第140話〜絶対王政〜
プリース王国・首都パイナス中央。
威風堂々たる歴史の重みを感じさせる王城。
その玉座に、プリース王国・国王。
ハロルド・ラ・プリースは静かに目を閉じ、座っていた。
『侵入者』の気配を感じながら⋯⋯!
(来たか⋯⋯)
ハロルドは、ゆっくりと目を開いた。
「よう。返して貰いに来たぞ」
声のする方へと視線を向ける。
まだ修繕しきれていない、謁見の間の格式高い大扉の前で、見たこともない衣服を着た黒髪の青年。
エータ・ミヤシタの姿が、そこにはあった。
「異なことを言う⋯⋯」
ハロルドはゆっくりと玉座から身を起こした。
「なにを返せと? 亜人か? それとも、この国をか? まるで貴様らのものであったような口ぶりだな。ここは2000年前より、我が祖先、アーサウコス・ラ・プリースのおさめる地だ。よって、プリースの名を継ぐ、我のもの。貴様らのものでは無い」
ハロルドは「フンッ」と、挑発するようにエータに吐き捨てた。
「やっぱりな⋯⋯」
エータはうつむいた。
予想通りすぎる言葉に呆れているのだ。
「やっぱり⋯⋯?」
ハロルドは首をかしげている。
「国を、人を、大地を⋯⋯『モノ』として扱っていやがる⋯⋯」
月光のように白く輝くエータの身体。
「お前は間違ってるよ、ハロルド。国とは人の営みだ、人とは元より自由だ、大地とはただそこに在るだけだ、ひとつとして人間が扱える『モノ』じゃない⋯⋯」
エータは、指をさしてハロルドに告げた。
「だから、それを他者から、この世界から⋯⋯。そのうす汚い手中におさめようとするお前から! 俺は取り返しに来たんだ!! あるべき姿に戻すために!!」
アイテムボックスからウォーハンマーを取り出し、くるくると回転させ、床に叩きつけながら構えるエータ。
「もう王様ごっこは終わりだ、アダルトチルドレン。俺が次期皇帝として、責任を持ってお前の罪を清算してやる。感謝するんだな」
ハロルドの頭の血管は、ドクンッドクンッと脈打ちながら隆起している。
「この名の重みも知らぬ愚民が! ほざくなよ!!」
ハロルドの身体から黄金のマナが荒れ狂う!!
「うおおぉぉああぁぁーー!!」
バリバリと電流を走らせながら、自身の身体を中心に、竜巻を発生させるハロルド。
「ぐっ!」
吹きとばされそうな身体を必死におさえるエータ。
ハロルドは高らかにさけぶ!
「ジョブ【王】・アーツ【富国強兵】!! 反転せよ!!」
――絶対王政――
プリース王国の国民から、光の球が抜けていく。
王城へと高速で飛んだそれは、ハロルドの身体に集まっていく!!
「フハハハハハ!!!!」
ハロルドは70代とは思えぬその身体を、さらに筋肉質な巨体へと変貌させた。
身長3メートルはあろうかという、巨人へと膨れ上がる。
もはや人間かどうかも疑わしい。
「国民のすべてのステータスを得た我に、もはや敵うモノ無し!」
ハロルドは首をゴキゴキと鳴らし、上体をグググとひねった!!
(来る!!)
ハロルドに応えるように、エータは『あの構え』に入った!
――王之遺産――
――凱竜天成――
二つの巨大なマナはぶつかり合い、大爆発を起こしながら、王城を内部から破壊し尽くした。
――――――
その衝撃を、頭上で感じるイーリンとディアンヌ。
「んおー、すごい」
「これは急がないとマズイですね」
彼女たちはビートとシロウが捕まっているかも知れない、王城地下の監獄へと来ていた。
無論、捕まった二人を救出するためである。
監獄はすでに看守たちが逃げ去っており、女性二人でも簡単に進むことが可能。
鍵のかかったトビラはイーリンの魔法でことごとく突破し、それはもはや救出というには生ぬるいものへと変わっていた。
「看守室のようですね」
ディアンヌは暗くしめった土壁に規則正しく並べられた本棚。そこに置いてある数々のファイルをめくりながら言う。
「ディアンヌ! これ!」
イーリンはふんすっ!と、大量の鍵を発見。
ディアンヌは、
(イーリンちゃんの魔法があるから鍵は要らないんじゃ⋯⋯)
と、思ったが。
「わぁ! お手柄ですよ! イーリンちゃん!」
と、優しいウソをついた。
「んふー!!」
心底、嬉しそうな表情のイーリン。
「そ、それじゃあ! ビートくんたちを探しに行きましょう!!」
「おー!」
そう言って彼女たちは監獄の奥へと歩みを進めた。




