⋯」
どれほどのスライムが飛来したのかわからない。
状況も掴めないまま、ただひたすらにスライムを潰していく。
すると、北の海から体長5メートルはある白い球体が、王城の上へと、ふよふよと飛来した!
白い球体は城の上空でピタリと止まり、煌々(こうこう)と蒼い光を放ちはじめる。
「もしかしなくても、アレがコアだろうな⋯⋯」
エータの予想通り、白い球体に向かって、バラバラになった青いスライムが集まっていく。
そして、それは創ったばかりの城のてっぺんに、突き刺さるようにして乗った。
「ジュゥゥゥゥウ」と音を立てながらも、体長50メートルはあるスライムを支える城。
粘着王・海満月は、ニュルニュルと触手を伸ばし、その大きな腕を思いきり庭園へと叩きつけた!
「なっ!!」
舞い上がる木々たち、そして土ぼこり。
こんなものが家屋の上に叩きつけられよう物なら、中にいる人は即死である。
「くそっ!!」
――全速脚――
エータはマナを全開にし、王城へと向かう。
スライムは、うぞうぞと移動をはじめ『人間を殺さんと』『創造主の悲しみをわからせんと』動いた。
――ばおおぉぉぉ!!
スライムが鳴いたかと思うと、八本ある触手の先から、さきほどの青いちいさなスライムが発射された!
それはブバスティス帝国中に飛来し、またしても人間を襲おうと、家屋の外にいる人達を追いかける!
「中も外も危なくなっちまった⋯⋯!」
自分の判断で人が死ぬ。
こんなことなら「全員、南に向かえ」と指示しておけばよかった。
そんな思いにさいなまれるエータ。
しかし、相手の出方がわからない以上、後手にまわるしかない。
悔やんでいる暇は無い。
今できることを全力でやるしか無いのだ。
「みんな⋯⋯頼んだぞ⋯⋯!」
エータはこの悪夢を生み出している元凶へと、その足を進めた。
――――――
ドロシー、ディアンヌ、イーリン、アイチェ、モンスターにされた人々30人。
そして、気を失っているビートとシロウ。
ドロシーは単独で街の人たちを助けに奮闘。
ディアンヌ、イーリンは慎重に街を歩く。
機動力の無い二人を守るように、アイチェが同行。
道中、スライムを凍らせながら、負傷した人々を手当してまわる。
モンスターにされた人々は、気絶したビートとシロウを連れて、ヴォルグ商会の中へと避難。
フィエルは、フィンと共に南東のスラム街へと飛び、取り残された亜人が居ないかを見に行っている。
南にある簡易的な捕虜の街。
戦えない人々を守るために、ライオの指揮の元、騎士や兵士、闇夜の影はその場にとどまり。
クロウガ、ピグリアム、ヒョウドルの三人は、ブバスティスへと移動をはじめていた。
――――――
闘技場ちかく・地下通路内部。
ロウルを担いだオリオンは、地上から伝わる激しい揺れを感じていた。
「これもヤツらの仕業なのか?」
生き埋めになるまいと、歩みを進めるオリオン。
「あら〜、オリオンじゃないの」
そんな彼らを、ピンクのモヒカン男が呼び止める。
「ビュフィム看守長、ここにおられたのですか」
「んふ〜、ロウル様の命令で囚人たちをモンスターにしてね〜。ちょ〜っと遊んでたらこのザマよぉ」
オリオンは「はぁ⋯⋯」と、ため息をつく。
「あなた達が遊んでいる間に、プリース王国が潰されてしまいましたよ」
「やっだ〜! ごめ〜ん! でもねぇ」
ビュフィムは目を落として言う。
「潰してくれたのが、あの子たちで良かったのかもねぇ」
その言葉に、オリオンは思うところがあるようだ。
「⋯⋯ビュフィム看守長。私はあなたの意志を尊重します。どこへでも行くと良いですよ」
そういうと、オリオンはロウルを連れて地上への道を再度歩き始めた。
「その子をどーするの? もうお姫様でもなんでも無いのよ」
オリオンの背中に問いかけるビュフィム。
「プリース王国・騎士団長としての最後の役目です。かならず生きて帰しますよ」
どれだけ愚かでも、一度主君と認めたならば貫き通す。
ダストンとはまた違った信念を持つ彼は、揺れる地下通路を歩く。
「⋯⋯はぁ、私も付き合うわよ」
三人は、同じ道を歩み始めた。




